真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(これは……!)
忍は片膝を突いた。
どういう理屈か分からない。
だが、ものすごい体力を持っていかれたのだ……!
それこそ、まともに動けなくなるほどに。
「……ああ、痛みが引いてきたよ」
対して。
足立は、余裕を取り戻し、立ち上がる。
さっきまで忍の攻撃を受け、さらに忍に魔法を反射され、ズタズタだったのに。
(なんで……?)
わけが分からず、混乱する忍に
足立は
「ノアの魔法……ウソブキさ。敵の体力と魔力を奪い、術者を回復させる」
種明かし、というふうにそう言った。
そして、自分の左腕を見せてくる。
グーパーを繰り返しながら。
(……治っている?)
驚愕せざるを得ない。
彼の腕をへし折った身としては。
完全に蹴り砕いたはずなのに。
「この通り。キミに折られた腕もほぼ治ったよ。よくもやってくれたよね……」
そして酷く残酷な笑みを浮かべ
語った。
「ボクが呼んだこいつは邪神ノア……誰とも繋がらず、他者を当てにしない人間の守護神なんだ」
そう言いながら、足立は彼の傍に降り立ったその人面四足獣の姿の悪魔の身体をそっと撫でた。
回復を果たした左手で。
誇らしげに。
忍はその説明を聞き、思った。
(他者を当てにしない……だったら何で、他人のエネルギーを吸うんだよ……!)
足立のいう「邪神ノア」と呼ばれる悪魔の出自。
それは孤独の守護神らしい。
納得がいかなかった。
だったらなぜ、他者のエネルギーを吸うのか。
ただの攻撃なら分かる。
だが、エネルギーを吸い取るなんて……
(それ、寄生だろ)
激しい嫌悪感を感じた。
他者と関わろうとしないくせに、果実は欲しがる。
そんな醜い心根が現れている気がする。
だが、そんな彼の憤りは
「ウソブキを2回当てたら普通の人は死ぬらしい。強い人間でも3回は耐えられないってさ……」
足立のこの言葉の前には、意味を成さない。
納得がいこうといかなかろうと、この絶体絶命の状況は変わらないのだ。
足立はまた、右手を忍に向けてきた。
「……さあ、キミの場合はどうなのかなぁ?」
(どうする……? 考えろ……!)
膝をついた姿勢で彼は諦めずに頭を回した。
魔法を連打すればきっと足立にダメージを与えることは可能だ。
だがしかし、それはウソブキを1度使われるだけで帳消しになる。
そもそも、次のウソブキに耐えられる保証はないし。
加えて、さきほどのエネルギードレインで受けたダメージで、まともに動くことがまずできない……!
(どうすれば……!? どうすればいいんだ……!)
そのときだった。
彼の目の前に、真月が来たのだ。
腕を大きく広げて立ちながら……
忍を。
自分の夫を守るように。
そんな彼女に足立は一瞬驚くが。
すぐに唇の端を歪めて嘲笑う。
「へえ、自分が立ち塞がればボクが止めてくれるとでも思ってるのかい?」
忍の血が凍った。
その通りだ。
この男は女だからという理由で手心を加える人間では無い。
躊躇なくやられて、死体が1つ増えるだけ……!
「真月、よせ!」
動けなかったが。
忍は声を必死で張り上げ、そう言った。
だが真月は動かない。
その顔は真っ青になっていた。
足も震えている。
それで何も返さず、その場を動かない。
「真月!」
そしてもう一度。
忍の必死の呼びかけが響いた。
「真月さん!」
高城少年も叫ぶ。
緊張で時間が止まったように思えた。
いや、永劫に近い時間が流れたようにも思えた。
実際は数秒だったのかもしれないが。
そのとき。
「クッ……」
何故だか突如、足立が自分の腕を下ろしたのだ。
(え……?)
忍は逆に混乱する。
彼は妻の死を確信して絶望的な気分になっていた。
満足に動かない身体。
殺されようとする妻を守れない自分に絶望していた。
それなのに。
(どういうことだ……?)
わけがわからなかった。
「クウウウウウウ!」
そして
もっとわけがわからなかったことは
(……こいつ、泣いてる……!)
足立は泣いていた。
理解が出来なくて。
その場にいる、誰もが動けなくなった。
(どういうことなんだ……?)
(どういうこと……?)
そしてしばらく、足立が声を殺して泣く姿を3人はただ見守り。
やがて……
「……なぁ、ボクを殺しに来たのは何でだ? ボクの地位が欲しかったのか? この家とか?」
足立は目じりを擦りながらそう、訊いてくる。
その問いに、真月が答える。
「……あなたの席に、ウチのケイスケくんを座らせようと思ったの。ちょっとガイア教徒の最高幹部はメンツが黒すぎるから少し薄める意味合いで」
誤魔化しを交えず、正直に答えた。
ここで嘘を吐くのはありえない。
すると
「ハハ……昨日の顔合わせでそんなことを考えていたのか。笑えるねキミら……危なくてしょうがない人間だよ……」
足立はそう言って愉快そうに笑った。
そして
「……いいよ。なんかもう、いいや。ボクの席も、この家も、皆あげるよ」
ひらひらと手を振り、足立は部屋を出ていく。
「ちょっと着替える時間頂戴ね。その後この家出ていくから」
そう、言い残して。
バタン。
ドアが閉じられる音が、やけに大きく、そして寂しく響いた気がした。