真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
品川大聖堂。
この建物は大破壊後に作られた巨大建築物である。
どのようにして作られたものであるのかは分からない。
だが、その巨大で強固な姿は、大破壊が起きることを予期していたことを誰の目にも想像させていた。
大破壊後の世界で必死で建材をかき集め、作り上げられた建物と思えないのだ。
大破壊前から、建設を計画し、準備していた。
そうとしか思えなかった。
そのぐらいの
(信者から巻き上げた金で、建材をあらかじめ確保し、建築のための重機も集めていたのかもな)
本当のところは分からない。
だが、なんとなく彼はそう思った。
近づくにつれ、その巨大さが理解できるようになってきた。
4階建ての建物だ。
しかし、幅が大きい。
100メートルでは利かないはずだ。
「アンタの家、何階にあるの?」
「ええと、1階ですかね。メイガスは入居要件では最低ランクですし」
忍の問いに、メイガスの松浦はそう答える。
彼の見た目はただの中年男性である。
体格は良い方で、節制しているのかあまり太ってはいないが。
普通の人にしか見えなかった。
しかし、彼もメシア教徒である。
おそらく、昨日の処刑場で見たことに関しても
「それの何が問題が? 信仰成分不良で不倫という大罪を犯したんだから仕方ありませんよね?」
そういう返答が平気で出来る人物なのだ。
大喜びはしなくても、あれが間違った行為であるとは欠片も思わない。
そんな人物なのである。
彼らとは言葉は通じるが、会話は決してできない。
それは肝に命じなければならない。
「品川大聖堂って、電気の他に、水道もガスもあるんだよな? 空調は?」
「ありますよ」
そう返す彼の言葉は誇らしげで
忍がその言葉に
「空調まであるのか。すごいな」
「ええ。大変ありがたいです」
……こういう気持ちは共有できても、根本のところで分かり合えない。
そのことがほんの少しだけ彼は悲しかった。
そんな会話をしている間に、品川大聖堂の入口が迫って来る。
品川大聖堂は、入口でセキュリティチェックがあった。
『ICカードの提示ヲお願いシマス』
音声の案内に従い、メイガス松浦は鞄からICカードを取り出す。
そこで
「ここから先にセキュリティチェックってあるの?」
何気ない感じで、真月がボソっと聞く。
それに対してメイガス松浦は
「いえ、無いですね。クルセイダーたちが住んでる区域に行くと、クルセイダー警護隊からの視線が厳しいくらいでしょうか?」
「あの人たち、自分たちが武闘派のエリートだから、何でも暴力的に進めようとするので。少し苦手ですね」
そう機械にICカードを提示しながら、メイガス松浦は語った。
(なるほど)
訊かなければいけないことは全て聞いたと思った。
ならばそろそろ別れのときである。
「ありがとう」
「ありがとうございました」
彼らはメイガス松浦に頭を下げる。
彼らのその言葉に
「あら、もうよろしいので?」
メイガス松浦はセキュリティを解除した姿勢で、戸惑っていた。
忍はそんな彼に
「ああ、ここまでで十分だ。あとは小石川さんの家に戻って、明日に備えてくれ」
頷き。
帰らせる。
ここから先に巻き込むわけにはいかないから。
すると
「……分かりました。お気をつけて」
彼はふたりに手を振って、帰っていった。
「……」
メイガス松浦が去った後。
ふたりは速やかに品川大聖堂に入った。
そしてさっきから真月は一言も喋っていなかった。
そろそろ不味いだろうという判断である。
……そろそろ、真月の顔を知ってる連中が大量にいるエリアに入るかもしれないからだ。
だから、彼女は顏を隠し、発言も最小限にして夫の隣を歩いていた。
……小石川家で貰って来たマスク……白色の、不織布マスクである。
それを装着し、加えて風邪を装うため、マフラーを巻いている。
ちなみにこれに関してもお金を置いてきている。
加えてマフラーに関しては
「このマフラー、思い出の品なんかじゃないわね?」
という質問まで入れて、持ち出しても構わない確認を取った。
「クルセイダーは確か3階に住んでるんだよな」
多くのテンプルナイトは大聖堂住まいじゃないらしいが、クルセイダーに選ばれると品川大聖堂3階に住めるらしい。
そこから考えるに……
「クルセイダーロードにもなれば……」
おそらく4階住まいであろう。
そうでなければ、草薙の剣のような重大アイテムを渡されるわけが無いではないか。
だから彼らは4階に上がるのが当面の目的であった。
そしてクルセイダーロードの部屋を発見したなら。
イザナミの力を使い、部屋周辺に致命の罠を仕掛ける。
罠であればクルセイダーロードにも通用するのは確認済みである。
罠はイメージが悪いが、それしか通用しない以上仕方のないことだ。
そして。
無事、彼らは3階のフロアに足を踏み入れることに成功する。
3階の様子は、1階や2階と変わらない。
上品な白色の壁に、清潔な黒タイルの廊下が続いている。
(えーと、4階の階段は……)
忍はあたりを見回した。
ここ、品川大聖堂は便利な構造になっていない。
階段と階段が離れており、エレベーターも無いのだ。
人が住んでいるというのに。
これはセキュリティの一環なのか……?
などと、思いながら彼は真月と一緒に並んで歩いていた。
周りには、精悍な感じの人間が目立つ。
ほぼ男だったが、中には女性も何人か混じってる。
その人間たちは、全員テンプルナイトの制服と似たものを身に着けていた。
ということは、つまり
(……おそらく、こいつらは全員クルセイダーなんだろう)
悪魔の情報を身体に組み込み、人間を辞めてしまった連中である。
この者たちが全員一度に襲い掛かって来た場合、彼らとしては勝てる保証が無かった。
物量作戦で来られたなら、勝ちきれるとは言い切れなかった。
だからここは、絶対に見つかるわけには
そう、思ったとき。
「……待て。異教徒」
一番聞きたくない言葉。
それが突然投げかけられた。
ふたりの全身が凍り付いた。
(何故……バレたんだ?)
忍には思い当たることが何も無かった。