真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第172話 これからはガイア教徒で

 暫定政府とガイア教徒の同盟締結交渉。

 そこから

 

「で、それはもういいわ。もうひとつの話」

 

 すっかり頭を切り替えたのか。

 橘千晶が真月に向けて。

 

「ガイア教徒にはなってくれるの?」

 

 真月のガイア教徒の幹部就任の話を再開する。

 

 この要求については、もはや無視しても構わない。

 すでに東京23区を割譲するという重い代償と引き換えに、メシア教徒との戦いに協力してもらうことを約束させた。

 

 だが、これから組織としてガイア教徒を活用するのだ。

 彼女自身も仲間になる方が何かと都合がいい。

 

 この任務の成功を第一に考えるならば……

 

「もちろん良いわよ。約束だしね」

 

 約束、というところを強調する。

 

 彼らには法律は通じない。

 だが最低限の義理人情、仁義はあることを信じたい。

 悪党には悪党の仁義があるものである。 

 

「へぇ、感心ね」

 

 その真月の返答に橘千晶は目を丸くした。

 

「こっちは断る可能性を考えてたのに」

 

 意外だ。

 言外にそう言うその言葉に

 

(まあ、それは考えるよね)

 

 真月は内心思った。

 

 すでに成功報酬で東京割譲の約束を取り付けているのだから。

 それがあるから自分の入信はしなくて良いだろという話をすること。

 決してメチャクチャな話では無いはずだ。

 

 でも、だからこそ

 ここは入信しなければならないのだ。

 

「席はここでいいの?」

 

 真月は空いてる席に歩み寄り、椅子の背に手を掛けながら訊ねる。

 

 すると橘千晶が答えた。

 

「そこは桃井さんの席」

 

(……明氏のか)

 

 とすると、こっちか。

 

 彼女はもうひとつの空席に近づき、その席に着いた。

 なかなか上等な木の椅子で、座り心地が良い。

 

 そして

 

「ガイア教徒に入信の儀式って無いの?」

 

 ゆったりと座ったまま

 

 彼女はそれを訊ねる。

 

 それに対して

 

「入信に関しては、無いな。自分がガイア教徒だと思った瞬間からそいつはガイア教徒だ」

 

 神取が彼女にそう返答する。

 

(なるほど……すっごい自由)

 

 真月はその神取の言葉に、心でそう呟いた。

 

「そゆこと。今日からあなたはガイア教徒。私たちの仲間」

 

 橘千晶がさらにそう言った。

 妙に嬉しそうである。

 

 桃井明も昨日言ってはいたが、かなり彼女に真月は気に入られているようだ。

 しかし 

 

(……嫌いな人に気に入られてもなぁ)

 

 真月はそう心でぼやいた。

 

 ぼやきつつ

 

「なるほど……私もガイア教徒になってしまったのね……」

 

 ポツリ、という感じでそう復唱し。

 

 そして、続けた。

 

「そして同時に仏教徒……」

 

 彼女がそれを口にしたとき。

 

 ざわっ、と空気が鳴った気がした。

 

「あんど、神道の氏子……」

 

 そしてさらにそう呟いたとき。

 

「ふざけてますか! そんなことが認められるわけ無いでございます!」

 

 彼女の発言に、13人の1人の、外国人の男が食って掛かった。

 

 自分の席を立ち、彼女に近づいてくる。

 

(やっぱりこの人が噛み付いて来たか)

 

 内心真月はそう思っていた。

 外国人にとっては異常としか言えない言葉であるから。

 

 だが噛み付かれつつも、真月は落ち着きを崩さずに

 

「……お名前は?」

 

 そう、冷静に訊ねる。

 

 彼はその言葉に応え

 

「私はヒメネス」

 

 名を名乗り。

 そして

 

「申し訳ないがお前はおかしい。どうして宗教を3つも信仰できる。その思考、ウルトラやばい。病院で診てもらってこい」

 

 変な日本語で彼女を非難したのだった。

 真月はその言葉には何も返さず。

 

(この人……多分、元アメリカ人かなぁ? 在日米軍の成れの果てなんだろうか?)

 

 冷静にそのヒメネスという男を観察した。

 

 軍服を着用している男で。

 肌の色は黒め。ただし黒人じゃなく。

 おそらく、ヒスパニック。スペイン系。

 

 髪の毛はチリチリしており、かなり短い。

 そして顔つきは野性的なハンサムであった。

 

 そんな彼が目を吊り上げて全力で真月を非難する。

 

 真月は

 

(面倒だなぁ)

 

 そう心で溜息をつき、どう説明しようかと思案し始めた。

 そのとき

 

 クスクス笑いが聞こえてきた。

 

 見ると真月以外の女性で、橘千晶以外の2人のうちのもう1人。

 

