真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「とりあえずさ」
真月は歩き出す。
夫について来て、とは言わずに。
「まずは情報を集めましょう」
それはそう。
まず情報が無いと始まらない。
「そうだね」
それには同意するしかない。
だが、ならばまず最初にどこに行くのか?
「どこから行く?」
自分に同行して来る忍のその問いに、真月は
「そりゃあ、ガイア教徒よ」
迷いなく、そう答える。
ガイア教徒たちは、この銀座地下街でメシア教徒たちとまだやいのやいのと怒鳴り合っている。
他の一般の銀座の住人たちは、遠巻きにその様子を不安げに見つめている。
この状態で、ガイア教徒たちと接触するには……
「あの人にしましょう」
真月が選んだのは、ガイア教徒の集団で中心部から一番離れた位置にいる人間だった。
スキンヘッドで革ジャン。
他のガイア教徒と同じ格好で。
「メシア教はクソだ!」
言い合いを煽る言葉を叫んでいた。
そんな男に真月は
ちょいちょい、と肩を指で叩くようなことをする。
男は振り返り、少し好色な笑みを浮かべた。
(……少しだけ気が引けるけど、しょうがないよね)
真月は無遠慮なガイア教徒の視線に黙って耐え。
「何だい姉ちゃん? ……入信希望者か?」
「ちょっとお話を聞いてみたくて……よろしいですか?」
そう、笑顔を作って切り出した。
心理的に、美しい女は無害であると思われやすい。
特に男に対してはそうである。
これはハロー効果という効果らしい。
目に見える特筆すべき美点に引きずられ、他の性能も全て良いはずだと思い込む認知の歪みである。
ガイア教徒のスキンヘッドの男は
「おういいぜ! ガイア教の何が訊きたいんだ? ここではうるさくて話せねえか? 何ならベッドの中で二人きりでも……」
そう、下種な内容の返しをする。
真月としては
(ふっざけんな)
内心不快で、蹴りの一つでも入れてやりたい気分であったが。
「それはお話を聞いて、入信したくなったときでお願いします」
そう、笑顔を崩さずにそう言ったのだった。
ガイア教徒の男としては、美人の入信者のログインボーナスセックスの恩恵に自分だけが与りたい気持ちがあった。
なので、言い合いをしている仲間には一切何も告げずに集団から離れた。
「なあ、俺はかなり上手いんだ。絶対に満足させてみせるぜ」
真月についてくるガイア教徒の男はそんな不愉快極まりない言葉を吐いてくる。
真月は「そうなんですね」と返しつつ
(黙れカス)
そう、心で毒づいていた。
そのまま、銀座地下街の人目に付きにくい区画まで来て
「ここでどうでしょうか?」
「おう、こんなところでいいのかい?」
ガイア教徒の男はニヤニヤしながら、真月の胸元、下腹部、太腿にねばつくような視線を投げた。
全く警戒していないようだった。
そこに
物陰に隠れていた忍が飛び出し、その口を手でふさぎ、腕をねじり上げて拘束する。
頭の中がピンク一色に染まっていたガイア教徒の男は全く抵抗できなかった。
そして真月は
素早くアームターミナルに指を走らせ
『DEMON KING SUMMON』
「グハハハハ! 真月召喚士、今日の用件はなんじゃー?」
地面に描かれる魔法陣から呼び出される緑色の異形の魔王。
魔王マーラを呼び出したのだった。
「ここ、銀座でメシア教徒とぶつかってでもガイア教を布教しようとしているのは、銀座を防波堤にするためで、渋谷をメシア教徒に押さえられたので、これ以上の勢力拡大を防ぎたいから……」
「ここがメシア教に押さえられると、地理的な関係で六本木も取られる。ガイア教団としてはそれは避けたい……」
「なるほど。もういいわ」
真月は魔王マーラの魔力で洗脳し、ガイア教徒の男に知っている情報を洗いざらい喋らせていた。
なるべく使いたくない事ではあるが、拉致して拷問して喋らせるよりは億倍マシである。
ガイア教徒の男の話によると。
ここ、銀座で現在メシア教徒ととの布教合戦が起きているのは、ここを六本木取得のための拠点にしたいかららしい。
元々、ガイア教団は六本木が魔王ベリアルと堕天使ネビロスの支配下にあることを知っていた。
だがそこで、先日まだ未確認情報ではあるが、六本木が無人の街になったという情報を手に入れたのだ。
ガイア教団としては、渋谷がガイア教徒お断りの街になってしまったことを良く思っていなかった。
だからもし、その未確認情報が真実なのであれば六本木はガイア教徒のものにしたい。
そのためにはこの銀座を中継基地として、ガイア教徒が押さえる必要がある。
それが上の判断で。
この男たちはそのために、ここに派遣されて来たらしい。
「なるほどな」
隣で聞いていた忍は腕を組み、思案する。
そして
「だったら、六本木に注力した方がいいんじゃないか? 本当に欲しいのは六本木なわけだし?」
「そうだけど、この人たちは六本木が安全な街になったことをまだ本当には知らないから」
夫婦の会話。
忍は「ここで布教合戦をしているくらいなら、本丸である六本木に行けよ」といい。
真月は「この人たちは六本木が安全な街になったことにまだ確信をもってないのよ」と返す。
だったら
「だったら、こいつに俺たちがベリアルとネビロスを倒して、ゾンビも倒し尽くしたんだということを教えて帰してやればどうかな? 別に嘘を教えるわけじゃ無いし、これくらいならいいだろ」
……忍はそう提案した。
そして。
ガイア教徒の男がダッシュで仲間のもとに戻って行く。
催眠状態で、忍と真月の活躍で魔王ベリアルと堕天使ネビロスが討ち取られ、六本木が空っぽの状態になっていることを教えられ、その状態で帰らされているのだ。
今の彼は……
女の色香に迷ってついて行ったら、相手はとんでもないやつらだった。
なんと彼らは六本木のベリアルとネビロスを倒したらしい。
彼らは自分から情報を取ろうとしたが、自分は一切何も話さなかった。
だが相手はあまりにも強く、勝てそうにないので必死で逃げた。
……という、嘘では無いが創作された記憶を抱えている。
彼はその情報に絶対の確信を持っているから、おそらく仲間に伝えるだろう。
それを知ったガイア教徒たちはどう動くか……?
それをガイア教徒の男の遠ざかっていく背中を見つつ考えながら
「次はメシア教徒行きましょうか」
真月は次のステップについて、そう口にした。