真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
ガラ吉がある日。
忍と真月に切り出して来た。
「あのさ、悪いんだけどちょっとお使いに行ってくれないかな?」
箒と布巾で自分たちの部屋の掃除を行っていた2人は手を止めて
「お使いですか」
そう訊き返し
「うん、ちょっと僕の代わりにガイア教徒に襲撃を掛けて来て欲しい」
ガイア教徒。
大破壊前から非合法に存在していた犯罪組織。
悪魔との共存を訴える集団で、自分の行動に制限を掛けず、獣のように生きることを理想とする人間たちだ。
その信者は暴行、殺人、略奪、強姦を平気で行う。
彼らはこの世に存在する決まりの一切を尊重せず
強者こそ美しい。
強者は何をやっても構わない。
それを理想とする。
そんな危険極まりない人間たち。
忍と真月の顔が険しくなる。
とても放置できることではないから。
「ガイア教徒が近くに来てるんですか?」
2人の問いに、ガラ吉は頷き
「うん。隣町がやられたらしいよ……だから」
この街を守るために、ちょっと行って壊滅させて来て欲しい。
今のキミらならやれるはずだよ。
その言葉に、2人は師匠からの信頼を感じて喜びを感じた。
そして
「分かりました。ガラ吉さんは……?」
ガラ吉の依頼を受け入れた後。
師匠はどうするつもりなのかを訊ねる。
ガラ吉は
「この街を無人にするわけにはいかないから、僕はこの街をガードする方に回るよ……面倒な方を押し付けてごめんね」
そう回答。
戦力の分散は本来下策なのだが、忍と真月を襲撃の駒に回す以上、しょうがない。
街をがら空きにして、その隙にガイア教徒の別動隊に襲撃を掛けられた場合を考えるとそうせざるを得ないのだ。
それをしないのであれば、この街にガイア教徒を迎え入れて戦わなければいけなくなる。
その場合、この街への被害も大きなものになるだろう。
それを避けるために、敢えて下策である戦力分散をやるのだ。
「いえ、この街を守るためですし」
「任せてください」
忍と真月はそんな師匠にそう返す。
ガイア教徒の盗賊団という脅威を、なるべく無傷で排除するためだ。
やり遂げてみせる……!
2人はそう固く誓ったのだった。
情報によると、ガイア教徒の盗賊団は魔法を使用する人間が1名、そして悪魔を使う人間が1名。
あとは雑兵だそうだ。
移動にはバイクとバンを使っているとのこと。
厄介なのは魔法使いと悪魔使いの2名で、そいつらさえ処理できれば後は何とでもなる。
それが彼ら2人の見立てで。
まず真月は妖魔ヴァルキリーを召喚し、偵察に出してガイア教徒の盗賊団を探した。
そしてヴァルキリーが「多数のバイクとバンの集団を発見しました」という報告をあげて来たとき。
忍と真月はバイクに2人乗りをし、襲撃を掛けるために出発をした。
ガイア教徒の盗賊団とみられる集団は、山を切り開いて作られた道路の真ん中に、自分たちのバンとバイクを停めて停止していた。
時刻は夕方を過ぎて夜に差し掛かっている。
多数の人間が、道路の真ん中で焚火をしていた。
見たところ全員男たち。
男たちは焚火を囲んで、何やら会話をし、下品に笑い合っていた。
……大破壊前なら、通報されて捕縛されてしまったであろうこの振る舞い。
だが今は警察が存在せず、そのようなことは起こらない。
忍と真月はそんな集団に、道路沿いの山の方から近づいていた。
彼らのバイクは離れた場所に停め、襲撃を掛ける。
正面からは挑まない。
正面から挑まなければならない理由なんて無いから。
当然、不意打ちを掛けるのだ。
真月は夜の闇と山の茂みに身を隠しつつ、アームターミナルのキーボードに指を走らせる。
『EARTH MOTHER GODDESS SUMMON』
召喚のためのコマンド入力が終了すると同時に、真月の足元に魔法陣が浮かび上がり、そこに紫色のローブのような衣服で身を包んだ女悪魔が出現する。
その悪魔は長身の黒髪美女で。
頭部に角。
そして口元に鋭い牙を覗かせていた。
地母神ハリティー。
日本で言う鬼子母神だ。
彼女はかつては自分の子供を育てるために、人間の子供を食い殺し続けていたという悪鬼であった。
けれども仏教に帰依した後は、子供を守る守護神になった。
そんな女神である。
真月は顔を向けずに伝えた。
「ハリティー。ヴァルキリーの襲撃がはじまったら歌って」
彼女にやって欲しいことを。
そして
「わかりましたわ真月召喚士」
ハリティーがそう、自分の契約主の指示を承知したとき。
そのすぐ後だった。
道路の真ん中で焚火をしている集団に、ヴァルキリーが飛び込んだ。
「うおおお!? 悪魔だ!」
「雑魚悪魔じゃねえぞ!」
「せんせぇ方!」
鋲付きのジャケットを身に着けた男たちが、棍棒や斧でヴァルキリーの襲撃に応戦する。
ヴァルキリーは魔法を敢えて使わず、その飛翔能力による機動性と剣術で男たちを翻弄していた。
今だ。
「ハリティー」
真月のその呼びかけと同時だった。
ハリティーは立ち上がり
腕を開き、歌姫のポーズを取った。
そして
LAAAAAAAA!!
魔力の籠った歌声が発せられた。
傍にいる忍と真月は両手で耳を塞いでいる。
この歌声を聞くと、眠り込んでしまうから。
これは、通称「子守歌」
恐ろしい能力である。
歌をまともに聴いてしまった男たちが、バタバタと倒れていびきをかいて眠りに落ちる。
これで敵の無力化はほぼ完了。
しかも、誰も殺していない。
上々の結果である。
あとはバンの中身を確認するだけだ。
山から出て慎重に近づいていく。
するとそのとき。
バンのドアが開いた。
そしてそこから2人、人間の男が降りてくる。
1人は僧侶の姿をしていた。
白黒の山伏の衣装に身を包んだ、禿頭の男だ。
かなりの年配に見えるが、老人というわけではない。
鍛え抜いた中年男性という感じの男だった。
そしてもう1人は、パンクな衣装に身を包んだ若い男で。
髪の毛は真っ白に染めている。
……この男は左手にアームターミナルを装備していた。
つまりこの男は悪魔使いである。
「いきなりよくもまあ、やってくれたな」
僧侶風の男が言い
「へえ、片方女じゃん。しかも相当な上玉だ」
パンクな方は口笛を吹いた。
そして
アレ、もらっていいか?
悪魔使いと思しき男は、隣に立つ僧侶風の男にそう問いかける。
僧侶は「好きにしろ」と返した。
そんな2人を前にして。
忍と真月は
「……坊さんは俺がやる。悪魔使いは真月がやってくれ」
「分かった。気をつけてね」
そう言葉を交わし合い。
忍は半身の構えを。
真月はアームターミナルに指を走らせた。