真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
フツコは震えていた。
(……信じられない)
自分の契約主は、たった1人で六本木を支配していた2体の大悪魔を抹殺してしまった。
とてつもない存在、誰も絶対に勝てないと思っていた2体を。
自分をボディコニアンとして蘇らせ、地獄の環境に投げ込んで来たあの2体を。
ほぼ無傷。
一方的に。
(これは戦闘じゃない……処刑よ……!)
なんという強さ。
契約している悪魔の強さだけじゃない。
胆力、頭のキレがとてつもない。
生前を含めて、彼女が自分の人生で出会った女性で最も優秀な女性。
それが佐上真月……現在の彼女の悪魔召喚契約の契約主であった。
彼女の契約主はライフル銃でベリアルの頭を撃ち抜き処刑した後、マグネタイトに還っていくその姿に一瞥もくれないで。
「赤おじさんと、黒おじさんが! ウエエエエーン!!」
まっすぐに泣いているアリスに向かって歩いていく。
フツコは真月に、畏れに似た感情を込めた視線を送り続けた。
アリスは泣いていた。泣きじゃくっていた。
真月はそんなアリスの傍まで歩いていき、そこで立ち止まり。
ライフル銃を下ろして肩に担ぎ。
腕を組んで。
そして
「何を泣いているのかしら? これはあなたたちが人間にやったことでしょう?」
真月は泣いているアリスに、冷徹な言葉を叩きつけた。
真月のその言葉に、アリスの涙は止まった。
そして訳が分からないという顔で、真月を見上げる。
真月はそれに臆することは無かった。
そのまま続けた。
「……あなたたちは、自分たちの幸せのために人間を殺し、その魂を奪い、ゾンビを作り続けた」
「それがそっくりそのまま、あなたたちに返って来ただけの話よ」
その声には糾弾の響きがあった。
慰めも同情も何も無かった。
幼女の姿をしたその存在に、真月は一切の情けも掛けなかった。
「アリスはただお友達が欲しかっただけ! それの何が悪いの!?」
真月の言葉に、アリスがキッと睨むように目を向けて。
「死んでゾンビになれば、アリスの傍にずっといられる! 死ぬことも無いんだ!」
そんなことを言い出す。
真月は
「ふざけないで」
それに対して一切取り合わない。
「何故あなたの傍にいるために、死ななければいけないの? 皆がそう望んだの? そんなわけないわよね?」
「命を失うとき、皆泣いていたでしょう? 死にたくなかったのよ」
真月の声は淡々としていて、穏やかだった。
だがその言葉には、一切の妥協が無かった。
そんな真月に対して
「でも友達になってくれるって言った!」
アリスは怒りの表情を浮かべる。
自分の友達になると言った以上、ゾンビになるのは当然の事。
それがアリスの認識なのか。
真月はそんな彼女に
「……だからこうなったのよ。その友達になるためのことを、あなたの保護者にやってあげたの」
何の表情も浮かべずにそう返す。
アリスはそんな真月に
「おねえちゃんは友達だと思ってたのに!」
金切り声でそんな言葉を叩きつけたが
真月は
「だから、これがあなたたちの友達への流儀なんでしょ?」
全く動揺もせず、言葉を返す。
「相手が拒否しようと、怖がっていようと、無理矢理命を奪って、ゾンビにする……一緒じゃない」
腕組みの姿勢を崩さずに。
「あっ、ゾンビにしたらいいのかしら? ……残念だけど、大概の悪魔は死ぬと死体が消滅するからそれは無理ね」
何の感情も交えずにそう言い放った。
真月はまだ止まらない。
「友達を殺すのがあなたの友達に対する流儀なら、友達の親代わりの存在に、同じ流儀で対応して何か問題あるの? ホラ、答えてみなさいよ? ベリアルとネビロスだけは別なんだ、っていう意味不明の甘えの極みみたいなふざけた回答以外で」
真月は幼女に対して全く容赦しなかった。
やがてアリスは、言葉が出なくなり、震えて……
そして
「ウエエエエエエーン!! 酷い! 許せない!」
何も言えなくなり、再び泣くしかできなくなる。
そんな、幼い少女の姿をしたものに
「泣けば許されると思ったら大間違いよ」
あくまで真月は冷徹であった。
一切の同情も、憐れみの感情も向けなかった。
目の前にいるのは幼女の姿をした悪魔そのもの
そう彼女は考えている。
その態度にはその気持ちが表れていた。
そのとき
変化が起きた。
「え……?」
アリスの身体から、光の粒子が立ち上りはじめたのだ。
アリスも、その出来事に再び涙が止まった。
これは……
「……やはりそうなるのね。あなたの命は、ネビロスとベリアルの命と連動していたのか」
真月の冷静な分析。
そして動揺し、混乱するアリス。
「え……え……?」
アリスはその活力として、人間の魂のエネルギーをネビロスたちから与えられていた。
ならばそれが完全停止した今、こうなるのが必然なのかもしれない。
「あなたは消えるのよ。可哀想だけど」
淡々としたまま、真月。
彼女のこれまでの言葉を考慮するなら。
可哀想だ、がつくだけマシかもしれない。
アリスの身体から立ち上る光の粒子は増えていく。
同時に、どんどん、アリスの身体が透けていくように薄くなっていく。
自らの手を見つめながら、アリスはそれを思い知っていく。
「やだ……怖い……助けて……赤おじさん……黒おじさん……!」
その声は震えている。
アリスの恐怖……それが感じ取れた。
だがそんなアリスに真月は
「あなたに友達にされた人たちも、きっと同じように怖かったはずよ」
全く同情せずに
「さよならアリス。……私のお友達」
そう、言い放った。
だがアリスはその言葉に何も返さず
「いや……いや……消える……消えちゃう……!」
怯え、涙を流し
そして
「うあああああああ!」
最後の叫びを残し。
アリスの輪郭が決定的に薄くなり。
最後に大きく弾けるように、光の粒子をばら撒いて。
……アリスはこの世界から消え去った。
「……」
全て終わらせた後。
真月はしばらく無言で立ち尽くすように立ち。
そして
アームターミナルで不要な仲魔を帰還させ。
必要な仲魔を呼び直して。
「真月!」
彼女の背後の地下鉄……地下道の方から。
彼女の夫の忍が、変身した姿で現れたときには。
「……終わったよ。忍」
彼女はいつもの笑顔に戻り。
夫を出迎えたのだった。