真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(俺たちの結婚指輪はお揃いだ)
そこを思ったとき。
閃いた。
元々夫婦が結婚指輪を嵌めるのは、互いの一体感を高めるためだ。
そういう意見を以前どこかで聞いたことがあった。
(だったら)
彼は叫んだ。
想いを込めて。
「真月! トリスインパクトだ!」
(トリスインパクトだと!?)
忍のその言葉を聞いたとき。
ドッペルゲンガーは「こいつは一体何を言ってるんだ!?」そう思った。
トリスインパクトは佐上忍の悪魔人間としての究極合体魔法。
それについては、佐上忍の姿を得るために情報取得をした際に彼は理解していた。
クルセイダー・ドッペルゲンガーの能力。
それは他者の姿と記憶を写し取ること。
そのため、彼の前では全ての隠し事が不可能になる。
普段彼はその能力を使用し、主に尋問の仕事をしているのであるが。
この日偶然彼は見慣れぬメシア教徒を発見し、念のために記憶を覗いてその結果、大金星を挙げたのだ。
いや、挙げたつもりになっていた。
本物の悪魔人間は恐ろしい存在だ。
それは彼らのリーダーであるクルセイダーロードを見れば誰でも理解できる。
悪魔の力を完全に手中にし、その上新しい魔法を創り出す能力。
それが究極合体魔法。
クルセイダーロードの究極合体魔法「メギドアークキャノン」の威力は何度も目にしている。
彼女の究極合体魔法を浴びた存在は、誰も生きてはいられないだろう。
浴びたら最期、この世から確実に消え去る。
佐上忍の「トリスインパクト」も同じだ。
まともに喰らえば死を免れない。
文字通り、必殺の技だ。
だがトリスインパクトには致命的な欠点がある。
それは物理反射相性の存在には通用しないという欠点だ。
だからこそ「物理属性を倍返しする」ギリメランダを差し向けた。
これでトリスインパクトは出て来ない。
勝てる。
そう思っていたのに。
それなのに、トリスインパクトだと!?
どういうことだ……?
理解できなかった。
混乱するドッペルゲンガー。
そこに
「分かったわ!」
佐上真月が駆け出した。
ギリメランダに向かって。
その右腕を腰だめに構えながら。
(まさか、あの女がやるつもりなのか!?)
馬鹿な。
出来るわけがない。
佐上真月は聖女であるが、悪魔人間ではない。
そして空手の達人でもない。
どこにも使用できる要素が無い。
どういうことだ!?
ハッタリか!?
ギリメランダは佐上真月のその行動に一瞬戸惑うが、彼女はすぐに「それがフェイクである」と判断したらしい。
忍とヴァルキリーに注視して、彼女を無視する。
真月を囮に、何か致命的な行動をするつもりだろう。
そう判断したのか。
だがドッペルゲンガーは佐上忍の記憶を再度コピーすることを試みる。
彼にはそうは思えなかったのだ。
そしてそれを理解したとき
「逃げろギリメランダ! その女に身体を突かせるなァァァァァ!!」
即座に叫んだ。
★★★
「真月! トリスインパクトだ!」
夫のその言葉を聞いたとき。
佐上真月は熱を感じていた。
自分の左手薬指に嵌めた結婚指輪……ペアリングに。
そこに夫からの「トリスインパクト」の指示。
夫から究極合体魔法のシステムと、トリスインパクトの構造については聞いている。
それで十分だった。
夫がどうして欲しいのかを察するのは。
彼女は駆け出し、夫の姿をイメージしつつ腰だめに右手を構えた。
日々の稽古で、何万回と繰り出していた彼の拳。
それを正確にイメージする。
ずっとそれを傍で見て来た彼女にとって、それは容易なことであった。
「逃げろギリメランダ! その女に身体を突かせるなァァァァァ!!」
そこに。
クルセイダー・ドッペルゲンガーの叫び声が轟く。
それはまるで悲鳴であった。
(気づいたか……でも、もう遅いから!)
彼女は唇の端に笑みを浮かべ。
そして
「トリスインパクトッ!」
その気合の声と共に。
ギリメランダに向かって、拳を叩きつけた。
同時に襲ってくる自分の脇腹への衝撃。
それは予想していたから、彼女は腹筋を締めてそれに耐えた。
そして一方ギリメランダは――
「グホオオオオオッ!」
身体をくの字に折って、数歩後ろによろめいた。
ただの女の拳を喰らっただけなのに。
いや、それ以前に……
反射したはずなのに。
同時に
「ナッ……!」
真月の拳が命中したところを中心に、ギリメランダの身体がひび割れ、赤熱化し、ヒビから炎を噴き上げていく――
(出来た……! トリスインパクト……!)
反射ダメージに耐えながら、真月は不敵に微笑む。
夫が何をさせたいのかはペアリングが熱くなったときに分かった。
結婚指輪は夫婦の一体感を実感するためのもの。
その話は彼女も知っていて。
そこから彼女は、夫同様に閃いたのだ。
ならば妻が夫の究極合体魔法を使えたとしても別に変では無いだろう、と。
普通なら「それは気持ちだけの問題で、実際は出来るわけがない」が、究極合体魔法に限ってはそうではないのだ。
だから彼女は迷わず実行し。
そしてそれが……成功した!
「なんで……なんで……!? ドウシテ……!?」
自分の身に起きていることを理解できず、恐怖し、怯えるギリメランダ。
その声は震えている。
彼女はまだ分かっていない。
自分がもうすでに、死んだも同然であることに。
……通常のトリスインパクトは空手の奥義である鎧通しと、火炎魔法であるトリスアギオンが同時に入る必要がある。
だがこれは「妻の拳にトリスインパクトの効果を乗せる」究極合体魔法。
それ自体が魔法である故、ギリメランダの物理反射相性は役に立たないのだ。
これはトリスインパクトでは無い……
言うなればマツキインパクトとでも呼ぶべきかもしれない。
そして
「イヤアアアアアアアア!」
大きな悲鳴と共に
彼女は、ギリメランダは全身に広がったヒビから炎を噴き出し。
大爆発を起こした。
轟音と波動と熱気。
その衝撃と熱から顔を庇いつつ。
ドッペルゲンガーは
「そんなバカことがあああ!?」
この目の前の理不尽な出来事について
激しく絶叫した。