真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
ケイスケが案内されたそこは小さな部屋で。
落ち着かせるためなのか。
机と、丸椅子2脚と。
それのみ。
そこでメシア服を着た少女たちが座って、青い顔でカップで何かの茶を飲んでいた。
そこに、普通の服を着た少女は居ない。
(……え?)
何故居ないんだ?
まさか、とは思った。
だけど
「あの、異教徒の子はもう帰ったんですか?」
一縷の望みを託して。
ここから去ろうとしている、彼をここに連れてきてくれたテンプルナイトの男性にそう訊ねる。
けれども
「……は?」
その願いは呆気なく打ち砕かれた。
お前は何を言ってるのだ?
テンプルナイトの顔がそう言っている。
そして
「知らん。メシア教徒を救ったら俺たちの仕事は終わりなんだから」
「この子たちと一緒に居たなら、自力で逃げてない限りバール信者に拉致されたままなんじゃないか?」
「知らんけどさ」
……それが、テンプルナイトからの答えだった。
ぷつん。
そのとき。
ケイスケの中で、何かが決定的に切れた。
そして、彼は言ってしまった。
「ふざけるなッ!」
「女の子が攫われようとしているのに、助けなかったのかお前たちはッ!? 何が最も正しい宗教だッ!?」
絶対に許せなかった。
ミドリを見捨てたのに、何も感じていない彼らが。
ケイスケが激高したことで、部屋のメシア教徒の女子が露骨に怯えた顔をした。
そんな彼女らに
「キミらはその子と仲が良かったんだろ!? 何故あの子も助けてあげてって言ってくれなかったんだ!?」
糾弾する言葉を投げつける。
すると
「……そんなこと言っても」
「ミドリちゃん、異教徒だし」
顔を見合わせ、ボソボソとそんなことを言った。
時折、私たち間違ってないでしょ、と言いながら。
(……こいつら)
この少女たちはミドリの名前を出した。
つまり、やはり……
こいつらはミドリを見捨てたのだ!
それを理解した瞬間、彼は叫んでいた。
「何が異教徒だこのクズどもがッ!!」
彼は怒りで前が見えなくなる。
怒りのまま、その心の内をそのまま言葉にして吐き出した。
だがそこに
「……それ以上言ったら、それはメシア教への侮辱と見做し、涜神の罪と判断するぞ?」
……恐ろしく低い声だった。
ケイスケをここに連れてきたテンプルナイトが彼に言う。
涜神の罪。
神を冒涜する罪。
それはメシア教において、殺人より重い罪である。
しかし……
そんなことは彼に何の拘束力も持たなかった。
一切怯まずに
「メシア教徒なんてやってられるか! こんなクズ宗教消えてしまえ!」
彼はテンプルナイトを前にして。
メシア教を捨てることを宣言した。
それはもう、言い逃れもしようもない大罪であった。
それを耳にしたとき
「……言ったな。それでは現行犯で処断する」
テンプルナイトは怒りの表情を浮かべ。
腰に差していた機械仕掛けの長剣の柄に手を掛けた。
(殺される)
それを目にしたとき。
ケイスケはそれを自覚した。
だが、恐怖は感じなかった。
怒りが勝っていた。
こんな邪悪な連中が正義を名乗り、好き勝手に振る舞っていることが許せなかったからだ。
こんな奴らに頭を下げるなんて御免だ。
全部、全部間違っている!
そう思ったとき。
……怒りに満ちた声……裁きを望む者よ……お前は正義を欲するか……?
彼の頭の中で声が聞こえてきた。
頭の中に、直接響いてきたのだ。
……答えよ、人の子よ……お前は正義を欲するか……?
何の声か分からなかった。
……けれども
「……ああ。欲しいね……! ……ボクは正義を欲するっ!」
ケイスケは迷わず、そう答えていた。
迷う理由が無かったからだ。
こんな不正義に満ちた邪悪な世界には何の執着も無かった。
どうでも良かったのだ。
だから気持ちのままにそう返した。
その瞬間だった。
契約は成された……。汝、我が名を唱えるが良い……。この、ヤマの名を……!
頭の中に響いてきた声に、彼は驚愕する。
(……ヤマだって!? つまり、閻魔大王じゃないか!)
彼はヤマの名前を知っていた。
それが閻魔大王を指す名前であることも。
何故こうなったのかは全く分からない。
けれども
彼はこれを、自分の運命だと感じ
その名を、発した。
「来い! ヤマ!」
そのとき、彼は明らかに何かが変わった。
彼の存在が別のものに変わる。
それを感じ取り。
そして――
『我こそは裁定者、我こそは怒れる剣、悪しき者を裁く、正義の刃なり』
彼の立つ周囲にぐるりと光のサークルが浮かび上がり。
その傍に、人影が出現する。
それは……
武家の姫君のような髪型の長い黒髪。そして真っ赤な瞳。
黒地に菊の花柄の振袖を身に着けた美少女。
そんな姿なのに、そこから聞こえてくるのは壮年の男性の声。
彼は理解した。
これがヤマであると……!
「……あ……悪魔!」
テンプルナイトが怯えた声をあげる。
そちらに視線を向けると
そこには、腰に差していた剣を抜き、彼に斬り掛かろうとしているテンプルナイトがいた。
このテンプルナイトは彼を処断すると言った。
つまり、処刑すると言ったのだ。
何も間違ったことなど言っていない彼を。
ならば
彼はテンプルナイトを指差し
「ヤマ! こいつを裁け!」
そう命じた。
すると
『正しき怒りを剣により封じる罪……』
ヤマはそう言葉を発し。
『死すべし』
その手を、テンプルナイトに向けた。
それと同時だった。
テンプルナイトが突如激しく発火し、全身火達磨になり、あっという間に消し炭になったのだ。
悲鳴すら上げられなかった。
それを目の前で目撃していたメシア教徒の少女たちは、はじめはポカンと呆気にとられていたが。
その意味が脳内に染み渡ってくると
「いやああああああああ!」
狂ったような絶叫を上げ、互いに抱き合った。
涙を流しながら。