真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
物理攻撃を倍返しで反射するはずのギリメランダをワンパンで倒した。
それもただの女が。
何も知らない人間が見たなら、それはそうとしか見えなかった。
到底あり得ないことである。
誰も動けなかった。
一応全ての事情を理解していたはずのドッペルゲンガーでさえも。
(まさかそんな内容で究極合体魔法を成立させるだと……?)
爆散し、跡形もなく吹っ飛んだギリメランダの居た場所を見つめ
(究極合体魔法……恐ろしすぎる!)
事実や概念、効果を重ね合わせ、この世の原理までをも捻じ曲げる恐ろしい魔法。
それが「究極合体魔法」
知っていたはずなのに、分かっていなかった。
その事実に打ちのめされ、彼の時間はそこで停止していた。
そしてそれが。
さらなる失態を呼び込んだ。
突如響き渡るガシャアアアアン! という音。
それがガラスが砕ける音であると理解したとき。
彼はそれに気づくに至る。
佐上真月が窓を破って、この品川大聖堂の外に身を躍らせていることに。
彼女は窓に跳び蹴りをし、外に飛び出していた!
★★★
(今のうちに逃げないと)
佐上真月はそう思った。
自分を介した究極合体魔法によりクルセイダー・ギリメランダを倒した。
この、メシア教徒にとって受け入れがたい事実。
この事実による衝撃で、彼らが行動不能になっている間に。
本当に悔しいが、もはや品川大聖堂に潜入し、クルセイダーロードに罠を仕掛けて倒し、草薙の剣を奪還する作戦は失敗である。
ここを強行突破できたとしても、クルセイダーロードに接触し、そして勝つことは難しいだろう。
ならば速やかに撤退せねばならない。
どこから逃げるか……?
真月は思案し、周囲を見渡す。
来た道を戻るのは論外だ。
逃げ切れるわけがない。
出入り口を封鎖され、物量で圧し潰されるのは必至だ。
ならば……!
「忍」
彼女は夫に聞こえるように、一言だけそう呼び掛け
具体的に何をするかは口にせず
この品川大聖堂の通路に存在する、採光のための大窓に突き進んだ。
縦横の幅が1メートル以上ある大きな窓である。
彼女は全力で走り、床を蹴り
大窓に向かって、所謂ドロップキックを敢行した。
窓の外にはベランダも何も無かった。
そのまま、外だ。
故に踏み切るときには勇気が要った。
これから自分はとんでもない行動をするのだと。
でも思い切らないといけなかったから、手を抜かなかった。
品川大聖堂の窓は、真月の全力のドロップキックを受け止め、耐える強度を持ち合わせていなかった。
品川大聖堂の大窓の窓ガラスはあっけなく砕け、割れ、その破片を撒き散らした。
そして真月は
そのまま窓を突き破って外に飛び出し、落下する。
割れたガラスの破片で、肌を少し切った気がしたが、やむを得ない。
避けられない事なのだ。
彼女はそのまま、割れ窓から身を躍らせる。
自由落下だ。
ここは3階である。
このまま地上まで落下すれば命は無い。
しかし……
次の瞬間、彼女の腰に腕が回り、横抱きにされ。
その落下速度が急速にゼロに近づく。
「飛び降りるなら言えよ!」
そして彼女を抱いてそう怒声を浴びせるのは佐上忍。
彼女の夫であった。
「肝が冷えただろ!」
かなり本気で怒っている。
彼は妻が飛び出したのを見た瞬間、全力で後を追ったのだ。
まあ彼としては。
妻が自分の名前を呼んだと思ったら、いきなり窓に向かってダッシュし、ドロップキックで外に飛び出していったのだ。
焦るに決まってる。
間に合わなければ妻が死ぬのだから。
(ごめんなさい)
真月はそのことについて心で詫びた。
だがしかし、それもやむを得ないことだったのだ。
説明している時間が無かったし、仮にあったとしても行動を先に説明したら阻止される恐れがあった。
窓の前に誰かが立つだけで終わりなのだから。
それに……
(あなたなら、言わなくても即助けに来てくれるとも信じていたから)
それがあった。
無論、口には出さない。
さらに怒らせる結果になりそうな気がしたから。
そんなものを過信しないでくれ! と。
そのまま彼女は、地上に穏やかに着地する。
「助かりました」
そして下ろして貰い、彼女は夫に頭を下げる。
忍は
「……まあ、仕方なかったんだよな」
彼女を下ろし。
冷静に考えて「事前通告すると、この逃亡劇が成功しなかったのではないか?」という結論に達したのか。
忍は頭を下げる妻にそう言葉を掛ける。
「マスター! ご無事でしょうか!?」
そこに妖魔ヴァルキリーが舞い降りてくる。
彼女も、真月が蹴破った窓から脱出して来たらしい。
自分の胸の負傷もものともせず、契約主への礼を果たす。
「なんとかね。ありがとう」
そして真月はそうヴァルキリーに返し。
鞭型COMPを振るった。
呼び出すのは……
「魔王召喚!」
地面に描かれる巨大な光の魔法陣。
そこから呼び出される、緑色の異形の魔王。
魔王マーラである。
「ヌァーハッハッハ! 真月召喚師よ! 存分に命じるがよい!」
哄笑と共に呼び出される魔王。
彼女はその魔王に
「逃げ出すからついて来て! 私たちに近づく人間を、片っ端から洗脳して味方にして頂戴!」
そんな命令を飛ばし。
走り出した。
――逃亡開始だ。