真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
第155話 池袋の街は
池袋。
かつては映画館、食事店、サブカルチャーの店。
幅の広い繁華街だった街である。
そんな街が大破壊を経験した後。
今は……
「ん?」
忍は拍子抜けした気持ちを味わっていた。
別にいたって普通にしか見えなかったからである
釘を刺されたから、よほど異常なことになってると想像していたのに。
池袋の街は普通であった。
核ミサイルの洗礼で、建物の倒壊は当然の如くあったが、大破壊後の街としては標準的なものであった。
街の様子は新宿の街と大差ない。
違うところと言えば、当たり前のように悪魔が混じってないことくらいである。
ボロボロのローブのような服を纏った住人が、各々、露店を開いたり、会話したりしている。
普通の街並み。
ごく一般的な大破壊後の街の風景だ。
「……これで何か問題があるのか?」
「……うん。別に普通に見えるよねぇ」
忍と真月は夫婦でそう言葉を交わす。
桃井夫婦に文句を言ってるように思われると気が悪いので、あくまでこっそりと。
すると
「……どうした? 何か他に用事か?」
「買い物だったら上野でやった方がいいと思うけど?」
出遅れていると感じたのか、桃井夫婦が振り返り、そんなことを。
「あ、ゴメンナサイ」
詫びて、ふたりは慌ててついて行く。
そして
「……今後のルートは?」
歩きながら忍は明に訊ねる。
彼は
「このまま街を出てしばらく進み、そこで霊獣コウで飛んで行く」
「……なるほど」
相乗りは面白くはないが、しょうがない。
それに問題意識があるのは向こうも同じ。
そう思い
(ああ、自分たちも飛行する乗り物として使える仲魔を作っておけば良かった)
そう、軽く後悔した。
そのときだった。
「なんだこの如何わしい漫画は!」
突然、怒鳴り声が聞こえてきた。
思わずそちらを向く。
そこには。
露店の店主に、怒鳴り散らしている男が居た。
髪の手入れがいい加減で、髭も伸び放題。
そしてあまり背の高くない。
あまり見目の良くない男だった。
怒鳴られている露店は、どうやら書籍を売っているらしい。
このご時世、珍しいと言っていい。
そしてどれもこれも厚さが薄く、ホッチキスで留めただけの安っぽい製本であった。
髭の男曰く、これは漫画であるとのことで。
だとするとこれは同人誌であろう。
髭の男はカンカンに怒っている。
「こんな本を売って恥ずかしくないのか!? この本には社会貢献するという気概の欠片も感じられんぞ!」
「いやでも、漫画くらい良いじゃないですか。必死で道具を集めて、プリンター探して……」
髭の男の剣幕に、同人誌売りの男は必死で弁解していた。
忍はその光景に
(……ちょっと、可哀想だなぁ)
同人誌売りの男への同情心が湧く。
なので
「ちょっと味方してあげていいか?」
彼は真月にそう声を掛け
「うん、分かった」
妻の許可が出たので近づいて
忍と真月はそのトラブルを起こしている男性2人に近づいて行った。
そのとき
「あ、やめ……」
そんな声が彼らの背中に掛かったが。
ふたりは全く気づきもせず
「どうしたんですか漫画売ったくらいで」
忍は髭の男に声を掛けた。
すると髭の男は
「漫画を売ったくらい……だと?」
ぎっ、という音がしそうなほど、強く忍を睨みつけ
そして
「こんな異常な内容の同人誌でもか!?」
そう言って、その売り物の同人誌を突き付けてきた。
(やっぱり同人誌なのか)
忍はそう思いつつ
(読めということか)
そう判断し。
その同人誌を手に取り
パラパラとめくり内容を確認した。
男の売っていた同人誌は所謂エロ同人であった。
内容はおねショタもので。
男子ばかりの学生寮にたった1人の女子として入寮して来た女子高生が、寮の男子全員と関係を持ち、全員を兄弟にするという内容であった。
そしてその中には△学生も含まれており、むしろそれが本命で。
だからこそおねショタであるのだが。
一応最後まで確認し。
本を閉じて。
彼は思う。
確かにこの作品の性癖は尖っており、いかがわしいのは間違いないのかもしれない。
……しかし
(俺だって、嫁さんにセーラー服着せてアレするのに目が無いし)
誰でもひとつやふたつ、性癖というものがある。
性癖を持たない者だけが、性癖に石を投げるべきであろう。
故に彼は
「そういうあなただって、人に言えない趣味あるんじゃないですか? あるでしょう? 男なんだし」
そう言った。
するとその髭の男は色々考えだしたのか、黙り。
そして
「……ええい面倒くさい! 今日は見逃してやる! 以後、気をつけろ!」
そう、言い捨てて去っていく。
こちらを理によらず声の大きさで否定してくることを想定していた忍は、髭の男のその対応に
(意外と理性的だったな)
そう思いながら。
その背中を見送った。
「ありがとうございました!」
髭の男が去った後。
同人誌売りをしていた男が忍と真月にペコペコと頭を下げて来た。
(いや、別にそんな感謝されたくてやったわけじゃないし)
なので、正直そこまで感謝されることには違和感がある。
だから
「まあ、今後は気を付けてください」
少し困ったので、そう社交辞令的な返答をした。
すると
「気をつけてはいたんですよ! 見つかるとヤバイから!」
やけに熱の入った返答を返される。
真月はそこに疑問を持った。
なので
「……この時代に、まだ叩く人居るんですか?」
忍の隣で、彼女がそう同人誌売りに問いかけると。
同人誌の男は悔しそうに
「……叩くというか……処罰したいんですよ。僕なんかまだマシな方です」
そう言って。
話し出した。
一体、この池袋の街で、何が行われているのかを。