真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第16話 それはしんどい世界だ

 真月がパンク男との戦いに、女神ヘラの召喚で圧倒的勝利を収めていたそのとき。

 忍は僧侶風の男と対峙していた。

 

 僧侶風の男は前情報では魔法使いのはず。

 そのため、忍は慎重であった。

 

「炎よ!」

 

 僧侶風の男が忍に手のひらを向けてきて、気合とともに言葉を叫ぶ。

 同時に、火炎の弾が彼に向かって打ち出されてくる。

 

 火炎の球。

 魔法攻撃。

 

 これを無視するわけにはいかない。

 

 

 忍は飛んでくる火炎弾を最小限の動きで避けた。

 そして距離を詰める。

 

 すると続けて

 

「雷よ!」

 

 僧侶風の男は指先を突き出し、そこから電撃を発射する。

 

 ものが電撃である。

 見てから避けるのはほぼ不可能。

 

 予備動作に気づいた瞬間、回避行動を取らないと間に合わない。

 

 

 忍は回避行動を取りつつさらに間合いを詰めた。

 

 

 

 そして3つ目が来る。

 

 

 

 僧侶風の男はもう片方の手の手のひらを突き出して、言葉を叫ぶ。

 

 

「波動よ!」

 

 

 それと同時に衝撃波。

 

 これは作用範囲が広かった。

 これ以上進めば避け切れないと判断。

 

 

 忍は転がって避けて……

 

 

 一定の距離を取り起き上がる。

 

 

「……なかなかやるな。青年」

 

 

 僧侶風の男が口を開いた。

 

 その声には感心の響きが含まれている。

 忍はその言葉に

 

 

「まあ、鍛えてるので」

 

 

 焦りも無く、普通に返した。

 その返しを受けて

 

 僧侶風の男は

 

「……どうだろう? ガイア教に入信しないか?」

 

 彼をガイア教に勧誘し始めた。

 

 

 

「……遠慮しときます」

 

 だが、忍はその言葉にそう返す。

 穏やかに。

 

 僧侶風の男はその返答が意外だったらしい。

 

「何故だ? ……キミならガイア教での地位は良いものになると思うぞ? それでもなのか?」

 

 僧侶風の男は、相当に忍を買っているようだ。

 先ほどの魔法攻撃を全て避け切った技量に惚れ込んだのかもしれない。

 

 だが忍はそれでも

 

「いやあ、別に偉くなりたいわけじゃないので」

 

 苦笑しながらそう返した。

 

 しかし僧侶風の男は彼のその言葉では引き下がらない。

 さらに食い下がる。

 

「偉くなることに興味なくても、間違ってるだろう、旧世界の法則は」

 

 今度は大破壊前の世界について持ち出して。

 スイッチが入ったのか、その言葉には熱が籠っていた。

 

「……金を持つ奴が良い目を見、能力のある者が正当に評価されない。野生の動物の社会ではあり得ん状況。それが無いのだ、ガイア教では」

 

 僧侶風の男は力説している。

 

「クズはクズに相応しい扱いを受け、優れたものは正当な評価を受ける。最高の環境だぞ? どうだ? 入信してみた方がいいと思うぞ?」

 

 その言葉には忍に対する気遣いに溢れていた。

 少なくとも、忍はそう感じた。

 

 言われた言葉には「お前はもっと良い目をみるべきだ」という僧侶風の男の優しさがあったと感じる。

 

 だけども

 

「……しんどそうな環境ですね」

 

 忍はその言葉に、そんな言葉を返す。

 

「しんどい……?」 

 

 僧侶風の男は理解できないらしい。

 お前は何を言ってるんだ?

