真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(……一応、言ってることに正当性はあるな)
真月の話を最後まで聞き。
(あの悪魔は間違いなくイザナミだ)
彼自身凄腕の悪魔使いであり、その識別眼が言っていた。
あれは本物のイザナミであると。
そして彼も日本の権力の構造は理解していた。
そこから考えると正当性はある。
真月の提案を信用し、要求に耳を傾けても構わないかもしれない。
しかし……
「伊邪那美神よ。少し良いか?」
彼は一応確認しておこうと思った。
イザナミは
「なんじゃ?」
反応して、彼に視線を向ける。
それを受け、桜井直哉は訊ねた。
「伊邪那岐神が異を唱えたらどうする気だ?」
イザナミには夫がいる。
離婚しているので、元夫ではあるが。
創造神としての片割れであるイザナギである。
これは確認しておかねばならないことだ。
これに関しては
「我の元夫も、これには同意するはず。どうしようもないのだから。それに……」
そのときイザナミは、少し意地の悪い顔をした。
そして言った。
「アイツは我の言うことを否定するような立場にない。我に恥を掻かせてくれたからのう」
伊邪那岐神は伊邪那美神の「見るな」という言葉を無視し。
冥界に堕ちて死者となった妻の穢れた姿を見た。
そのことで彼女に「約束を守ることもできず、責任も取れない男の妻」という恥を掻かせた。
古事記に記された人の生死の起源の話である。
黄泉の国で出会った伊邪那美神はすでに死の穢れに染まっており、どのみち生者である伊邪那岐神と一緒に居ることはできないわけであるが、貸しは貸しである。
だから文句は言わせない。
(なるほど)
桜井直哉は納得した。
(あとは……)
そしてイザナミの言葉に納得した桜井直哉は、今度は真月に視線を向け
「佐上真月よ、聞いておきたいのだが」
あともうひとつ。
大きな疑問点を訊ねる。
それは
「……何故、自分たちで草薙の剣を取り返すことを諦めた?」
草薙の剣をメシア教徒たちが熱田神宮から盗み出していること自体知らなかったが。
何故それを自分達だけで達成することを諦め、領土を引き換えにすることを選択したのかが分からなかったからだ。
(来た)
真月は正直、この質問が来ることは予想していた。
軽々しく話せることではないから、自分からは言わなかったが。
彼女は大きく息を吸い。
覚悟を決める。
草薙の剣が持つ、大きな秘密を口にすることを。
「それは」
じっと桜井直哉の目を正面から見つめて
「草薙の剣を武器として振るう者は、どんな方法でもダメージを与えられない。そしてそんなものを、最強のクルセイダーが持ち歩いているからよ」
彼女はその秘密を口にした。
「そんな相手を倒すには、1対1の状況に持ち込むのがマスト。だけど向こうは組織に守られてて、こっちにはそんなものに対抗できる戦力は無いし、私たちの政府に要請することもできないから」
そして決断に至った理由を口にする。
ガイア教徒たちの視線が彼女に集まっている。
彼女はその視線に圧力を感じたが
動じず
「……これで満足かしら?」
そう言い、それまでの態度は崩さなかった。
この情報で、またガイア教徒幹部たちがざわめいた。
ガイア教徒は力の論理で組織を作っている集団である。
そんな彼らに、そんな超強力なアイテムは超魅力的に聞こえるだろう。
しかし
「言っとくけど、草薙の剣を横取りしようとするのはオススメしないわ」
真月はそう言って釘を差した。
その彼女の言葉に
「……それは東京の領有がならなくなるから、って意味かしら?」
橘千晶が試す笑みを浮かべてそう返して来る。
もし「その通りよ」などと言おうものなら、彼女は真月を嘲笑うに違いない。
無論
「そんなわけないでしょ? 違うわよ」
彼女はそう言って橘千晶の言葉を一蹴した。
ならばどういう理由なのか?
それは……
「ガイア教徒で一番偉いのは一番強い人間。つまり……」
彼女は彼らを強い視線で睨め付けながら
「間違いなく、剣を巡って殺し合いになるわ。……知ってる? 仲の良いスナネズミのオスの集団に、メスのスナネズミを1匹投げ込むと、メスを巡ってオスが殺し合いを始めるの。さっきまで仲良しだったのに、ね」
そう、辛辣な言葉を投げつけた。
ガイア教徒にとっては不快な言葉だ。
だが
否定できない。
真月が言った通り、そんな強力な神器を手に入れてしまえば、間違いなく内部で争いが起きるだろう。
ガイア教徒にとっての草薙の剣は、組織崩壊が起きかねない劇物になるのだ。
彼らはしばらく黙り込み、互いに視線を交わし合う。
やがて
「……分かった」
1人の男が口を開いた。
「その2つの要求を認めよう。代わりに成功したら東京の領有権はガイア教徒のものになる。それでいいな?」
真月はこの男性の名前も一応予想はついていた。
桃井明に聞いていたから。
周囲のガイア教徒たちに向けてそう発言する男。
体格が良くて、隙の無いスーツに身を包んだ典型的な強者男性。
顔つきも精悍な感じであり、精力的な印象を受ける。
彼の名はおそらく
世界的企業
妥協を許さない厳しさを備えた面構えであった。
「ああ」
「それでいいわ」
「神取の意見に同意する」
そして他の幹部たちが口々に彼の発言を肯定する。
こうして……
この日東京は、近い将来日本ではなくなることが決定された。