真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(助かった、のか……?)
高城少年は絶体絶命だ、と思っていた。
足立が自分と同じ、特殊な悪魔召喚の能力に目覚めたせいで
彼の火炎攻撃は反射され。
絶対の強者であるはずの、佐上忍まで倒されそうになった。
あの足立という男は「ウソブキ」という恐ろしい技を使用した。
使われた時点でおそらく防ぐ手が無く、数回使われると死に至るというチート技。
どうしようもない。
旧世界の常識でいくとするなら、相手に戦いで勝つために、相手の使う武術、思考パターンを研究し尽くして仕合に挑んだのに。
相手が窮地に陥ったときに、相手がいきなり拳銃を抜いてきた。
拳銃を持ってるなんて察知しようが無かった。
そういう話である。
実は対戦相手が直前にこっそり反社に接触し、自動拳銃を購入していた。
それを察知しておらず、射殺されて負けたとしても
準備不足。
などとは言われないであろう。
だがそんなことは別の意味で関係無い。
こちらに落ち度が無かったとしても、負けは負けで。
そして、負けは死である。
想定外のチート技「ウソブキ」
それを喰らって忍は瀕死の状態になった。
足立はそんな忍にさらにウソブキを撃つという。
絶対絶命であった。
(どうすればいいんだ……?)
そのとき高城少年はこの窮地を打破する方法を探した。
だが、思いつかない。
あの佐上忍が膝をついてしまう相手に、自分が勝つところがどうしても想像できなかった。
広がる絶望。
自分達は大きな選択ミスをした。
そう考え始めたとき。
飛び出す影があった。
真月である。
彼女は、自分の夫の前に飛び出して。
その前に手を広げて立ち塞がったのだ。
佐上真月は恐ろしく頭のキレる女性である。
何か策があるのかもしれない。
そう一瞬、高城少年は希望を抱いたが。
(……違う)
そうではなかった。
顔を見れば分かる。
ただ、彼女は夫を庇いに出ただけなのだ。
それはハッキリ言って何の解決にもなっていない。
ただ、夫の死を数秒先延ばしにするだけだ。
足立は女性を殺すことを躊躇する人間とも思えない。
しかし……
高城少年は真月の表情を見て理解した。
真月は死を覚悟していると。
自分が生き残る目を全く考えてないと。
これは一か八かの人間の盾ではない。
確実に数秒持つ人間の盾として、彼女は夫の前に立ったのだ。
高城少年はその行為に、この夫婦の絆の深さを感じた。
すると
次の瞬間。
信じられないことが起きた。
……なんと足立が泣き出し、攻撃を止めたのである。
理解できなかった。
できなかったからこそ。
高城少年は彼の能力……
『罪状看破』を使用した。
ヤマの能力である。
罪状看破とは?
それは他者が重ねた罪を見抜く能力である。
何が罪であるかはそれはヤマが決めることで。
ヤマの目で罪と数えられるものを、高城少年は知ることができるのだ。
足立という男の罪状には殺人が多かった。
当然だろう。
この男はガイア教の幹部なのだ。
殺人をやっていないはずがない。
その殺人がどういう経緯で行われ、その結果この男がどうなったか。
そこまでの情報が高城少年の中に流れ込む。
泣くということは、辛いことを思い出したか、後悔したということ。
高城少年は直感でそう思い。
そのため彼の能力で出来ることとして。
罪状看破を使用したのだ。
だが、見つからない。
(この男の罪の中に、今のこの男を理解するものは無い?)
ただ無意味に、他者の罪を覗いた。
そこに彼がある種の罪悪感を感じ始めたとき。
1件だけ、殺人以外の罪状を見つける。
それは少女相手の強姦で。
その結果、少女は自殺した。
そしてこの罪を犯した後、この男は不能になっている。
この事実を知ったとき。
高城少年は足立という男の心の動きが分かった気になった。
(……あの人、自分の夫が殺されるくらいなら、先に自分が盾になる)
(そんな選択を全くなんの躊躇いも無く選択した真月さんを見て……)
(自分の経験と比較し、酷く惨めになったのかもしれない……)
女に死を選ばせた意味が全く違う。
彼は嫌悪。拒絶であり。
忍は、愛であり、献身。
そこを思い知らされて、攻撃できなくなったのかもしれない。
決めつけかもしれないが、彼はそう思った。
自分とはあまりにも違う輝かしいものを、否定するなんて……
それが出来なかったのか。
それは彼の最後の矜持だったのかもしれない。
高城少年がそうして、足立の不可解な行動への
足立が部屋から出て。
バタン、と扉が閉じられた音で。
真月が崩れ落ちるように、へたり込んだ。
……真っ青なままであった。
本気で死ぬと考えていたのだ。
そして
「真月」
忍がそんな自分の妻を。
変身を解いて、そっと後ろから抱きしめた。
「じゃ、後はよろしく。ボクの召使たちは出来れば飼い続けて欲しい。解雇しちゃうと、その子たち生きていけないからね」
笑顔で足立はそう言って、自分の家だった一戸建てを出て行った。
服装は3人を応対したときのような油断したものでは無く、紺色のスーツと白シャツ、そしてネクタイ。
大人の男性としては恥ずかしくない格好である。
そんな格好で、リュックみたいな鞄を1個だけ背負って歩いていく。
そこに当面の生活物資でも入れているのだろうか。
(何でこの人、勝てる戦いを捨てたんだろうか?)
真月は疑問に思っていた。
高城少年は足立の過去を口外しなかった。
だから知らないのである。
ただ、高城少年は
「ボクの能力で、彼に危険性は無いと判断しています」
とだけ言った。
高城少年がそう言った以上、ならば彼はもはや敵では無い。
高城少年はそれが分かるのだから。
見送っても特に問題はないはずである。
そこは2人は納得していた。
だが、不可解なものは不可解で……
そこに
「……どうした?」
そんな彼女に、忍が、彼女の夫が声を掛けてくる。
……ウソブキの影響からほぼ回復に至っているが、まだちょっと心配で。
彼女は無理をしないで欲しい、と思いながら
彼を見上げて
「……何で勝てたんだろうね?」
そう言った。
だが、彼の方も顔を顰めて
「……分からん」
そう返して来た。
その後
「もうああいうことはやらないでくれ。頼むから」
そう忍は、弱り切ったような声で言った。
(ああいうこと?)
夫は、身を挺して自分を庇うような真似を止めて欲しいと言っているのか。
そんなの……
答えは決まっている。
それは……
彼女は笑顔でこう返した。
「絶対嫌」