真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
とりあえず色々と分かった。
高城少年は別にこの時代基準では一般的な少年で。
別に狂ってはおらず。
言うなれば「悪人探知」とでも呼べる能力を持ち。
悪人の罪を見抜く能力もあって。
火炎に対する耐性も持っている。
どうしてそうなのかはよく分からないが、事実としてどうもそうなのは間違いないらしい。
「……なるほど。ありがとう答えてくれて」
真月がそう、自身の納得を伝える言葉を口にした。
その後に続けて忍が
「あと2つほど、確かめたいことがあるんだが、いいか?」
さらに質問を継続することについての許可を求める。
「ええ。どうぞ」
高城少年はそれに快く頷く。
ならばと忍は
「……どうして、こんな何もないビルのてっぺんの展望台にいるんだ?」
こんな不便で、娯楽も無い場所で。
理解できなかった。
敵の襲撃を警戒するにしても、ここである必要は無い。
彼は自分への敵意を持つ「自分にとっての悪人」を察知する能力がある。
見張りする人間でも雇い入れればいいではないか。
説明がつかない。
すると、高城少年の顔が曇った。
そして
「……ちょっとそれについては答えるのが嫌でたまらないので、避けますね。すみません」
回答を拒否される。
(……こんな時代だから、色々あるよな)
忍はなんとなく察して、それ以上の追及はやめた。
そしてその後
「……あとひとつ。何でヤマの目なんてものを作ったんだ?」
さっきの質問を誤魔化すように。
残りのことを訊ねた。
ヤマの目。
そのせいで、池袋は嫌な状態になっている。
高城少年は答える。
「ボクの代わりに、池袋の街を監視して欲しいからですが?」
……平然と。
まるで迷いが無い口調で。
そしてその言葉を受けて、真月はこう言った。
「……そのせいで、あなたの名前を使って脅迫をしてくる奴らが出てきているんだけど?」
そこには非難の響きが含まれている。
だが高城少年は
「それで何か実害出てるんですか?」
一切取り乱さず、平然とそう返して来た。
「出てるでしょう!」
真月は少し声を荒げた。
まあ高城少年の返答は、彼女を挑発しているように聞こえなくもない。
だが高城少年は
「出て無いですよ。処罰するのはボクなのに。ボクはこの街の悪を叩いた後は誰も裁いてないんです。実害なんてあろうはずがない」
(そういうことだと思った)
忍は高城少年のその返答を予想し、その意味を理解していた。
自分はその脅迫とされることに一切関わっていない。
だから実害はない。
そういう言い分だろうと。
それに対し真月は
「脅迫は実害でしょう!?」
怒りを隠そうともせずに、再度それを繰り返すが
「実力行使があればそうですね」
高城少年は怯まない。
真月が不機嫌になると、男でも怯むときがある。
なのに、彼は一切怯まなかった。
そして彼は続けた。
「何でも行動起こしたらメリットデメリットがあるのは当然では? ヤマの目のメリットは、常時ボクの依頼を受けて街を見張る人間が多数潜伏しているってことなんです。そうすることにより、何かまずい存在がこの街にやってきたとき、本当に何か問題が起きたときに、ボクに誰かが報告に来る。そうすれば、すぐにそれに対処できる。そういう構図があるということが大事なんです」
(言ってることに一理あるな)
密告体制、密告社会というと悪いモノのように聞こえるが、監視体制が出来ているということは、治安が維持されているということにもつながる。
実際、あの街で殺人や強盗のような重度の犯罪行為を行う決断をする人間はまずいないだろう。
高城少年に連絡が飛び、死ぬことになるからだ。
しかし、なかには洒落にならない脅迫内容もあった。
無銭飲食くらいなら可愛いもの。
女性に対して身体の要求から、堕胎の要求まであったのだ。
真月が彼の言い分に平常心を失っているのもそこに原因があるのだろう。
忍と家庭を築くことを夢見る彼女にとっては怒らざるを得ないのだ。
そこで忍は、思うところがあった。
口を開く。
「あのさ」
「……なんですか?」
高城少年が忍を見つめる。
忍はそのまま続けた。
「……脅迫を甘く考えているのを見ると、君は強い人間なんだね」
「……それはどうも」
高城少年は忍の言葉に頭を下げる。
そこに続ける形で、忍はさらにこう言った。
「脅迫なんて言葉だけだ。勇気をもって無視すればいい。その程度のことも出来ない弱さにまで責任持てるか。それが君の言い分だ」
そう言い切る。
すると、高城少年から返答が無かった。
ということは、その通りなのか。
続けて
「でもさ、他人に恐怖に耐える強さを強制するって傲慢なんじゃないのかな?」
「それは……」
すると。
高城少年の声に僅かに動揺が宿った。
忍は話が響いていると判断し
「それって、究極”弱い奴のことなんて知るか”って言ってるのと同じだぜ?」
そう、少し強めの表現で、忍は彼の主張を斬った。
(さあ、どう出る……?)
忍は高城少年の出方を見守った。
高城少年は
「ですが! 街の平和を守るためには!」
少し興奮気味の言葉を返して来る。
どうやら忍の言葉が刺さったようだ。
忍はそこに多少の達成感を感じ
「その平和だけどさ……君が死んだらそこで終わりだよね」
誤解を生みかねないが、その事実を口にする。
この監視社会による治安は、彼が存命していなければ成立し得ない。
たった1代しか持たない治安。
その言葉を聞き彼は
「……悪意を感じないから、別に宣戦布告の言葉じゃ無いんですね。すると……その通りですね」
そう言って認めた。
(彼の能力に、悪意の察知があったことに感謝)
そんなことを思いつつ。
忍はこう切り出した、
「ハッキリ言って、東京のこの現状、旧世界の方が遥かに良い……というか、天国だと思わないか? 昔の世界は」
この言葉は。
彼に対するある提案の前振りで
それは
「……実は俺たち、旧世界の暫定政府、つまり昔の日本の政府の公務員なんだわ……。前の世界をいくらか取り戻すために仕事してるんだが……」
ここがポイントだ。
ここで彼を惹きつけないと駄目だ。
だから忍は高城少年の目を見て。
その声に力を籠めた。
「……俺らと一緒に来ないか? 俺らの仕事が成功したら、きちんとした政府がある世界がいくらか戻ってくるんだ」
そう言って忍は再び右手を出した。
勧誘と契約の意味を込めた右手である。
突然のその提案に。
高城少年は色々と思案し。
そして
「受けてくれたら、将来的に池袋の人々も救われるわよね」
真月が、夫の提案について追撃するようにそう言葉を発する。
それが決定打になったらしい
「……よろしくお願いします」
高城少年は忍の手を取った。
真月がそれに「やたっ」と声をあげた。