 

 そんな顔をしている。

 

 忍は続ける。 

 

「能力を落としたら、扱いが変わってしまうってことですよね? それ、息苦しいですよ」

 

 僧侶風の男の口にする理想世界の話についての感想を。

 男はそんな忍の感想に

 

「息苦しい、だと……?」

 

 ただ、オウム返しに返すだけ。

 

 忍は淡々と説明した。

 何がどう息苦しいのかを。

 

 それは

 

「人間、いつかは老人になって弱者に、役立たずになるんです。そうなったときに惨めに捨てられる社会って……果たして幸せなんですかね?」

 

 僧侶風の男の口にする世界は、そういうことである。

 力を誇示している間は無制限の自由が享受できるが、老いて力を失えば、若い世代に踏みつけにされる世界だ。

 

 野生動物の世界がそうであるように。

 

 そして忍は少し遠い目をして

 

「確かに、前の世界は完璧では無かったですね。とんでもない理不尽やすさまじい依怙贔屓もあったでしょう」

 

「それでも、正しくあろうとした人は普通に居ましたよね?」

 

「そして社会も、一応不平等は間違っているという姿勢はありましたよね?」

 

 そう、自分の見解を口にした。

 

 降りる沈黙。

 

 そして 

 

「……青年とはどうも話が合わないようだ。勿体ないが、このまま殺させてもらう」

 

 僧侶風の男は忍の勧誘を諦めたらしい。

 

 2人の戦いが再開される。

 

「そっすか。まあ、俺も殺される気はありませんけど」

 

 殺すと本気で言われた彼は。

 その言葉に全く動揺を見せずにそう言い返した。

 

 そして

 

(3種の性格の違う魔法。それをどう攻略するべきか……?)

 

 冷静に勝利の道筋を模索する。 

 

 遠距離では火炎球の魔法。

 

 中距離は、電撃魔法。

 

 そして近距離では広範囲の衝撃波。

 

 

 ……どうすればいいのか?

 

 

 あまり簡単には勝てそうにない。

 ザッと考え、そう彼は結論付ける。

 

 なので彼は、覚悟を固めた。

 

 

 

 覚悟を固め、踏み込む。

 

「炎よ!」

 

 するとまず、火炎球の魔法が来た。

 

 

 彼は最小限の動きでそれを躱す。

 そしてさらに間合いを詰めた。

 

「雷よ!」 

 

 次に電撃。

 

 

 それについてもギリギリで回避し間合いを詰める。

 

 

 そして最後の衝撃波が来る。

 僧侶風の男が手を前に突き出して来る。

 

 

(今だ)

 

 

 彼は……

 

 さらに間合いを詰め、男が突き出している腕を左腕でカチ上げた。

 

 同時に

 

「波動よ!」

 

 

 衝撃波が来た。

 

 

 しかし、衝撃波が出る手のひらの方向が狂わされたので、狙った方向に魔法が出なかった。

 だがその余波で忍は肩を負傷する。

 

「ッ!」

 

 襲ってくる痛み。

 軽くはない。

 

 しかし、このおかげで彼は僧侶風の男を仕留めることができる。 

 

 無事な右腕で鉤突きを男の脇腹に叩き込む。

 

 クリーンヒットした。

 この一撃でアバラがへし折れたと感じた。

 

「ぐはっ!」

 

 僧侶風の男の声。

 忍の鉤突きのダメージで、男の頭が前に突き出される。

 

 彼はそのチャンスを逃さなかった。

 左足による上段蹴り。

 

 円の軌道を描く彼の左足が、僧侶風の男の頭を刈り取る。

 

「ぐぉ!」

 

 吹っ飛ぶ僧侶風の男。

 

(どうだ……?)

 

 彼の蹴りでアスファルトの上にぶっ倒れた相手に。

 彼は厳しい視線を向けた。

 

 起き上がって来るなら、戦いの決着ではない……!

 

 

 

 残心。

 じっと構えを崩さず見守って。

 

 彼が僧侶風の男を無力化したことを確信したとき。

 

「忍!」

 

 ……真月が彼に駆け寄って来た。

 

 彼女の方も決着がついたらしい。

 

(……良かった)

 

 彼は妻の戦いが無事に済んだことを喜びつつ

 彼女に視線を向け

 

「悪い真月……ハリティーを呼び出して欲しいんだけど。肩を少しヤってしまったから……」

 

 仲魔の召喚を頼んだ。

 止むを得ず負った負傷に対する回復魔法をお願いするために。

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