真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第146話 明るい家族催眠

 彼らはメシア教の神父を洗脳した。

 問題はここからである。

 

「メイガスって地位の人はここに来るの?」

 

 魔王マーラを帰還させながら。

 

 真月はそう、神父に問いかけた。

 

 すると

 

「月初めの説法の日は、いらっしゃいます……」

 

(……月初めか……明後日じゃん)

 

 真月の頭の中では明後日が月初めであった。

 無論それは、京都御所で使っている暦とここ品川で使っている暦が同じものを使っていることが前提であるが。

 

 なので

 

「それは明後日ということで良いのか?」

 

 当然であるが、忍がその確認を入れた。

 それに対して神父は 

 

「はい……」

 

 肯定した。 

 

(なるほど)

 

 ならば。

 期日までここに留まる必要がある。

 

 速やかな宿泊場所の確保……

 

 それは

 

 

 

「よろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

 メシア教教会の神父の自宅であった。

 メシア教教会で催眠に掛けて洗脳した神父の自宅である。

 

 忍と真月は、神父の一家を全員魔王マーラの洗脳魔法で洗脳した。

 そして自分たちを客として迎え入れるべき上級のメシア教徒として認識させたのだった。

 

 洗脳完了後、神父の家族たちがふたりを歓迎してくれる。

 

 神父の家族は……

 妻の他、娘が3人。

 

 神父の妻は美しい女だった。

 3人の子供を産んだにも関わらず、まだ30代で通用しそうに見える。

 メシア教は生物的な妊娠適齢期に出産することを推奨しているが、神父の話では出産は入信前のはずだった。

 

 ということは、本当に年齢よりも見た目が若いのか。

 

 穏やかな感じの女性であり、長い髪を後ろで括り、白いリボンをつけている。

 

「どうぞよくいらっしゃいました」

 

 神父の妻は上品な感じで微笑む。

 一人前の男の妻という雰囲気を全面に感じる。

 

「ゆっくりしていってください」

 

「どうぞどうぞ」

 

「歓迎いたします」

 

 そこにロングヘアと、ショートカット、ツインテールの年頃の娘たちが挨拶してくる。

 全員神父の娘たちだ。

 当然だが全員母親によく似ていた。

 

「こちらこそありがとうございます」

 

「大変助かります」

 

 忍と真月は娘たちにも頭を下げる。

 

 相手はメシア教徒ではあるが、自分たちは彼らに催眠による暗示を掛けて、メイガスが現れるという明後日までの間潜伏させて貰うのだ。

 

 最低限の礼儀は要るはずである。 

 

 

 

 家に上がり込んで。

 すぐに夕食の時間になり、ふたりは夕食を振る舞われた。

 食事の質は上質とは言えなかったが、この時代では十分なもので。

 

 グラタンであった。

 ふたりは「懐かしい味だ」と感じた。

 

「ごちそうさまでした」

 

「大変美味しゅうございました」

 

 食事を終え。

 ふたりは手を合わせて、礼をする。

 

 すると

 

「あなた方クラスの上級信徒でも、そういう遊びをされるんですね。……一気に親しみを覚えましたよ」

 

 神父の妻が楽しそうに微笑む。

 その意味が分からず

 

「というと?」

 

 忍は聞き返した。

 すると返って来たのは

 

「その風習は穢れた日本人の風習ですよ。敬虔なメシア教徒であれば、まずしない仕草です」

 

 どうやら。

 食事の後の合掌が「メシア教徒としてあり得ない」とのことだった。

 

 ヒヤリとした。

 

(……あ、あぶねー)

 

 もしこれが催眠暗示なしであったなら。

 きっと今の振る舞いで正体が露見していたはずである。

 

 危ないところであった。 

 

「そうですよねぇ」

 

「そうそう」

 

 作り笑いをするふたり。

 

 この一家には催眠が掛かっている以上、まず「見抜く」という行為ができない。

 

 なので取り繕う必要は無いが、焦りはある。

 

 言葉を選びつつ、真月は

 

「神父さん……ええと、小石川さん」

 

「なんでしょう?」

 

 この家の家長である神父・小石川。

 

 彼と、明後日の話をした。

 

「メイガスの人がこちらにやってくる段取りなんですが」

 

 自分達の目的のため。

 メイガスの行動を把握しなければならない。

 

 そのための話だったのだが

 

「ああ、メイガスの松浦様なら、説法前日である明日の午後に我が家に泊まりにいらっしゃいますよ。いつもそうなんです」

 

 ……意外にも。

 ことは都合よく回るようであった。

 

 

 

 そして次の日がやって来た。

 夕方の16時くらいである。

 

 司祭の服を着たがっしりした中年男性が、この神父の家に訪ねて来た。

 肌に少し老いが見られるが、まだまだ精力的に働けそうな立派な男性である。

 

 彼こそがメシア教団でメイガスの地位を与えられている男で。

 名を松浦と言った。

 

 メイガスは教団内でも、アークビショップ、ビショップ、アデプトに次ぐ第四位の位階である。 

 

