真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(あまり、暴力的な人間に見えないな)
それが忍の、彼……高城圭介に対する第一印象だった。
彼の22年の人生経験で知り得た、暴力を頼みにする自己中心的な人間というもの特有の特徴というものがあった。
そういう人間は、他者に対する敬意というものが目に無いのだ。
周囲の人間を人形とみているという意識が目に出るのである。
だがこの少年は、そんなことは無かった。
とてもそのような邪悪な存在には思えない。
なので彼は多少迷ったが
変身を解くことにした。
人間体に戻る。
すると
「……え?」
高城少年が目を丸くした。
その反応が、より忍から警戒心を解いていく。
「ああ、私の夫はれっきとした人間だから」
真月がそこにフォローを入れる。
自分が悪魔の情婦になっている女では無いことへのアピール。
悪魔は例外なく人間と
伝承でも人間と結婚し、子供を成した怪異の話は珍しくない。
だから真月による忍へのフォローは必要であった。
悪魔に身体を売った女など、信用度が低くなることはあっても高くなることは無いから。
そしてそれは
「そういうわけなので。あらためてよろしく」
忍としても同じこと。
悪魔であると思われるより、人間であると思われた方が信用されるはずである。
彼はそう言葉を掛けつつ右手を差し出した。
握手である。
(……どうだ?)
緊張の一瞬。
すると
「どうも。あらためて高城です」
向こうも手を差し出してきて、握手が成立した。
握手を終えたとき。
「……ゴメンネ。いきなりだけど、さっそく本題に入っていい?」
真月が話を切り出す。
「……どうぞ?」
高城少年は真月に視線を向け。
そう、話を促した。
真月は少し躊躇いを感じたが
「あなた、メシア教徒とガイア教徒、バール信者を本当に全員処刑したの?」
……そう、この場でどうしても訊くべき内容を、そのまま言葉にした。
それに対して高城少年は
「いえ、全員はしてないですね。いくらかは逃げたり逃がしたり」
真月のそんな穏やかでない質問に対し、少し記憶を探るような表情になった後。
「特にメシア教徒は殺したのはほぼテンプルナイトだけだったと思います」
嫌味でも脅しでもなく、事実を述べる。
そんな調子で、そう返す。
言った内容はすさまじい。
だが問題は
「……何で?」
これである。
今の時代、これが重要なのだ。
真月はじっと目力を上げた表情で訊ねた。
それに対して高城少年は
「襲って来たからですね。主な理由は。……許せなかったのもありますが」
少しだけ彼は、眉根を寄せた。
けれども彼は真月から目を逸らさなかった。
そんな高城少年の返答に対し
「……襲って来たから? だったら正当防衛じゃん」
真月はそう、彼の言葉を評したのだった。
今の時代「襲って来たから殺した。正当防衛だ」は当たり前のように通用する。
平時であれば、逃亡が難しかった、他に手段が無かったなど
殺さないと止められなかった。
これが厳しく問われるわけだが、今は違うのだ。
平時であれば、襲って来た相手を返り討ちにして、無力化した後。
命乞いをはじめた相手を殺せばただの殺人罪であるが。
今はそのまま殺してしまっても正当防衛なのだ。
何故なら一度自分に害意を向けた相手を見逃すと、後でどうなるか分からないからである。
警察が無い所以の話だ。
故に今の時代「他者を攻撃するということは、その他者によって殺されることも受け入れる」が常識なのである。
「殺した相手は全員君を襲って来たのか?」
確かめたいことをさらに質問する。
それに対して彼は
「ええ。一部、生け捕り状態にしたのも居たような気もしますが、そういうのも危ないので殺しました。ただ、逆恨みされるのが不愉快だったから、殺す前にその理由を言葉にしてからやったんですが」
(……なるほど)
巷で言われてる内容とだいぶ乖離が見える気がする。
忍は彼の話を聞きそう思った。
街で言われていた様々な荒っぽい話は、圧倒的な力で強者を薙ぎ払う彼の姿が、チカラの無い人々には恐ろしく映った結果と思われる。
人間、普通は自分をその気になれば笑いながら殺せる存在に警戒せずにはいられない。
自然な反応と言えた。
さらに疑問点を訊ねる。
「……バール信者の協力者を殺したというのは?」
「……それは」
その話に関しては、彼は少し言い淀んだ。
そしてこう続ける。
「バール信者のために、浮浪者の子供を攫って、売ってた連中が居たんですが。生贄要員として……」
その人間たちは、バール信者を彼が全滅させたことを「目障りなことをやった」と判断した。
そのため、彼が当時住んでいた家に放火をしたらしい。
彼はその襲撃で命を落とすことは無かった。
だが、それを放置し同じことが繰り返されることは避けたかった。
そのため彼は自らその身を晒し、襲い掛かって来る襲撃者を始末していったのだ。
その話を聞き
「……自分を囮に、か。でも、よくそんな手段で便衣兵みたいな連中を返り討ちに出来たね?」
彼の話を聞いて、真月は思った素朴な疑問を口にした。
狙撃だとか毒殺だとか狙われたらどうする気だったんだ、と。
すると
「来い!」
突如、高城少年は気合の声を発した。
それに反応し、現れるものがあった。
『呼んだか? 我が主よ』
彼の傍らに現れたのは
壮年男性の声を発する、黒い振袖を着た姫カット黒髪美少女である。
一行はそれに同時に驚いて、同時に不可解な顔になった。
そこで彼は言った。
「紹介します。ボクの仲魔のヤマです」
高城少年の仲魔。
紹介を受けた一行は困惑がますます強くなった。
どうも高城少年は、このヤマを召喚することができるようになったとき。
自分に敵意を向けてくる相手の所在が分かるようになった。
他人の罪を見抜けるようになった。
そして火炎で傷つくことが無いという耐性を得たらしい。
そこだけでも異常であるが、真月たちにとって最も不可解だったのは、この召喚にアームターミナルのような、道具の介在が一切ないことであった。
一体これは、どういうことなのか……?