真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
桃井夫婦は迷いなく進んでいく。
途中、出会うガイア教徒たちが彼らに頭を下げている。
それを見て
(……本当に彼は幹部なんだ……)
真月はそれを実感した。
この建物は核に無傷で耐えられる建物とは思えない。
だが、内装は全く核の影を感じられなかった。
威厳を感じるものであり、豪華であった。
そしてそれは先に進むほど、より豪華になっていく。
やがて。
派手な装飾がされた大扉の前に来る。
流石に分かる。
(絶対に、ここだ)
真月のそんな思いに応じるように
「……入りますよ」
桃井明のその言葉。
強い声での入室許可要請の言葉である。
すると
ゴッ……と音を立てて。
大扉が自動で開いていく。
その扉の中に桃井夫婦が入っていった。
忍たちもそこに続く。
中は豪奢な飾りは無かったが、天井が高かった。
そしてそこには大きな円卓があり。
そこに多数の人間が座っている。
(これがガイア教徒最高幹部13人……!)
様々な人間がいた。
そしてそこに女は少ない。
その数、たった3人。
昨日、桃井明から聞かされていたことではあるが、それを目の前に突きつけられて
やはりこういう弱肉強食で勝ち上がってくるのは男性なのか。
それを感じて、真月は少しだけ悔しい気持ちを覚えた。
が。
(まぁ、それはそれとして)
彼女はそこで割り切り。
そのメンバーを改めて確認する。
そこは本当に自由であった。
メンバーに、明らかに日本人では無い者もいた。
ガイア教を象徴している気がした。
そこに
「……アナタが佐上真月さん?」
突如たった3人の女性幹部の1人……ブランド物らしい青い服を着た栗色のロングヘアの女が真月に話しかけてきた。
その女性幹部は美人ではあったが……
その目に優しさが全くない女性であった。
真月は思う。
(この人、他人に同情したことが無いんじゃ無いかな? そんな気がする。ずっと強者でやってきて、弱い人を見下してきた人……)
彼女に対する第一印象は、厭忌……。
何とも言えない嫌悪感と、悍ましさであった。
姿は綺麗な人物であるが、嫌だ。
友人にはなりたくない。
しかし
「ええ、私が佐上真月です。あなたは……?」
彼女はそんな嫌悪感を封印し、笑顔でそう名乗る。
すると
「私は橘千晶。よろしくね、佐上さん」
向こうからも、笑顔の名乗りが返って来た。
(この人が橘千晶……私を呼んだ人……!)
ニッコリ笑いながらこちらに名乗り返す彼女に、真月はある種の緊張感を感じ
「ええ、できれば平和的な関係を築きたいですね……」
こちらも笑顔を作り、友好的な態度を返した。
だが
(この人、おそらく怪物だ)
真月はこの橘千晶という女性に。
化け物が人間のふりをしているという、分かり合えないものを感じた。
だが一方
「そう! 嬉しいわね!」
橘千晶の方はそう真月の返答を喜び。
続いて。
「そこで提案なんだけど、アナタ、13人幹部のひとりになる気、無い……?」
来た。
真月はその言葉を聞いたとき、そう思った。
これは昨日の段階で聞かされていたことで。
彼女はその質問が来た時にどう返すかは決めていたのだった。
故に
「……突然ですね。どういう理由ですか?」
反射的に拒否するのではなく。
そう返して。
会話を続ける。
すると橘千晶は
「女性だから……と言いたいところだけど」
酷く愉しそうに
「それだけじゃないわね」
その理由を語った。
それは
「……無敵のベリアルとネビロスを、自力で討伐方法を考え出して実行し、完遂できてしまう強さと知性が気に入ったのよ」
とのことだった。
あの六本木の戦いが、彼らに高く評価されているようだ。
それに対して真月は
しばらく思案した。
あくまで拒否するのは簡単である。
だが、それではふたりの目的を完遂することはできない。
なので
「……なってもいいですよ。条件付きですが」
そう返したのである。
その返答に橘千晶はニヤリと笑った。
そして言う
「条件は?」
何を提示して来るつもりなのか。
そこに興味があるらしい。
真月はそこで一拍置き
心を決めて
