真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
第142話 品川の街は
銀座から徒歩で南へ、南へと歩く。
品川に向かって。
品川は現在、メシア教の総本山である。
そこにはメシア教の最大の建築物である品川大聖堂がある。
エリートのメシア教徒たちがそこに住んでいて、メシア教徒たちが生涯の目標として「そこに住むこと」を掲げることが多い場所でもあるらしい。
「本来は歩いて行っても大した距離では無いんだろうけど……結構かかるね」
「まあ、平時で歩くのとは事情が違うしな」
そんな言葉を交わしつつ
すでに2人は3時間程度歩き続けていた。
乗り物があれば楽ではあったが、生憎とそういうものは無かった。
ここはメシア教徒たちのお膝元であるせいか、ガイア教徒のような「強盗しやすい」人種がうろついていなかった。
そして
「もうすぐ品川に着くころよね」
真月は、大破壊から生き残っている標識を見上げて、そう呟く。
忍は隣を歩く妻の言葉に
「あの標識、品川駅って書いてたように見えるし……たぶんそろそろかな」
そう言って同意した。
すると
彼らに近づいてくる者たちがいた。
純白の聖戦士風の衣装に身を包んだ男女……
メシア教徒のテンプルナイトたちだ。
彼らは忍と真月の2人に駆け寄って来て
「キミたちは何者だ?」
そう訊ねてくる。
品川周辺を警護するテンプルナイトなのかもしれない。
「……ご苦労様です」
「入信希望者です」
とりあえず彼らは常識的な反応をする。
ここで揉めても良いことはない。
「入信希望者ということは、キミたちはメシア教徒では無いのか?」
「いえ、心はすでにメシア教徒ですが、入信の儀式を品川で行いたいと銀座で申し上げましたら、メシア教徒の方たちが親切に品川に行けるように配慮して下さったのです」
銀座でメシア教徒に配慮して貰った。
品川で入信儀式を行いたい。
……法と秩序を重要視するメシア教徒としては無下に出来ない言葉である。
それは他のメシア教徒の顔を潰す行為であるから。
それは彼らの聖典にある「侮辱の罪」に該当する。
よって
「申し訳ないが、そのメシア服の製造番号を見せて欲しい」
「分かりました」
袖口に印字されている12桁の英数字。
彼らはそれをテンプルナイトたちに見せた。
テンプルナイトたちは手元のスマホのような機械でそれを確認し
「……失礼した。確かにそれは、銀座の方に布教活動に向かった者たちが所持していたはずのモノだ」
問題無いと判断。
このままの通行許可が出た。
「ありがとうございます」
「このまま真っ直ぐ行けば品川の正門がある」
頭を下げる2人に、テンプルナイトたちは教えてくれた。
ここから先への行き方。
そして
「……悪いが出来るのは入信儀式までだ。居住は選ばれた者しかできない。そこは覚悟してくれ」
そんなことを。
真月はその言葉に戸惑いの様子を見せて
「えっと、ならば私たち夫婦はどこに向かえば?」
そんなことを言った。
ここで戸惑わないのは不自然であろう。
品川に住むことの意味の大きさを考えると
入信儀式を終えた後に、どさくさでそのまま品川に住む。
これを考えてしまうはずだから。
「俺たち夫婦はどこに住めばいいのですか? 早く落ち着いて、人としての生活を送りたいんです」
忍もそれに乗った。
テンプルナイトはそんな「目論見が外れて不安がっている夫婦を演じる2人」に
「渋谷にメシア教徒の新しい街を作っている。そこに行けば受け入れて貰えるだろう」
冷徹な顔でそう返した。
事情は分かるが決まりは決まり。
大人しく従いなさい。
そう言いたげな表情で。
そしてしばらく歩き続けて。
品川エリアの正門が見えて来た。
コンクリートの防壁に設けられた、金属製の巨大な門だ。
そこには門番のテンプルナイトたちが居て
「……キミらが入信の儀式希望者か?」
どうもすでに、彼らの情報が伝わっていたらしい。
出会って早々、そんなことを言われた。
彼らは
「よろしくお願いします」
2人はテンプルナイトに深く頭を下げた。
「街の中央に市民のための大教会がある。そこで入信の儀式を頼めばいいですよ」
門番役のテンプルナイトは、簡単な荷物検査の後、品川入りを許可してくれた。
(偽装工作、バレなくて良かった)
一応真月は、暫定政府の制服類、アームターミナルなどの「見られたら困るもの」は別に分け、バレないようにしていたのだが。
見抜かれた場合は戦闘は避けられない。
そう思っていた。
でも。それは杞憂に終わったらしい。
「ありがとうございます」
そしてもう一度頭を下げ。
ふたりは品川に入った。
品川の街は、完全な復興を遂げていた。
どこまでの労力を傾けたのか。
その建物はプレハブが多かったが、そこは完全な街であった。
家が立ち並び、人が歩いている。
道でボール遊びをしている子供もいた。
「ここ、電気水道やガスはあるのかな?」
ふたりは、街並みを見回しつつ歩く。
彼らが探しているのは入り口で言われた大教会と……
(品川大聖堂)
彼らのプランは、大教会で品川大聖堂に入るための情報を取得し。
その情報から品川大聖堂に乗り込む。
この流れであったから。
(……ここは敵地。可能な限り警戒されないようにしないとね)
真月はそんなことを考えつつも。
目的地を示す、標識の類が無いかを探す。
そのときだった。
「おおおおおおおお!」
妙な叫び声がした。
それと同時に、大きな歓声。
(あれ……?)
忍はその声に、何だが聞き覚えがあった。
だがそれが何であるのかについては思い出せず
気になったので、ふたりはその歓声の方角に足を進め。
そしてそこに辿り着いたとき。
――彼らは激しく後悔をした。