真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第15話 最強の女神

「ハァァァァッ!」

 

 ヴァルキリーがその機動性を全力解放し、高速飛行による疾風のような斬撃を繰り出す。

 だがアレスは片手に握った巨大な両刃の直剣を振るい、それを難なくやり過ごす。

 

 無骨な剣だ。

 まるで鉄の塊のような。

 

 持っている武器は優美さの欠片も無いのに。

 アレスの防御技術は素晴らしいものだった。

 

「くっ、やるな!」

 

 ヴァルキリーは己の剣技が一切通じていないことを悔しそうに認め

 

「ならば召喚主を狙うまで!」

 

 目標を変更し、パンク男をに向かっていく。

 だが

 

 アレスは跳躍し、自分の契約主の前に立ち。

 もう片方の手に握った槍を振るう。

 

 アレスは槍を長い棒として使用し、薙ぎ払う。

 ただの金属の棒が、アレスの手にある場合それは死の一撃になる。

 

 その威力を察知したヴァルキリーは大きく羽ばたき

 

 飛行ルートを変えてそれを回避。

 召喚者へのダイレクトアタックを断念した。

 

 さすがは戦の神。

 

 とてつもない強さだ。

 

 キヨヒメの吐き出したファイアブレスは槍を車輪の如く高速回転させて寄せ付けず。

 スセリビメの剣撃と氷結魔法は剣を振るって全て弾いた。

 

(これは、ヴァルキリーたちには荷が重いかもしれない)

 

 真月は戦いを見守りながらそう冷静に分析する。

 自分の今出している4体の仲魔では、軍神アレスには勝てないと。

 

 ならば

 

 彼女はアームターミナルのキーボードに指を走らせた。

 打ち込んだコマンドは

 

『RETURN ALL DEVILS』

 

 召喚した悪魔たちの全帰還だ。

 

 そのコマンドを打ち込むと同時に、全ての仲魔が光になり、消滅していく。

 帰還命令を受けたので、実体化が解除されたのだ。

 

 突然の全悪魔の帰還に

 

 パンク男は

 

「……? 諦めて俺のものになる覚悟を決めたのか?」

 

 このことについて理解はできないが、自分の優位は揺るがないだろうという自信が籠った表情を浮かべる。

 真月は

 

「違うわ」

 

 パンク男の言葉を否定しながら、アームターミナルを操作する。

 

『GODDESS SUMMON』

 

 そのコマンドを打ち込むと同時に出現する魔法陣。

 そこから呼び出されたのは

 

 物憂げな表情の、白いローブを身に纏った美女。

 綺麗に整えられた結った金髪。

 そして母性を象徴するような豊かな膨らみ。

 その顔つきには気品が感じられた。

 

 パンク男は新しく召喚されたその女悪魔に一瞬狼狽えた表情を見せた。

 全くの予想外の悪魔を真月が呼んだからだ。

 

 一体、何のつもりだ? と。

 

 だがすぐに自信を取り戻した。

 どんな悪魔を呼んだとしても、戦争の神であるアレスの敵であるはずがない、と。

 

 なので、己の心に一瞬浮かんだ恐れを吹き飛ばすように

 

「行けアレス! どうせヘボ悪魔だ! お前の力であの女悪魔を八つ裂きにしろ!」

 

 アレスに突撃命令を出した。

 命令を受けて全身鎧の重戦士が、両手に槍と剣を手に突っ込んでいく。

 

 真月の召喚した女神は、それを冷たく見つめていた。

 

 

 そしてその召喚主である真月は一切焦らない。

 焦らずに

 

 気合を込めて

 

「迎え撃ちなさい……」

 

 勝利の確信に満ちた声で言い放つ。

 

 

「ヘラ!」

 

 

 襲い掛かって来るアレスの横薙ぎの斬撃。

 女神……ヘラの首を狙っていた。

 

 

 

 ヘラ。

 ギリシャ神話における神々の王であるゼウスの正妻にあたる女神である。

 

 好色なゼウスの正妻であるが故、夫の浮気に悩まされ。

 加えてギリシャ神話の神々の間のルール「他の神のやることに意見してはいけない」があるために

 

