真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第158話 高城圭介という少年の話1(高城圭介視点)

 高城(タカギ)圭介(ケイスケ)という少年は、かつてはどこにでもいる普通の少年であった。

 

 ただ、彼は普通の人間より正義感が強かった。

 しかしそれは別に、純粋真っ直ぐな未熟な少年であったという意味では無い。

 

 彼の親類には法曹関係者の叔父が居て、その叔父の影響で彼は人間というものの本質と正義の意味をよく考えるようになった。

 

 そんな彼に転機が訪れたのは高校に入ったとき。

 

 彼はクラスでいじめが起きていることを察知し、そのいじめのターゲットになっている少年を助けた。

 

 するとお決まり通りであるが、いじめのターゲットがその少年から自分へとシフトした。

 

 彼はそれは覚悟していたので、耐えた。

 だがさすがに、助けた少年がいじめに加担してきたことは彼を大きく傷つけたが。

 

 そのことについては「人は弱い」と「弱者は容易に悪に走る」という叔父の言葉で乗り切った。

 

 ……乗り切るはずだった。

 

 彼が学校を卒業する。

 その前に、大破壊が起きたのだ。

 

 

 大破壊が起きたとき、彼は体調不良で学校を休んでいた。

 学校でのいじめが辛くなり、どうしても数日休みたくなったのだ。

 そして自宅でたまたま、トイレの中に居たのである。

 

 それが明暗を分けた。

 

 トイレは遮蔽物で囲まれており、核ミサイルの熱線と爆風が届かなかった。

 彼の自宅はマンションだったのだ。

 

 ……そのとき外出していた彼の家族は全員駄目だったのだが。

 

 こうして彼は高校生にして全てを失い、大破壊後の世界に投げ出された。

 

 

 その後の彼の日常は一変した。

 これまではどんなに辛くとも命の危険を考えるようなことは無かったのだが

 悪魔の出現により、死がすぐ傍にある世界となった。

 

 そんな世界で、彼は他の生き延びた人々と協力し、人間の生活する世界を取り戻すために奮闘する。

 楽な仕事では無かったが、彼はやりがいを感じていた。

 

 幸せも感じていたのだ。

 

「ケースケ」

 

 ……1人の少女と出会い、共に生活をするようになったお陰で。

 

 小牧(コマキ)(ミドリ)という名前の女の子であった。

 彼より4才年下ではあったが、彼女は彼を支えてくれた。

 

 口には出さなかったが、もしお嫁さんというものがいたなら、こういうものなのかもしれない。

 そんなことを彼は思っていた。

 

 

 

 ミドリは元気な少女で、明るかった。

 長い髪で、小柄で、小動物の雰囲気を持つ可愛い少女だ。

 

 彼女は特撮番組やアニメが好きで、大破壊前はコスプレを趣味にしていたらしい。

 その理由は、彼女の父親が特撮ヒーローの中の人……スーツアクターだったからだ。

 

 そのせいで、彼女はとても正義感が強い少女であった。

 彼女の中には「パパはヒーローをしていた人だ」という思いがあったのだ。

 

 ケイスケはそこに「自分と価値観が似ている」と思っていた。

 

 あと彼女は、ケイスケと同様眼鏡を掛けていて。

 そこも共通項であった。

 

 

 

 平和な世界は消えてしまったが。

 彼女と出会えて本当に良かった。

 彼女と一緒ならこの荒れ果てた世界でも頑張れる。

 

 

 彼はそう思っていた。

 

 

 けれども。

 この世界は彼らにそんな幸せを許さなかったのだ。

 

 

 彼らが住処として定めたのは池袋の街で。

 その街には色々と危険な存在が居た。

 

 それは悪魔だけではない。

 

 同じ人間でも危険な奴らがいた。

 

 犯罪者と、ガイア教徒と

 

 バール信者とメシア教徒。

 

 

 

 この街にはバール信者という連中が居た。

 魔王バールを崇める連中であり、ガイア教徒を破門された連中である。

 

 元々なんでもありであるはずのガイア教徒ですら破門を言い渡してしまうほどの、完全に狂った集団だった。

 

 彼らは「バール様を崇めよ」「バール様に真のお姿を」と唱えて回り。

 信者の勧誘し。

 拒否した人間へ暴行を加え。そして殺害していた。

 

 

 誰もが彼らを警戒し、恐れていた。

 バール信者に狙われないように……

 

 彼らの住処に近づかなかったり。

 人気のないところに行くことを避けたり。

 単独行動を避けたり。

 道で立ち止まらない……そんな注意喚起をされていたのだ。

 

 

 

 バール信者の次に問題だったのは、メシア教徒であった。

 メシア教は大破壊前からあったカルト宗教で、その在り方がテレビで問題になるレベルで酷かったためだ。

 

 だから当然皆警戒していた。

 

 

 彼らは元々「バール信者から身を守りたいなら入信しなさい。ガイア教徒はあなたたちを守りません」という言葉での布教目的でこの池袋にやってきていた。

 

 だが誰も「その通りだな」とは言わず。

 

 こいつらの本性はバール信者と大差ない。

 

 そう思っていた。

 

 ……実際、その通りだったのであるが。

 

 

 

「ケースケ、今日ちょっと、メシア教徒の女の子に、砂糖を分けてもらいに行こうと思うんだ」

 

「え? それ大丈夫なのミドリちゃん?」

 

 ある日、テーブルを挟んで朝食を一緒に摂りながらの会話で。

 ミドリとそんな話をした。 

 

「大丈夫だよ。水汲みしにいくとき話したんだけど、別に普通の子たちだよ?」

 

 心配するケイスケに、ニコニコしながらミドリは言う。

 

「砂糖があれば料理に幅が出るよ。ケーキ作ってみたいけど無理だから、すき焼きくらいはいけるかも」

 

 楽しそうに。

 砂糖が手に入った後のことを今からワクワクしながら考えているようだった。

 

「ケースケは何か砂糖を使ったメニューで食べたいものある?」

 

 屈託なく笑うその姿に、ケイスケはつい、彼女を(たしな)めるのを止めてしまった。

 

 ……そして彼は、それを一生後悔することとなった。

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