真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第141話 最後の心残りは

「ご依頼通り、ガイア教徒とメシア教徒に他所に行って貰いました」

 

 ラグの店に再び来店し。

 ふたりは依頼の結果報告をする。

 

 ラグの店の店主はカウンターの店主席で何か本を読んでいたが

 

「えっ、本当に?」

 

 マジかよ、という顔をする。

 彼自身、出来ると思っていなかったのか。

 

「ええ、本当です。こんなことで嘘は言えないですよね?」

 

「何なら確かめてくださってもいいですよ」

 

 ふたりは自信たっぷりにそう返す。

 確かにそうである。

 

 ちょっと外に出て、状況を見れば一目瞭然。

 そんなすぐにばれる嘘、吐くとは思えない。

 

「どうやったのかすごく気になるけど……まあいいや。引き受けてあげるよ」

 

 そしてラグの店の店主は、加工して欲しい宝石の提出と。

 真月の薬指のサイズの測定を求めた。

 

「……言わなくても婚約指輪設定でやってくれるんスね」

 

 忍が思わずそう洩らすと

 

「キミ、言ってたじゃん。奥さんにアクセサリーを贈ったこと無いって。じゃあおそらくそうだなって想像つくさ」

 

 彼は差し出された真月の左手薬指のサイズを測りながら、忍の言葉にそう返す。

 

 本来商売ではやってないことを、強引にお願いしたのに。

 ちゃんとこっちの事情を考えてやってくれる。

 

 ふたりはそれに素直に感謝した。

 

 そして

 

「ダイヤがかなり大きいからね。ペアリングにした方が良いと思うんだけど……? どう?」

 

 真月の薬指のサイズを測り終えた店主は、続けて忍にそう提案する。

 

 曰く、ダイヤがかなり大きいので「このままでは災いを呼ぶよ」とのことで。

 ならばダイヤを分割し、ペアリングにした方が良いのではという提案。

 

 店主曰く、宝石は粒が大きくなればなるほど、魔力を溜め込みやすい性質が強くなり。

 悪魔が欲しがるようになる。

 

 指輪は常時つけているのが普通であるアクセサリー。

 

 そんなものを見せびらかしていると、良くないことが向こうから飛び込んでくる、とのこと。

 

(なるほど)

 

 確かに。

 要らないトラブルは呼ばないに越したことはない。

 

 しかし

 

「ダイヤの分割なんて出来るんですか……? ダイヤですよ? この世で最も固いんですよね?」

 

 忍はなんとなく思った疑問についてそう訊ねる。

 するとラグの店の店主は

 

「まあ、楽じゃないけど……僕もこんなあまり普通じゃない宝石商だからね」

 

 可能だ、との返答。

 

 ならば答えは決まっている。

 

「是非お願いしたいです……その場合、結婚指輪ですか?」

 

「だね」

 

 そんなラグの店の店主の言葉を聞き。

 今度は忍が左手を差し出した。

 

 

 

「どのくらいかかるんですか?」

 

 忍の左手薬指のサイズを測定し終え。

 あとはお任せする段階になったとき。

 

 忍は一応訊いた。

 納期がいつになるのかと。

 

 すると

 

「明日の昼くらいかな」

 

 彼らは正直、1週間くらいかかるのかと思っていたのだが、破格の早さだった。

 何故そんなに早いのかを問うと

 

 そりゃあ、僕は普通じゃないからね、と。

 なんてことないふうに店主は色々と片づけをしつつそう返してきた。

 

 

 

「品川に行った帰りに引き取ろうと思ってたけど、そうならなくて良かったね」

 

「そうだね……品川での成り行き次第で、即東京を脱出しなければいけなくなるかもしれないし」

 

 ここ銀座には宿泊場所が無く。

 路上で寝ている人間も珍しくない。

 

 犯罪避けで、人が多い場所に行き。

 その場で荷物の中から毛布を出し、寄り添う。

 

「明日の昼に……やっと指輪をあげられる」

 

「私も楽しみにしてるから……お揃いの結婚指輪」

 

 真月は夫の腕に寄りかかり、目を閉じる。

 今日は色々あって、そろそろ寝る時間だ。

 

「おやすみなさい……」

 

「おやすみ……」

 

 そしてふたりは眠りに落ち

 

 次の日。

 

 

 再度、訪れたラグの店。

 

「おお。指輪、出来てるよ」

 

 彼らの顔を見て、店主は白い布の上に置かれた2つのリングを差し出してきた。

 

 出来立てのダイヤモンドのペアリング。

 

「ケースが無いのは簡便な。……さあ、付けてあげなよ……お互いに」

 

 店主の言葉に従い、緊張した面持ちで。

 忍は 

 

「真月、左手を出して」

 

 妻にそう言って。

 その言葉で真月は興奮した表情で

 

「はい……」

 

 そっと左手を差し出す。

 指輪を嵌めやすいように、五指を開いた状態で。

 

 忍はその手を取り、指輪の片方をその手で妻の手に嵌めた。

 

 そして真月は自分の指輪を見つめて

 

「……今度はあなたが」

 

 妻のその言葉に。

 忍は左手を差し出した。

 

 真月は夫の手を取り、ペアリングのもう片方を嵌めていく。

 

 そしてついに、彼らの左手薬指に同じデザインの指輪が光ることになった。

 

「おめでとう。良かったね」

 

 ラグの店の主人は2人の様子を見て、そう祝福の言葉を掛ける。

 彼らふたりは

 

「ありがとうございました」

 

「特急で仕上げていただき本当に助かりました」

 

 深く頭を下げ。

 店を出て行った。

 

 

 

「これでもう、思い残すことはないよね」

 

 品川に続く道を歩きつつ、真月は言う。

 彼ら2人とも、メシア教徒から貰ったメシア教徒の制服……通称メシア服に着替えていた。

 これから品川に潜入するわけだから当然だ。

 

 真月の言葉に忍は苦笑する。

 

「生きて帰るの前提だからそれはおかしい」

 

 思い残すことはないなんて、死を覚悟しているみたいじゃないか。

 そんな夫の言葉に

 

「それはそうだけど……気持ち的にはそうじゃない?」

 

 新宿では思い出を作るチャンスだったから、宿泊場所で愛し合ったし。

 ここ銀座では、ペアリングを作るチャンスに出会ったから、そうした。

 

 2つとも、後で後悔することが無いようにだ。

 

 忍は真月の言葉に

 

「確かにね」

 

 そう同意を示しつつ

 

「でもさ、ひとつ大事なことを忘れていないか?」

 

「えっと?」

 

 忍の問いに、真月は少し考えこむ表情を見せた。

 

 なので彼は

 

「まだ挙げてないじゃん……結婚式」

 

 それを指摘した。

 結婚式を行える状況じゃないからずっとしていなかった。

 彼らはまだ、結婚式を挙げていないのだ。

 

「だから全然あるよ……思い残すこと」

 

 それをそう、軽い口調で言う忍。

 忍の言葉に真月はハッとした表情で

 

「……そうだったね。前言撤回……」

 

 そう呟くように言い、唇を笑みの形に歪めたのだった。

 

 その目に、強い決意を秘めながら。

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