真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「あなたたちガイア教徒でいいのよね?」
真月はパンク風の男……敵の悪魔使いにそう訊ねる。
一応の確認だ。
万一人違いであれば大問題だから。
敵悪魔使いは
「ああ、そうだぜ」
特に誤魔化さなかった。
真月を軽く見ているのかもしれない。
彼女自身、その部分を期待して訊ねたところがある。
「ガイア教徒がこんな地方に一体何の用? 確か本拠地は上野でしょ?」
ガイア教徒は東京の上野に本拠地を構え、そこに自分たちの理想に沿った街を作っているらしい。
噂だがそういう話を聞いたことがある。
彼らは盗賊団らしいが、何故ここまで出向いたのかが分からない。
東京からここまで来るのにかかるコストに見合わないのではないか?
実は内心、彼女はそう思っていた。
パンク男はニヤニヤ笑っている。
真月の様子が面白いのか。
彼はニヤつきながら彼女の問いに答えた。
「こっちの方に眠ってるお宝を回収に来たんだよ」
「……お宝?」
真月は理解が出来ず、訊き返す。
前の世界なら分かる。
換金できる何かを回収しに来る、ってことは。
でも今の時代、前の世界で「価値がある」と思われていた物品にどれほどの価値があるというのだろうか?
パンク男は優越感を覚えたのか、さらに笑みが深くなった。
「食糧じゃ無いわよね?」
「違うな。まぁ、ついでで略奪はしたけどな」
パンク男は真月の困惑を愉しんでいるようだ。
そして
「なぁアンタ、俺の女にならないか? 俺結構強ええんだ。ガイア教徒は強い者ほど高い地位を得る。……贅沢させてやるぜ?」
目をギラギラと輝かせて彼女にそう提案をする。
真月にとっては聞くだけで不愉快になる提案を。
彼女は即座に
「嫌よ」
そう返した。
これ以上この男と会話する意味はない。
そんな彼女の決断が見える返答だった。
パンク男は
「何でだ? お姫様同様の生活が出来るんだぜ? ガイア教の上位層の男の女になれば、上野では特権階級の……」
「悪いが」
なおも食い下がるように、真月に対して自分の持ち物になることのメリットを並べようとするパンク男に。
忍が横入りするように、口を挟む。
「……彼女は俺の奥さんなんだよ。やめてくれるか?」
その声にはイライラしたものが含まれている。
耐えきれなくなって横入りしたのだろうか?
目の前で自分の妻を奪うという意志表示をパンク男にされたことに対して。
そんな忍の言葉にパンク男は
「あっそ。じゃあお前を殺せばこの女は俺のモンな? 今はそういう時代だし」
忍の苛つきに興味が無いというふうに。
そんな、文明人と呼ぶことができない、野蛮極まりない言葉を吐いた。
すでに相手がいる女が欲しいなら。
相手の男を殺せばいい。
それで目当ての女が手に入る。
それがこの男の中の真理なのだ。
「させないわよ」
そんな男の言葉に真月は怒りの表情を浮かべる。
目が氷のように冷たくなった。
そして彼女の指先が踊り、アームターミナルのキーボードを叩く。
すると2つの魔法陣が地面に浮かび上がった。
『KUNITSU-KAMI SUMMON』
『DRAGON DEITY SUMMON』
そこから呼び出される2体の悪魔。
弥生時代のお姫様という格好の和風美女。
国津神スセリビメ。
国津神の王であるオオクニヌシの正妻であり、高天原を統べる神であるアマテラスの弟、スサノオの娘でもある。
英雄神としての顔を持つスサノオの娘らしく、その視線には強さがあった。
そして一緒に呼び出された、雅な貴族の時代の和風美人という顔の下に大蛇の身体を持つ異形の悪魔。
龍神キヨヒメ。
彼女は平安時代の伝説の人物。
彼女はとある僧に恋をし、結婚の約束を取り付けるも。
その約束を反故にされた。
そしてその怒りと憎しみで人の身から大蛇のような龍神に変異し、想い人であった僧を追い詰め、焼き殺した。
悪魔としての彼女は、火炎魔法の使い手であり、灼熱の火炎の息を口から吐くことができる。
そんな追加の2体の悪魔。
妖魔ヴァルキリー。
地母神ハリティー。
国津神スセリビメ。
龍神キヨヒメ。
その4体を従えて、真月はパンク男と対峙する。
パンク男は口笛を吹き。
同じようにアームターミナルのキーボードにコマンドを打ち込んだ。
すると男の足元にも、ひときわ大きな魔法陣が浮かび上がり。
そこに1体の悪魔が召喚され、この世界に実体化した。
それは
分厚い黄金色の全身鎧を身に纏い、剣と槍で武装した重戦士。
兜のせいで顔が見えない。
だが体格的に男なのは間違いなく。
加えて身長が人間の男性とは比較にならないほど大きい。
3メートル近くあるだろうか……?
パンク男は召喚が済むと同時に勝ち誇る。
そして自分が呼び出した悪魔の名前を大きく叫んだ。
「これが俺の最強の仲魔である軍神アレスだッッ!」
軍神アレス。
ギリシャ神話の神々の王であるゼウスの息子であり、戦争の神。
強力な神なのは間違いない。
血筋は言うに及ばず、戦争の神という神性。
戦場に呼び出すことにこれ以上相応しい悪魔は無いかもしれない。
「さあ、じゃあ今から俺のものになった後のことを考えとけッ!」
そしてその叫びと共に、パンク男は自分の仲魔に戦いのゴーサインを出した。
動き出す軍神。
迎え撃つ4体の真月の仲魔。
妖魔ヴァルキリーが大きく羽ばたき、剣を構えてアレスに突っ込み。
キヨヒメがファイアブレスを。
そしてスセリビメは手の中に剣を召喚し、ハリティーと一緒にアレスに立ち向かっていく。
戦いの火蓋が斬って落とされた。