真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「あーあ……知ってしまったか」
池袋の屋台で。
お粥を注文し、食べながら。
彼らは街の片隅で車座になって座り、話していた。
「しょうがないから話してやるよ」
今、この街で起きてることを。
「……事の起こりは、半年ほど前だ」
曰く。
元々、この街はメシア教徒とガイア教徒の勢力の緩衝地帯みたいな感じで。
両方の勢力が混在している、中立の街だったらしい。
そのときの街は決して平和で穏やかな街では無かった。
ただ、危険ながらも自由があった。
あくまで「誰にも縛られていない」という意味の自由であるが。
だがそこに、あるとき大悪魔を連れた少年が現れる。
その少年が連れている大悪魔の名前は「ヤマ」
日本風に言えば閻魔様である。
日本では地獄の支配者として有名な悪魔であるが、元々はインド神話で「全人類の中で最初に死を経験した人間」で、それゆえに死後の世界を支配する神になった存在である。
そのような悪魔が弱いわけがない。
そんな大悪魔を仲魔として引き連れている少年。
その名前は
眼鏡を掛けた、知的な風貌の少年らしい。
その少年は
「悪人は全て死に絶えろ」
そう言って、ヤマを使って自分が悪と断じた存在を虐殺した。
ガイア教徒もメシア教徒も、等しく。
皆殺して、殺し尽くしたらしい。
……そんな彼の行動で特徴的であったのは。
罪人の罪状は少年自身が述べるのであるが、それで相手を処刑するかどうかの判断の是非は、全てヤマに一任していたところだ。
それに関して真月は
「……自分は検事のつもりなのかしらね」
そうコメントする。
それについては忍も同感だった。
「自分に正当性を持たせたいってことなのかな」
彼は感じたことを口にする。
お粥をかきこみながら。
そこで明が
「そういう状態なんだよ。今の池袋は」
自分の分のお粥を口に運び飲み込んで
ため息交じりにそう吐き出した。
「……監視社会みたいになってるのよ」
続いて明の妻である夏子が続ける。
その後の話を。
ヤマを使役する悪魔使いである高城少年は、自分の思う
だがある日、彼は
「ボク1人では手が回らない。我こそはと思う人間は手を上げてくれないか?」
そう、町の住人に呼び掛けた。
そして、池袋の住人の中に、その声に応えるものがいて。
今の状態になったらしい。
高城少年の呼びかけに応えて、街のパトロールをしてる人間たち……彼ら曰く「ヤマの目」という人間たち。
彼らが現れてから、この街が一気におかしくなった。
ヤマの目たちが、恣意的に「高城様のお怒りを買うぞ」という言葉を使い、住民を脅すようになったからである。
さっきの同人誌の件もそう。そして、あれは確かにまだ可愛い方であった。
酷いものになると……
「俺たちにタダでメシを食わせないことは、博愛の精神が足りているとは言えないな。高城様のお怒りを買うぞ」
「俺の愛を受け入れないのは驕り高ぶっている証拠。高城様のお怒りを買うぞ」
そして特に酷いのが
「このご時世に何を妊娠しているの。妊婦は働けない上に食事も余計に食べるでしょう? 周りに迷惑だから堕胎しなさい。そうしないと高城様のお怒りを買うよ?」
魔法の言葉を、自分の欲を叶えることに使い始めたらしい。
最後の事例に関しては
「ちょっと待て、最低過ぎるだろ」
「許せない!」
と、ふたりから怒りの声が出る。
そんなふたりに桃井明は
「さすがにそんな要求は飲めないから、言われた奴は無視したらしい。だけど……」
「その後の日々を、制裁を加えられやしないかと不安な日々を送ってるとは言ってたような気がするわ」
その言葉にふたりはホッとするとともに、苛立ちを感じた。
何でそんな目に遭わないといけないのか。
許せないと思った。
「……なんでそんなのが目になってるのかが分からないな。悪を裁くんじゃ無かったのか?」
そして忍ががそう言うと、明は
「選定基準が、自分は間違ったことは一切していない、と硬く信じられる人間のみ、だったんじゃないか? 知らんけど」
投げやりにそう答えてきた。
明はそう言いながら、不快そうな顔をしている。
彼とて面白くないのだろう。
自分の欲を叶えるために、他人の力を利用する虎の威を借る狐ども。
醜悪すぎる奴らと言えた。
ゆえに
「……聞いてしまったからには、放置できないわよね」
ポツリ、と真月は言う。
その言葉に
「だな」
忍はそう応え、頷いた。
その様子を見て桃井明は大きなため息をつく。
そして
「……だから、大人しくしてくれって言ったんだよ」
ふたりがこういう反応を示し、厄介事に首を突っ込むに決まっている。
その確信があったから言ったのだ。
彼の言葉にはそんな思いが込められていて。
彼は
「分かった」
そう、顔に手を当てて。
うんざりした感じで
「……俺たちも手を貸す。4人でやれば早く終わるだろ」
そう言って彼は空になったお粥の器を、屋台に返しに行くために立ち上がった。