 髪の毛が極端に短い成人女性が笑っていた。

 女性らしさをぎりぎり損なわない最低ラインのヘアスタイルである。

 口元のほくろに色気があるが、対照的な髪の短さが印象的な女性であった。

 

 身長はかなり高く男性並みで。

 革で作った黒のラバースーツのようなものを着用していた。

 

 彼女は笑いを収め、真月に

 

「ごめんなさいね。彼は日本語に不慣れなのよ。変でしょ? あと、日本人の常識にも疎いところあるし」

 

 そう言ってヒメネスの言葉に詫びを入れて来た。

 真月はそれに対して

 

「はい。まぁ、世界的に見て複数宗教を同時に信仰する民族って多分いないだろうから、異様に映ってもしょうがないですよね」

 

 そう返し、気にしていないという意志を伝える。

 その意志が伝わったのか

 

「私は百合子。よろしくね、佐上真月さん」

 

 彼女はそう言って自らの名を名乗った。

 

 彼女の名乗りに

 

(……名字は?)

 

 真月は一瞬そう訊ねようと考えたが。

 

 彼女らの師匠であるガラ吉が「本名嫌いだから今日から仇名を本名にする」と言っていたことを思い出し。

 

 やめておくことにした。

 聞かなければならないことでもあるまい。

 

 それよりも

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 友好的に頭を下げた。

 

 そして続けてヒメネスに

 

「そういうわけなの。ヒメネスさん、怒ってるのはあなただけなんだな。日本では普通にやられてることだから、別に常識外れじゃないのよ」

 

 目を見て、はっきり言い切る。

 

 さらに

 

「それにガイア教は自由な宗教なんだから、同時信仰くらい認めるべきでは? 日本ですら認めてきたことなんだし」

 

 そう言った。

 

 そこまで言うと、ヒメネスは周りを見回し。

 

 真月の言ってることの正当性を理解したようだ。

 

 そして

 

「……確かに皆納得してるみたい。参りましたわ……日本の文化はウルトラ変だぜ」

 

 やれやれ、といったふうに頭を振って、自分の席に戻っていく。

 

 その背を見送りながら、真月は

 

(ほっ、良かった)

 

 顔には出さずに。

 そう、胸を撫で下ろした。

 

 そしてヒメネスが自分の席に戻ったとき。

 ヒメネスの非難をやり過ごした真月に

 

「なかなか胆力がある女性だな。それに知恵もある。まぁ、桃井君から話は聞いていたけれども」

 

 また別方向から声が掛かった。

 

 今度の声の主は、一見穏やかな感じの男性であった。

 

 年齢は40代くらいに見える。

 

 体型は普通であり、特に太っていない。

 襟の無い黒いシャツに、同色のスーツを身に着けている。

 

 一見、こんな場所にいるべき人には見えない。

 簡単に言えば、ガイア教徒らしくない人物であった。

 

(この人はどういう理由でガイア教に入ったんだろうか?)

 

 真月は少し、そこが気になった。

 

 その男性は名乗った。

 

「僕は橿原という。ガイア教では学校教育でもやってみようかなと思っているんだが、キミもひとつ嚙まないか?」

 

 橿原。

 

 百合子とは逆に下の名前を名乗らない。

 

 おそらく何か理由があるのだろう。

 

「ええ。時間が許すなら考えておきます」

 

 彼女は笑顔で頭を下げる。

 友好的な関係を築いておくことに越したことはない。

 

 

 

 そして真月は、そのままガイア教徒の幹部全員に挨拶を行っていった。

 たった1人を除いて。 

 

 それは……

 

 

 足立透。

 

 桃井明曰く……

 

 元刑事で、東大出の秀才。

 服装に無頓着で、いつもヘラヘラしている。

 

 しかし本性はとても幼稚で、嫉妬深く、残酷。

 

 そんな彼以外、全員に。

 これについては

 

(彼は、明日)

 

 ある思惑があったのだ。

 

「最後に、紹介させてください」

 

 そう言い真月は自分の席を立ち。その後ろに回った。

 すぐ傍で控えていた自分の夫を彼らに紹介するために。

 

 彼女は夫の背中に手を当て、押し出しつつ

 

「この人が私の夫の佐上忍です」

 

 夫の名を彼らに言い。

 そして

 

「彼とは夫婦なので、私と同等の扱いというか、この席は2人で座ります。それくらい良いですよね?」

 

 そう宣言した。

 

 夫婦で1つの席に座る。 

 

 その常識から逸脱する宣言に

 

 13人のメンバーは、大半が面白いものを見る目で彼女らを見ていた。

 一部、ノーリアクションの人間も居たけれど。

 

 大きくは否定されなかった。

 ここで否定しても面倒なだけなので、気にしないのか。

 

 ただ 

 

「なるほど。上弦の陸形式か」

 

 桃井明だけ、彼女らのその宣言にそんなコメントを付けたのだった。

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