真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
4人は二手に分かれて池袋の街を聞き廻った。
具体的に誰がヤマの目なのかを。
ヤマの目はたくさん存在し、日々パトロールをしているので探すのは難しくないはず……だったのだが。
「目をつけられるの嫌なんで」
そう言って、具体的に誰なのかを口にするのを拒否する住人たち。
かといって、住民への魔王マーラによる洗脳は抵抗がある。
助けるべき住民を洗脳して情報を引き出すのは違うだろう。
しかも運悪く、トラブルの現場にも立ち会わず……
彼らが聞き込んでいるとき、何故か彼らの周囲で問題を起こしているヤマの目と思しき人物はいなかったのだ。
「おい、どうする……? あまり時間を潰しているのは俺たちも嬉しくないんだが?」
そして集まって、彼らはヤマの目が見つからなかったことを報告し合う。
桃井夫婦は2人とも困り顔。
いつまでやる気なんだ? という本音が顔に出ていた。
それを目にして忍と真月のふたりは
「それは申し訳ない」
「あと1つ、可能性を試させて」
2人とも焦りの表情を浮かべていた。
池袋の件は2人の我儘である。
そしてふたりはガイア教徒と交渉をしなければいけない関係上、あまり我儘は言えない。
その真月の口にした可能性とは?
それは……
「……ここでどうするの?」
桃井夏子が真月に視線を送りつつ訊ねる。
そこは池袋で奇跡的に生き残った元大衆酒場の建物。
看板が吹き飛んでいたが、建物としては全く問題なく使えそうで。
実際に現役で使われている。
「聞き込みダメだったらここしかないかなって」
そう言って一行はその店に入り
そのまま店員に案内されるまま、テーブル席の1つに着き、全員分の水と、砕いた氷砂糖を注文して
「ここでちょっと待ってみましょう。人気店みたいだし、タダ酒を狙うヤマの目が来るかも」
一言そう言う。
酒は注文しない。
別に騒ぎに来たわけでは無いのであるし。
しばらく待っていると
「お待たせしました」
水の入ったボトルと、砕いた氷砂糖が載った皿を持ってウエイトレスがやって来た。
こんな時代でもこの店はこだわりがあるのか、昔のような普通のファミレスのウエイトレスの格好で。
なんとなく、見ていて懐かしさを感じてしまう。
「ごゆっくり」
頭を下げるウエイトレスに、水と氷砂糖の代金を払い
真月は氷砂糖の欠片を口に入れて、水を一口飲んだ後
「……意外に、高城様は嫌われて無いのが驚きだったわ」
そう、話を切り出した。
ヤマの目はこの街では恐れられている。
だが、そのヤマの目の大元である高城様は別に恐怖の対象では無いのだ。
むしろ、感謝をしている人すらいた。
それは何故かというと、メシア教徒やガイア教徒の他に、バール信者と呼ばれる連中を全滅させてこの街から叩き出してくれたからだった。
バール信者とは、ガイア教徒の異端者で。
何でもありのガイア教すら追い出される、とんでもない奴らだそうだ。
明曰く「同じガイア教徒を魔王バールへの生贄として捧げる」ことを繰り返した結果、上野にいることを許されなくなり、破門されて独立した連中らしい。
そんな連中がかつてはこの池袋に居た。
だが、高城様はそんなバール信者を全滅させて、脅威を取り除いてくれた。
なので、恐怖よりも感謝が勝ったようなのだ。
当然かもしれない。
明らかに、確実に危険な連中を叩き出してくれた存在が、多少独善的だったとしても。
前よりはマシだ。
そんな気持ちが湧く。
それに。
高城様がいなくなったら、この街がまたそういう奴らの天国になる。
その気持ちがあるから、否定できない。
そのようなカラクリ。
「だからまあ、高城様が怖いというより……助かってる面もあるから、裏切るような真似はできない……そんな感じだったわね」
「そうね。私たちの方もそんな感じだったわ」
真月と夏子はそう言葉を交わし合い、氷砂糖を摘まむ。
そして男2人は、店内に視線を巡らせていた。
ここで問題を起こす人間が現れたら、即座に動けるように。
すると
「おい、俺から金を取るとはどういうつもりだ……? 俺は高城様に認められた人間……ヤマの目なんだぞ?」
いた。
奥の席で、ウエイトレス相手にそう言って脅し、タダで飲食しようとする不届き者が騒いでいた。
彼らはそこで視線を交わし合い、頷いて。
席を立った。
そして彼らは。
ヤマの目と思しき男を人気のない場所に誘い出し。
そこで魔王マーラによる洗脳を用い、洗いざらい、全ての情報を引き出した。
問題のある人物に洗脳を使用することには、特に躊躇う理由はない。
洗脳により全てを聞き出し。
「ありがとう。もういいわ」
男を帰らせる。
解放されて去っていく男の背中を見送りながら
真月は
「高城少年はサンシャイン60の最上階にいるのね」
たった今得た情報を呟く。
高城少年はサンシャイン60という建物の最上階に住んでいる。
サンシャイン60は元々あの巣鴨プリズンがあった場所だそうで。
そこに高城少年の住処があるそうだ。
「何でそんな場所に住んでるのかしら……階段上がるのしんどいじゃない」
そう、半眼のまま言う夏子。
真月はそれに頷き
こう言った。
「襲撃を恐れているのかもしれないね……夢を見ていないってことなのかな」
高城少年は自分が受け入れられていると考えていない。
だからこそ、襲撃しにくい場所にいるのではないか?
それが真月の見立てで。
彼女はそう言った後
「行きましょうか。時間も無いわけだし」
そう、続けた。