真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
その後、彼らは街を見て回った。
その過程でまた処刑場近くを通りかかったとき。
嫌な気分になった。
まだ、処刑が続いていたからだ。
舌を切られた女の悲鳴が響き渡り、愉しそうな観客たちの笑い声が聞こえて来た。
無視するしかないので彼らは黙って通り過ぎていく。
その処刑場は金網で囲われた場所で、特にメシア教らしい装飾品は無かった。
イメージは江戸時代の公開処刑場を、現代風にアレンジした感じであろうか。
「うーいあえてうああいぃぃぃ!!」
「ギャハハハハハ! 何言ってるかわかんねーよ!!」
「ざまあみろ十罪おんなああああ!」
……そんな胸が悪くなる悲鳴を背中に聞きながら、彼らは去っていき。
忍は
(彼らとは分かり合うのは絶対に無理だ)
その思いを強くした。
彼らは元異教徒を平気で差別する。
法を掲げておきながら、だ。
だから絶対に分かり合うことはできない。
プレハブが多い街だが、一部コンクリートで出来た建物もあり。
そういうのは多くが
生活物資配給所。
図書館。
将棋囲碁集会所。
そういう、公共の施設であった。
彼らが今目指しているのは市民が利用するという大教会で。
それはそれほど苦労することも無く見つけることができた。
形が典型的であったからだ。
白く塗装された壁に青い屋根の、背の高い建築物で。
屋根のてっぺん付近に、十字架に似たマークが描かれている。
メシア教の聖印だ。
誰が見ても教会と思いそうな形状である。
「あのさ」
そしてその教会に入る前。
忍は真月に訊ねた。
「ここで品川大聖堂へ行くための情報を取りたいわけだけどさ」
言いつつ、隣の妻に視線を送り。
そして
「どうすれば良いと思う?」
彼の言葉に。
妻の見解は……
「ええと……あのさ」
少し躊躇い、言いにくそうに
「さっき、メイガスって地位の話が出たじゃない?」
あのときの……公開処刑場で聞いた話を持ち出す。
忍はあの悲惨で醜悪な光景を一瞬思い出しながら
それを顔に出さずに
「うん」
頷いた。
そして真月はそれを確認し
「メイガスは品川大聖堂に住むことを許されているんだよね?」
……そう続けたのだった。
そう。
あの受刑者は元々メイガスの地位にいる男の妻で。
品川大聖堂に住んでいたと。
あの公開処刑場に集まった人間の1人が言っていたではないか……。
ならば……!
ふたりはメシア教教会の重厚に感じる黒い扉を開き。
メシア教教会の中に足を踏み入れた。
メシア教教会の中は、荘厳な感じの造りにはなっていた。
これがメシア教でなければ、彼らは手放しで褒めたであろう。
全体的なイメージはやはりキリスト教だろうか。
奥の壁の中央に、十字架に似たデザインの紋章が刻まれており。
周囲の壁には青地の布に白でその「十字架のような」紋章を刺繍したタペストリーが掲げられている。
そして今。
運がいいというかなんというか。
無人だった。
「……人が居ないね」
「今日はたまたま、何もイベントが無いってことなのか?」
正面に台がある。
両脇に多人数が腰掛ける椅子がある。
どこからどう見ても教会。
なのに人が居ないということは
「今日は礼拝の日ではないはずですが。何か御用ですか?」
そのとき。
奥のドアから、青と白のカラーの法衣を着た男性が歩いてきた。
多分、メシア教の神父であろう。
「私たち夫婦、ここに洗礼を受けに来たんです」
そこで真月が。
そう、にこやかな感じで応える。
それに忍が続ける。
「一生に1度のことじゃないですか」
その言葉に神父と思しき男性は
「おや、ひょっとして外部で入信希望された方かな?」
「ええ、どうせならここでしたいと思い、旅してきました」
神父の言葉に忍が応える。
その隙に、真月がそっと離れ、神父の死角に回り込む。
忍はその妻の動きで、意図を察した。
なので彼は
「本当に素晴らしい教えですねメシア教は」
メシア教徒が喜びそうなこと、語りたくなることを口にして
注意を引き付けた。
「前の世界では嘘っぱちの宗教しか存在してませんでしたが、メシア教に触れて宗教の真の意味を知りました」
「気持ちはよく分かります。私もかつてはそうでした」
そして神父は語った。
自分は元々企業で働いていた会社員だったことを。
その世界は歪みに歪み、理想世界とは程遠いと感じたことを。
そして社会が間違ってると思い、家族を説得して一家で入信したことなどを。
懐かしそうに、誇らしそうに語る神父。
その後ろで
真月は鞭型COMPを腰から外して神父の後ろで振るっていた。
そして
「魔王召喚」
小さい声で音声入力の言葉を言い
COMPを起動させる。
神父の後ろで、大きな魔法陣の中から男性器に似た姿の巨大な影が出現した。
魔王マーラである。
「ヌハハハハッ! 真……」
「マーラ、この神父の自由意志を奪ってちょうだい!」
魔王の名乗りに被せるように。
真月は素早く指示を飛ばした。
すると、魔王はすぐさま反応し
「ワシの言葉は否定できない! ワシから目を離せない!」
その瞬間。
神父の目が虚ろになった。
……品川大聖堂に入るためにはメイガスと接触し、洗脳するのが確実である。
これは、その布石であった。