真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第128話 魔王の涙

 ネビロスはベリアルに六本木で待っていてくれと言ってはいたが。

 彼は到底、同意はできなかった。

 

 アリスが攫われたのである。

 

 アリスは六本木の外では生きていけない。

 

 だから、じっと待っていることなど出来るはずがないのだ。

 

 彼はアリスの絶対の守護者になるために、六本木から出ない限り誰にも倒されないという魔術を自分に掛けていた。

 

 そのお陰で、そこが六本木であるならば……

 攻めてきたのが大天使ミカエルであろうと、大魔王ルシファーであろうと、退けて見せる自信が彼にはあった。

 

 しかし。

 

 そこが六本木でないのであれば、逆の効果が起こる。

 それが魔術というものだ。

 

 何かが特別になるのであれば、他が特別ではなくなる。

 

 

 それでも。

 

 たかが人間のひとりやふたり、捻り潰すのにフルパワーである必要などない。

 

 これで十分だ。

 

 

 彼はそう思っていたのだが。

 

 

(……こいつ、これを計算に入れて、あえてこの状況を作った)

 

 

 彼は真月にそういう印象を持っていた。

 

 

 何故なら。

 

 

 彼女らの先回りをするために、ネビロスが結界を解除し。

 

 地下道で足止めを行い、本来結界で隔てられていた場所を外から先回りをしてきたことを、彼女らは全く驚いてなかった。

 

 怯えていなかったのだ。

 

 これは当然想定していた。

 そういう顔だったのだ。

 

 それに気づいた瞬間。

 

 彼は、内心とてつもない恐怖を感じはじめていた。

 

(……我らは、とんでもない者を相手にしているのかもしれない)

 

 そういう、予感めいた感想持ったがために。

 

 そして

 

「あなたたちを、排除するッ!」

 

 真月がそう吠えて、アームターミナルを操作した。

 それと同時に。

 

 地面にひときわ大きな魔法陣が出現し、ベリアルと同じく4メートル級の大きな悪魔が召喚される。

 

 ……男性器に似た緑色の異形の魔王。

 

(あれは……!)

 

 ベリアルは知っていた。

 あれは魔王マーラだと。

 

(あの女、一体なんでそんな大悪魔と契約を結んでいるのだ!?)

 

「ヌァーハッハッハッハ! 真月召喚士今日は何用じゃ!?」

 

 マーラの叫び。

 それに対して、真月は

 

 

 隣で、事態が呑み込めずにいるアリスを。

 

 

 ……マーラに向かって、突き飛ばした!

 

 

 その瞬間。

 ベリアルとネビロスから、平常心が消し飛んだ。

 

 

 

 そこから先は一瞬だった。

 

 

 

 真月が、アリスを魔王マーラに突き飛ばした後。

 

 

 

「アリスゥゥゥゥ!」

 

「貴様よくもぉぉぉぉっ!」

 

 2体の悪魔が逆上し。

 

 無計画に突っ込んで来た。

 

 それを

 

「マーラ! 衝撃魔法! イザナミ様! 電撃を!」

 

 真月は全く怯えずに、冷静に指示を出し

 

「承知!」

 

「了解じゃ!」

 

 魔王マーラは、触手の先をその2体に向け。

 

 天津神イザナミもその掌を2体の悪魔に向けた。

 

 そして

 

「マハザンダイン!」

 

「黒雷じゃ!」

 

 マーラからは強力な衝撃波。

 

 イザナミからは真っ黒い雷が迸る。

 

「ギャアアアアアア!」

 

 それらが直撃し、2体の悪魔がその感電と衝撃で停止する。

 

 それだけでは終わらない。

 

 

 イザナミが真の姿を現したのだ。

 

 幼女の姿から、身長10メートルを超える、腕が何本もある巨大な赤黒い骸骨に。

 

 

 その姿で、イザナミは腕を振り回す。

 

 その腕は、悉くが黒く帯電をしていた。

 

