真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第167話 上野のスーパーでの買い出し

 上野に到着して今晩一行は、桃井家に泊まるという話になっていた。

 そのために、今日の夕飯の材料を買い出しに、一行は上野のスーパーに寄った。

 

『スーパー・マハーカーラ』

 

 ここは、天魔マハーカーラが経営しているスーパーである。

 

 マハーカーラは、日本で言うところの大黒様で。

 スーパーを経営するのに相応しい悪魔といえる。

 

 その店舗は元々上野に存在したスーパーで、店の破損が少なかったものを流用しているのか。

 見た目はかなり大破壊前のものと近かった。

 

 その商品については、総菜類は堕天使ニスロクが作ったものを売ってるらしい。

 

 話を聞く限り品質は良さそうである。

 

 

 

「晩御飯は鍋で良いよね?」

 

「鍋は楽でいいね」

 

 夏子の提案に真月が頷き、男性陣も

 

「いいよそれで」

 

「同じく」

 

 そう返し。

 続けて

 

「何鍋?」

 

 その種類について訊ね

 

 それについては

 

「キムチ鍋が良いんじゃないか?」

 

「寄せ鍋が」

 

 2通りの希望が出たが。

 

 多数決で寄せ鍋と決まった。

 

 

 

 寄せ鍋に必要なものは

 

 肉、野菜、キノコ。

 そして……

 

「ラーメンかうどん、どっちにがいい?」

 

 野菜類や肉類を買い物かごに放り込みつつ。

 真月は訊ねた。

 

 〆の話だ。

 それについては

 

 夏子が

 

「鍋用のラーメンは上野ではまともな奴が無いの」

 

 そう言って、冷凍うどんをガラスドアの冷凍庫から自分の買い物かごに放り込んで答える。

 

 

 

『毎日が価格破壊! 来て、見て、大満足!』

 

 軽快な音楽に合わせて。

 この店の宣伝文句が店内放送で流れていた。

 

 

 

 まるで大破壊前の光景である。

 このスーパーの中は。

 

 とても綺麗で……

 

 しかし、予想がついてしまう。

 

 これはおそらく、奴隷のように働かされている労働者の成果なのだろう、ということが。

 

 

 

 来ている客についても気になった。

 女性は美人しかいないのである。

 

 服装も小奇麗であった。

 とても普通にいる女性には思えない。

 

(……これって……)

 

 真月はそのことについての理由は予想していたが

 それを口に出す前に

 

「……ここのスーパーを利用できるのは、ある程度の実力を持つ男か、その持ち物の女だけなの。女が美人ばかりなのはそういう理由」

 

 彼女の思考を予想した夏子がコッソリ彼女に耳打ちする。

 実力者の所有する女であるから、美人になるのは当然。

 そういうことなのだ。

 

 真月はこの街が住むだけで精神が削られる街なのだなと自覚した。 

 

 

 

「練り物あるのか……要るよね。え? 魚もあるの? どうやって入手したの?」

 

 真月は商品棚にちくわやはんぺんが並んでいるのを見て、買い物かごに入れながら、魚の切り身のパックまであることに気づき、驚く。

 

 ただ、魚は定番のものではなく……

 

「悪魔の肉じゃん……なによデミダゴンって」

 

 よく分からないので

 

 真月は夏子に「これ、美味しいの?」と訊こうとしたそのとき。

 

 視線を感じた。

 

 その方向を見ると

 

 ……夏美がいた。

 

 手に何か持ってる。

 何かを訴える目をしながら。

 

(……これは板チョコレート?)

 

 夏美が持っていたのはお菓子であった。

 真月はとてもそれを「買ってあげたい」と感じた。

 

 だが

 

(勝手に子供にお菓子買うのは良くないのでは?)

 

 虫歯になるとか。

 太るとか。

 ご飯を食べなくなるとか。

 

 色々ある。

 

(勝手な事できないよね)

 

 そう思い、悩んでいた。

 そのとき。

 

「これは駄目」

 

 夏子がそう言って、チョコを夏美から取り上げ。

 お菓子売り場に戻しに行った。

 

(駄目なのか)

 

 それを見送る真月。

 戻って来た夏子は 

 

「太るとね……上野では女は死活問題なの。昔の世界とは違うのよ」

 

 笑っていない目でそう言い放つ。

 

(……うわぁ……)

 

 真月はその言い方に、ものすごい闇を感じた。

 

 

 

 寄せ鍋の材料を全てカゴに入れ、彼女らはさあ会計だとレジに並んだ。

 

 ここは普通のスーパーの風景であった。

 旦那の序列に従って順番が前後するようなことはないらしい。

 

 そう。

 彼女たちの前には3人の美人が並んでいた。

 

 おそらく彼女らは、ガイア教でそれなりの地位にある男の配偶者である。

 

 身なりもいいし、立ち方も整っていた。

 

 彼女らは順番をきっちり守っていた。

 おそらく、妻同士のマウント合戦は夫同士の争いを呼び込むので、面白いことにはならないという意識があるせいだろうか。

 

 しかし

 

「レジ打ちが遅い」

 

「何分待たせるの」

 

「モタモタしないで」

 

 

 ……いきなり。

 

 その3人が一斉にレジ打ちにクレームをつけはじめる。

 

 

 おそらく。

 彼女らは順番で揉めない代わりに、レジ打ちにその苛立ちをぶつけるのであろう。

 この場で最も権力を持たず、弱い立場であるレジ打ちに。

 

 レジ打ちをしているのは素朴な若い女で。

 

 彼女自体は一生懸命やっているようではあるのだが……

 

 手際は確かに遅く。

 時間が掛かっているようだ。

 

 レジ打ちの若い女は顔を青ざめさせていた。

 

 そして

 

「も、申し訳ありません……」

 

 そう、消え入りそうな声を出して謝罪する。

 

 だが

 

「だったら早くして」

 

「言っとくけどぴえんしたらその場で店長に報告してあげるから」

 

「そしたらあなたクビね。無職は上野では生きていけないわよ」

 

 ……順番を待っているガイア教徒の妻たちのクレームは止まらない。

 

 何なんだこれは?

 目の前で展開されていることにそう思う真月に

 

「……これが上野の名物。地獄のレジ係よ……」

 

 後ろに並んでいる夏子が、ポツリと言った。

 

 

 地獄のレジ打ちとは。

 

 どれだけ早く打っても「遅い」と罵られ「もっと早くできなければクビ」と脅かされ続ける。

 まるで終わりの無い血を吐くマラソンのようなレジ打ちを指す言葉で。

 

 それの凄まじさは必死で泣くまいと耐えながら、レジ打ちに専念する女性の姿で一目瞭然であった。

 

 

 本当に上野は、地獄がそこらじゅうに転がっている街である。

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