「2つあります……」
話した。
その2つの条件を
それは
「1つ目は今後、三種の神器を破壊しようとすることを止めること。2つ目は、メシア教徒に奪われている草薙の剣の本体の奪還に協力すること……この2つです」
その条件に橘千晶は少し感心したように
「……地位やお金じゃないのね」
呟くように言う。
その言葉を真月は
「そんなもの、もう充分持ってますから不要です」
一刀両断で切り捨てる。
彼女は別に今の自分が持っているもので十分で。
これ以上に欲しいものがあるとしたら、それはかつての日常であるのだ。
今以上の地位と富など、別にあっても意味がない。
だが
「神器破壊をしないと、また旧世界の政府が復活してしまい、俺たちの敵になる可能性が出てくるのだが」
そこで。
彼女らの話に、13人幹部の別の1人が口を挟んで来た。
それはアルビノらしい白髪の青年であった。
その眼光は冷酷そうである。
顔立ちは整っていたが、そのファッションセンスがTシャツに半纏、サイズのおかしいズボンに下駄。
あまりにも壊滅的なのが特徴で。
真月は彼の名前が
元々超有能なコンピューター技術者で、頭が相当切れる男と聞いている。
なので
「桜井さんでいいんでしょうか?」
そう名を確認し
「ああ。俺の名を知っているのか」
会話の先制を取った上で
彼女は
「敵にならなければいいんですね? じゃあ?」
そう、その場の13人幹部たちの誰もが困惑する言葉を口にする。
敵にならない……?
それはどういうことなのか?
彼女には、暫定政府の外交を左右するような権限が与えられているとでも言うのか……?
(あり得ない)
橘千晶はその可能性を考えて、そう一蹴した。
だが
「ちょっと失礼」
真月はそこで、そう言いながらアームターミナルのキーボードに右手を伸ばした。
その瞬間、場がざわつく。
当然である。
アームターミナルを触ることは普通に考えて敵対行為である。
その場の幹部が各々のアームターミナルに手を触れた。
当たり前の反応。
しかし
「日本政府の名誉に賭けて、この行為は攻撃行為ではありません!」
それに合わせるように、真月は誓いを立てる。
国の名誉に誓った行為で騙し討ちを掛けることは許されない。
それをやったらやった時点で、あとはもう殲滅戦である。
会話などできるはずがないのだ。
故に
(面白いわね)
橘千晶はそう思って、腰に吊るしている銃を抜くことを中止した。
仮にも自分が見込んだ人物。
その人物がここまで言ったのなら信じてみてもいいだろうと。
そう。
彼女は真月を見ていたく気に入ってしまったのだ。
真月が自分を嫌っていることはすぐに気づいたが、そんな大嫌いな相手に自分を抑え、目的のための交渉が出来る有能な人間……
彼女はそこに大きな好感を持っていたのだ。
彼女はこの世には「必要な人間」と「必要のない人間」の2種類がいると考えていて。
要る人間はなるべく残し、仲間に引き入れていきたい。
そう考えているのだった。
故に、攻撃することを中止したのである。
他の面々も彼女の言葉に「取り敢えず信じる」とし。
場は沈静化された。
そして皆が見守る中。
真月はアームターミナルに指を走らせた。
すると……
この13人幹部が集まる円卓の間の床に、魔法陣が浮かび上がって。
そこに、ひとりの少女が出現した。
ピンクのワンピースを着た、年齢は7才くらいのおさげの少女だ。
この場の13人幹部の誰もが「何だ?」と訝し気な顔をした。
先が読めない。
だが
その少女が佐上真月と握手をした。
その次の瞬間だった。
ずもももも……という音が聞こえる勢いで。
その少女の身体が膨れ上がり、巨大化していく。
………さすがに場が凍り付いた。
大きさはおよそ10メートル。
かなり大きいこの円卓の間の天井に、つっかえるほどの大きさだ。
それは身を屈めながら、そこに在った。
それは赤黒い巨大な骸骨で、腕が何本もあった。
そして、本来頭蓋骨があるところに、ミイラのような上半身が生えている。
それは、こう言った。
「……我こそは天津神イザナミ。かつて我が民であったものたちよ。我が契約主である真月の要請により、この場に立ち会おうぞ」