 浮気した夫では無く、夫と関係を持った女性やその子供に重い罰を与えることで有名な、恐ろしい女神。

 

 彼女の神として司るものは「結婚と母性と貞節」

 清楚さを司る、人妻の守護神であるのだが。

 

 そのせいか、あまり知られていない恐ろしい能力がある。

 

 それは……

 

 

 

 ヘラは、自分の首を狙ってきた斬撃を素手で受け止めていた。

 

 指、たった3本で。

 

 アレスは諦めず、ヘラの腹部を槍で狙う。

 

 ……それも指3本で槍の穂先を摘ままれて、止められる。

 

 

 

「……なんで?」

 

 パンク男は呆然としていた。

 全く理解できなかったから。

 

 あの女悪魔、一体……? と。

 

 真月はそのとき残酷な笑みを浮かべた。

 そして、語る。

 

「……ヘラはね、結婚と母性と貞節を司る女神で、大神ゼウスの正妻なのよ。だからね……」

 

 ヘラのあまり知られていない能力について。

 それは……

 

「貞節を司る神が、レイプ被害に遭ったら笑えない冗談でしょう? つまりね、そんなものを司ってる以上、オリンポスの神々の中で、一番強くないといけないのよ」

 

 それはギリシャ神話の神々……オリンポスの神々でフィジカル最強であるということ。

 

 合意以外のセックスを全て拒否できる、圧倒的強さ。

 肉体的な最強。

 

 つまり、ヘラはオリンポスの神々の中で最も強い女神なのだ。

 

 その逸話として、トロイア戦争で武装したアルテミスを単身素手で制圧した話があるくらいである。

 

「そ……そんな馬鹿な……!」

 

 パンク男は震えはじめた。

 こんな事態、まるで予想をしていなかったから。

 

 そんな男に聞かせるように、真月は最後の指示を出す。

 

「やりなさいヘラ! その悪魔を打ち倒せ!」

 

 同時にヘラが動き出す。

 

 

 摘まんでいた刃を、そのまま粉々に打ち砕いた。

 そのまま拳を握り、完全武装の重戦士にパンチを叩きこむ。

 

 メギャ、という音がして、兜が拳の形に拉げた。

 

 たまらず吹っ飛んだ重戦士にヘラは襲い掛かり、馬乗りになって拳で打ち据えていく。

 

 一撃一撃で、鎧が砕け、血液が飛び散る。

 

 

 形勢逆転。

 圧倒的強さ。

 

 

「そういやアレスはヘラの息子だっけ? 息子がママに勝てるわけないよねぇぇぇ!?」

 

 真月は相当怒っていた。

 自分の所有権を主張されたのも不愉快だが、そのために自分の夫を手に掛けることを宣言されたことが許せなかったのだ。

 

 なので、パンク男の自慢の悪魔が成すすべもなく倒されていく様を、嘲笑うようにそう言い放つ。

 

 しかし煽りながらも

 

(でも、強いねヘラ。作った甲斐があったよ)

 

 自分の作った「切り札の女神」の強さにほれ込み。

 

 同時に、その素材になったモー・ショボーの少女のことに想いを馳せ

 

(ありがとう。助かってるわ)

 

 感謝を心で口にした。

 

 そして……

 

 

 

「ああ……!」

 

 

 パンク男の絶望の声。

 

 

 アレスが完全に動かなくなり。

 その身体が、マグネタイトへと還っていく。

 

 空気に溶けて、消えていく。

 

 勝負ありだ。

 

 

『RETURN DEVIL』

 

 

 用が済んだので、真月はヘラを引っ込める。

 

 そして

 

 愛用のライフル銃AR15を構えて

 

 

 

 タタタッ

 

 

 

「あぐいっ!」

 

 

 

 絶望し、放心していたパンク男の足を撃ち

 

 

 

 タタタタッ

 

 

 

「うげえっ!?」

 

 

 

 そしてパンク男のアームターミナルを撃って破壊した。

 

 これでもう、こいつは悪魔使いとしての能力を発揮できない。

 これで無力化完了だ。

 

 

「私の勝ちね。お兄さん」

 

 

 銃を下ろしながら。

 

 彼女はそう言って微笑んだのだった。

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