真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「ま、真月様お見事でございます」
フツコは夫と合流して互いの無事を確かめ合っている忍と真月の2人に。
深々と頭を下げた。
「えっ、何が?」
そして真月はそれに戸惑っていた。
彼女にとっては別に誇ることでは無かったのだ。
ただ、自分で出来ることを全力でやった結果……
「ベリアルとネビロスをひとりで討伐された契約主様に最大限の敬意を払わないなんてありえません!」
……そうなっただけなのだ。
だからフツコにただの契約主以上の敬意を払われることに戸惑いがあった。
「すばらしい! すごすぎます!」
フツコの様子は、神か何かに向き合っている信者のようであった。
ますます戸惑いがあった。
「うーん……こっちにとって有利な状況になるように誘導して、相手が油断するようにこっちの戦力を隠したんだから、そこまで言うこと無いと思うんだけど……」
困惑する真月に。
「それはご謙遜です!」
フツコはあくまで真月を崇め奉っていた。
そして
六本木に戻ると。
そこは様変わりしていた。
前は普通の街であった。
住んでいる人間は生者にしか見えなかった。
それが今は。
「アアアアア」
「オオオオオオ」
全ての住人が、全てゾンビに変わっていた。
腐敗している者はザラ。
まともな者はただの1人もいない。
腐敗していない者は、生々しい致命傷になった負傷を晒している。
首がへし折れていたり。
胸が抉れていたり。
……おそらく、本当は最初からそうだったのだ。
それをネビロスとベリアルの魔力で、本当の彼らの姿を認識できなくなっていたのだろう。
「……酷いニオイ。私たちも誤魔化されていたのね……あの2体の悪魔の魔力で」
真月は顔を顰めて、意味不明の声をあげて無目的に動き回っているゾンビたちに目を向けた。
悲痛な表情で。
彼らはここが旧世界を復活させた楽園と信じてやって来て。
そしてこうなったのか。
無惨すぎた。
そしてその中には
「オオオ……スズイ……タカマキ……ユルサン……」
あの男性もいた。
鴨志田だ。
真月は彼に「気持ち悪い人だった」と言った。
実際、嫌悪感しかなかった。
忍の妻と自己紹介したのに、この男は自分に対して女を感じている。
それが視線で伝わって来たのだ。
だから彼女はこの男が気持ち悪いと思った。
……だが
それは死んでざまあみろということではない。
鴨志田の胸に、大きな裂傷があり。
その傷跡から折れた肋骨やはみ出した内臓がのぞいていることを理解すると。
(間に合わなかった)
彼女は少し申し訳ない気持ちになった。
あのときに殴り倒してでも止めていれば、こうはならなかったかもしれない。
「真月」
そんな彼女に、彼女の夫は肩に手を置いた。
彼女の夫……佐上忍はこう言ってくれた。
「あのときは情報が無かった。しょうがなかったと思おう」
……その通りである。
あのときは、ベリアルとネビロスが死者の街を作っていることへの確証が無かった。
そのときの判断に責任を求められたとしてもどうしようもない。
2人は黙って
忍は仮面ライダーに変身し。
真月は火炎を扱う仲魔の龍神キヨヒメを召喚した――
そしてふたりは
ゾンビを全て倒した。
見つけたゾンビを全て焼き払い、灰にしたのだ。
心を殺して全て作業として行ったが
「……アリガトウ」
偶然だったのだろうか?
それとも気の迷いだったのだろうか?
そんな言葉を聞いた気がして。
真月はそこにいくらか救われた気がした。
ゾンビを倒し尽くしたとき。
六本木は無人の街になった。
偽りとはいえ、あれだけ賑わっていた街に、人間がひとりも居ない。
あの街には生者は彼ら以外誰も居なかったらしい。
「どうする……?」
彼ら2人は無人の喫茶店に入り。
そこの2人用テーブル席に座り。
今後の予定を話し合っていた。
忍は言う、
「ここはもう、自分たちで考えていくしかないんじゃないの」
ここにはもう、誰も居ない。
話をする相手がいないのだ。
そうせざるを得ないのだが……
今の大破壊後の東京の道をどういけばいいのか。
信頼を置ける情報が無い。
でも、先に進むことが決定事項である以上、行かなければならない。
確証が無いからやめよう、は最初からないのである。
そこで
「……地下鉄を使わない?」
真月が提案をする。
地下鉄のあった空間を歩いて行かないか? と。
彼女がそう提案した理由は
「地下鉄はおそらく、核ミサイルの影響を一番受けていないわ。路線通りに行けると思う」
……という理由であった。
(なるほど)
確かにこの六本木に入るときに使った地下道は、崩落のような明確な破壊は無かった気がする。
暗い場所であるから、そこをなんとかできるのであれば信頼性は高いかもしれない。
「分かった。それで行こう」
そして2人の意思は決まった。
「まずは地下鉄の切符売り場を探そう」
忍の言葉に真月は頷き。
2人は行動を開始した。
適当な入り口から地下鉄の地下道入りし。
彼らは切符売り場を探すために路線図を探した。
懐中電灯のライトで闇を照らし、用心の仲魔を連れて彼らは地下道を彷徨う。
「……昔みたいに明るかったら楽だったんだけどね」
闇の中、歩きつつ真月。
確かに昔のように地下道が明るく照らされていれば、案内が良く見えて迷うことは無かったかもしれない。
時間にして1時間は彷徨っていたかもしれない。
やっとだった
「あ、あるよ! 切符売り場!」
真月が嬉しそうな、弾んだ声でそう言った。
彼らはやっと、六本木の地下鉄の切符売り場を探し当てた。
彼らはライトで路線図を照らし、進むべく道を確認する。
そして
「……いけそうだね」
「そうだな」
六本木から銀座まで歩いて行けそうであるという結論を得た。
その地下鉄の路線が存在しているからだ。
「しかし、地下鉄を歩くのか……」
忍は進み方が判明したと安堵しつつ、そう呟く。
当然のことながら、彼らはこれまでの人生で地下鉄の線路を歩いた経験は無かった。
何も知識が無い。
思わぬ何かがあるかもしれないから、気をつけなければ。
そう、思ったとき
「やあ、こんにちは」
突然だった。
彼ら2人に、話し掛けて来る者がいた。
警戒用に出していた霊鳥アルゴスは何も知らせて来ていないのに。
彼らは弾かれたように後ろを見た。
そこには……
うっすらとした笑みを浮かべた、車椅子に乗った初老の男性が居たのだ。
赤いスーツを着て、眼鏡を掛けた知的な男性が……
明かりもつけずに。