 帯電した腕が、ベリアルとネビロスを直撃する。

 

 

 それぞれが、吹き飛ぶ。

 

 

 そして

 

 

 倒れ伏したネビロスに、魔王マーラの触手が伸びて。

 

 その触手で、ネビロスの手足を拘束した。

 

 暴れるネビロス。

 

 

 

 そこに

 

 

 

 これまでの間に、真月はさらなる手を打っていた。

 霊鳥アルゴスを引っ込め、代わりに妖魔ヴァルキリーを召喚していた。

 

 拘束されたネビロスに、妖魔ヴァルキリーが剣を構えて突っ込んでいく。

 腰だめに剣を構えた、突きの姿勢で。

 

 

 そして。

 

 

 その剣が、ネビロスの胴体を貫いた。

 

 

「ウギャアアアアアア!!」

 

 

 決定的な悲鳴。

 そのまま

 

 

「あ……アリスはどうなってしまうのだ……」

 

 

 その言葉を残し、彼はマグネタイトに還っていった。

 

 

「……ネ、ネビロス……」

 

 

 ダメージから回復しきれないベリアル。

 

 そこに追い打ちで、魔王マーラからの衝撃魔法の雨が降り注ぐ。

 

 木の葉のように翻弄されるベリアルの身体。

 

 大ダメージを負い、仰向けに転がる。

 

 その4メートルはある、巨体。

 

「今日を持って死の街六本木は終了よ」

 

 それを無表情見つめつつ。

 そう、真月は言い放った。

 

 その後。

 

 真月が歩いていく。

 

 肩に掛けている、愛用のライフル銃を構えながら。

 

「お、おのれ……」 

 

 ベリアルが最後の力を振り絞ってその手を真月に向けた。

 

 だが

 

 そこで地面から無数の細い腕が生えてきて、そんなベリアルの腕や足、胴体に巻き付いて。

 

 全身拘束され、身動きが取れなくなった。

 

 そこに吊り上げられる4メートルの巨体。

 

「ぐうううううううう!! お、おのえええええ!!」

 

 抗おうと暴れるが、もうそんな体力は残っていないのか。

 

 そしてとうとう……

 

「ぐ、ぐううううううう……!」

 

 ベリアルの目から、涙が零れはじめた。

 

 そんな彼に

 

「いい格好ね。これまで沢山の人々の命を奪い、ゾンビを作って来た報いを受けるときが来たのね」

 

 真月の冷たい言葉が飛ぶ。

 

 それにベリアルは

 

「愛する者のために尽くすのがいけないというのか……?」

 

 そう、訴えた。

 しかし

 

「悪魔の分際で愛を語るのやめてくれる?」

 

 真月は全く表情を変えない。

 狼狽えない。

 

 そして平然と

 

「イザナミ様、こいつの頭の位置が高いので下げていただけますか?」

 

「了解じゃ。これで良いかの?」

 

 イザナミに、位置の微調整を要請する。

 真月の要望に従い。ベリアルの頭の位置が低くなる。

 

 ちょうど真月の目の前になる位置に。

 

 

「我らは愛を語ってはいけないと言うのか!?」

 

 

 処刑秒読みであるにも関わらず、ベリアルは吼えた。

 吼えたが。

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

 真月は全く動揺せず、自分の銃の具合を確認する。

 

 

「何故だ!?」

 

 

 最期の言葉。

 

 真月はそれにすぐには答えず。

 

 ベリアルの口の中に、銃の筒先を突っ込んだ。

 

 そして

 

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

 

 そして、こう言った。

 

 とても、綺麗で透明な笑みを浮かべながら

 

 

「あなたたちが悪魔だから。それ以上に理由は要らないわね」

 

 

 そして引き金を引き。

 

 パンッ、という音の後。

 

 ベリアルの後頭部から、血飛沫が飛んだ。

 

 

 ……六本木を支配した魔王の、あまりにも惨めな最期であった。

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