 教団内の実力組織であるテンプルナイトを絡めると、もう少しややこしくなるのであるが、旧世界の会社組織で言えば大体課長職くらいに相当する。

 

(さて、小石川の子供たちはどうなっているのだろうか? ……1カ月では変わらないか)

 

 この品川の大教会で神父の仕事をしている小石川は、彼の昔からの親友であった。

 旧世界で自分の仕事で悩んでいた彼を、メシア教の世界に引き込んだのも彼である。

 

 彼は小石川の子供たちを自分の子供のように可愛がっていた。

 当然である。

 

 親友の子供なのだ。

 彼は小石川の娘たちの成長を心から楽しみにしていた。

 

 彼は小石川の家の前で深呼吸をする。

 先月も訪れたわけであるが、毎回毎回緊張がある。

 

(さて)

 

 そして彼は軽く気合を入れ。

 

 インターホンを押した。

 

 すると

 

 

 ピンポーン。

 

 

「はーい」

 

 どたどたという音。

 

「松浦のおじ様! いらっしゃい!」

 

 ツインテールの末娘が玄関ドアから顔を出し、彼を出迎えた。

 満面の笑みで。

 

 彼女は彼を家に招き入れた。 

 

「お茶の準備は出来てますから」

 

 積極的に彼の手を引いて引っ張り込もうとする。

 

「いやいやいや、別にそんなに急がなくても」

 

 苦笑しながら。

 彼は「靴くらいゆっくり脱がせてくれ」と言った。

 

 そこに

 

「お鞄をお持ちしますね。おじ様」

 

 次女のショートヘアの娘が鞄を持ちに来る。

 

 にっこりと微笑みながら。 

 

「おじ様、毎月ご苦労様です」

 

 そしてそこに長女も加わった。

 

 この長女は、先月結婚したばかりである。

 彼女の夫になった男は、彼が世話をした男で。

 

 テンプルナイトの中でもとりわけ優秀な男であった。

 そのため、よく家を空けるので

 

 彼女は結婚しているにも関わらず、こうして実家にまだ住んでいた。

 そこに彼が思いを馳せていると

 

「おじ様、私もそろそろ適齢期よね! 結婚相手を紹介して欲しいな!」

 

 小石川の末娘が、靴を脱ぐ彼にそんなことを言う。

 姉が幸せそうだから、自分も結婚したいと思ったのだろう。

 

 メシア教は素晴らしい。

 

 旧世界を思い返せば

 

「結婚しないで遊びたい」

 

「結婚するなら優しくて大金持ちの美形でないと嫌だ」

 

 どいつもこいつも我欲丸出し。

 人間の思考をしていなかった。

 

 滅び去ってしかるべき、穢れた世界だった。

 

 それに引き換えここはどうだ?

 男も女も他者を敬い、十罪を犯さず十徳を積むことに専念する。

 だから皆、適齢期になったらすぐ結婚するし、子供も産む。

 

 差別も争いも無く、少子化なんてまるで縁がない。

 

 理想世界ではないか。

 

(本当にいい世の中になった)

 

 彼は靴を脱ぎ、家に上がって

 

「おじ様、こちらにどうぞ。父が待ってます」

 

 次女に案内される。

 

 小石川家のリビングに。

 

 そしてリビングのドアを潜り……

 

 やや広めのリビングに入ると。

 

 

 そこに

 

 

 全長4メートルはある、緑色の男性器の姿をした怪物が居た。

 

 あまりのことに動けなくなるメイガスの男。

 

 そしてその怪物のすぐ傍に、日本人形みたいに綺麗に髪を切り揃えた長髪の美しい女が、腕を組んで仁王立ちで立っていて。

 

 言ったのだ。

 

「マーラ、催眠術」

 

「ワシの言葉は否定できない! ワシから目を離せない!」

 

 ……その瞬間。

 彼の意識は無くなった。

 

 

 

(はい、いっちょあがり)

 

 これで品川大聖堂への道が繋がった。

 そうと決まればもうここに用は無い。

 

「行くか」

 

「ええ」

 

 忍と真月は頷き合った。

 

 そして

 

 メシア教徒とはいえ、散々世話になったのだからお礼を言うべきだ。

 そう思った忍は、さっきのマーラの言葉で停止状態になっているメシア教徒の家族に頭を下げていた。

 

 しかし……

 

 そんな彼を他所に、真月が家のテーブルに金貨を……つまりマッカを並べていた。

 結構な額である。

 

 それは一体……?

 

「何をやってんの?」

 

 思わず彼は訊ねた。

 

 すると

 

 彼女は言った。

 お金を並べながら。

 

「……昨日から今日にかけての宿泊代金」

 

(一晩の宿を借りた代金を払っているのか)

 

 払う必要のない金である。

 誰の記憶にも残らないことなのだから。

 

 でも彼女は、それが嫌なのだ。

 

 彼女はこう続ける。

 

「私、この人たちに貸しを作りたくないの」

 

「だから、お金を払っていく」

 

「一人分2000マッカもあればいいよね?」

 

 そんな彼女の姿に。

 忍は彼女の夫として、誇らしさのようなものを感じた。

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