真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
第178話 放送局占拠を狙え!
忍は変身した状態で先行していた。
そして火炎魔法を撒き散らし、後に続く2人のための道を作る。
「ついてこれてるか!?」
後ろの2人……真月と高城少年に振り返らずに訊く。
すると
「大丈夫よ!」
「問題ないです!」
2人から張りのある声が返って来た。
「分かった!」
忍はそう返し、突き進む。
そこらじゅうで戦いが繰り広げられている戦場のど真ん中を。
彼らの周りで戦争が起きている。
ガイア教徒と、テンプルナイトと天使の混成軍との戦いだ。
この戦争にはガイア教徒の実力者たちが参加している。
「うあああああ!」
悲鳴が轟いた。
その女に掴みかかるも、その手を掴まれて投げ飛ばされた上に、倒れ込んだところを頭を踏み砕かれた。
その瞬間、当然だがテンプルナイトの叫び声がぴたりと止まった。
テンプルナイトたちは仲間があっけなく殺されたのに、士気を全く失わない。
女に向けて軍用ライフルを構えて、発砲する。
数人のテンプルナイトによる一斉射撃である。
だが
複数の銃声と共に肩や頭、手に着弾するも。
女はダメージは受けていないようだ。
変わらず、冷酷そうな攻撃的な瞳で、テンプルナイトたちを睨め付ける。
女の名は橘千晶。
ガイア教徒13人幹部の1人だ。
彼女はいつもはブランド物の高い服を着ているのだが。
今日は戦争に出るために、高級そうなジャージを着ていた。
そんなジャージ姿に、腰に動きを制限しないようなホルスターで、規格外に大きい自動拳銃を一丁下げている。
彼女は婚約者と自分の家族の命を悪魔に捧げて、人類の範疇を超えた肉体を手に入れた超人であった。
先ほど軍用ライフルによる集中砲火を受けたが、別にそれは身に着けているジャージに防弾性能がある結果では無かった。
彼女の肉体がライフルの銃弾を弾くのである。
一応、自分の目を庇うような仕草をしているように見受けられるので、目には通じるのかもしれないが
問題はそれだけではない。
彼女にはその上、人外の怪力があった。
さらにその上で
彼女に掴みかかろうとした、あるいは剣で切り掛かろうとした者たちが
腕を取られて軽く投げ飛ばされていた。
力で投げているのではない。
明らかに、合気道である。
技のキレが見事過ぎて、素人の目でも一目瞭然であった。
元々、合気道の技は力が不要であると言われている。
それを人外の怪力で行うのである。
その結果、彼女の手の届く範囲内に足を踏み入れることが死を意味する状況を実現させたのだ。
本来は両手でやるような技を、彼女は片手で実現できる。
加えてそれで消耗することも無い。
死を産む永久機関と言ってよかった。
橘千晶は微笑む。
微笑みつつ、言う。
「……どうしたの? 正義と平等の戦士さん?」
テンプルナイトたちはそんな橘千晶のそんな挑発に怯むことなく立ち向かい。
斬り掛かり、掴み掛かっていくが
彼女はダッと踏み込み。
テンプルナイトの中に飛び込んで、片っ端から投げ飛ばし。
流れるような動きで、腰のホルスターから巨大な拳銃を抜き
倒れたテンプルナイトを射撃した。
大地を振るわせるような大きな銃声と共に、着弾。
それと同時に、テンプルナイトたちの身体が爆ぜる。
頭部に命中すれば頭部が完全に吹き飛び。
腕に当たれば腕が爆ぜ、ちぎれ飛ぶ。
弾丸の威力が桁違いだ。
これが彼女の愛銃「ドラム」
常識的な自動拳銃より二回りは大きな拳銃である。
装弾数は30発。
色はダークシルバー。
常人には撃てない銃である。
彼女以外の人間がこの銃を撃ったなら、反動で手首が折れ、二度と銃を握ることが出来ない身体になるであろう。
その威力はテンプルナイトの防護装備を全くの無意味なものにしている。
「メシア教のやつらは誤魔化しが好きなだけあって、要らない奴らばかりだわ!」
そして橘千晶は哄笑しながら虐殺を続けていた。
「ぐおおおおお!」
テンプルナイトたちが薙ぎ払われる。
短髪オールバックで、小柄ながら野性的なひとりのボクサーの青年の前に。
上半身は裸で、白い短パン姿。
手にはグローブを嵌めている。
その裸の上半身には、格闘家特有の、細い実用的な筋肉が搭載されている。
イメージとしては日本刀を思わせる肉体である。
「ただのボクサーではないのか……!」
青年はそんなテンプルナイトたちの言葉を無視し、両手でファイティングポーズをとりつつ、テンプルナイトに突っ込んでいく。
そしてラッシュを繰り出す。
そのパンチの射程が、腕の長さ以上になっていた。
およそ数メートル先に届くパンチ。
腕が伸びているわけではない。
彼の闘気が彼のパンチの射程を伸ばしているのだ。
これは彼がガイア教に入信した際、学び取った技である。
古代の戦士が習得していたという、魔術的な格闘技術だ、
彼はこのラッシュを「千烈突き」と名付けていた。
彼の名は「
彼がガイア教に入信したのは社会に絶望したからである。
彼は大阪の父子家庭に生まれた。
母親のことは知らない。父親曰く「お前を産んで死んだ」そうだ。
父親はただのサラリーマンで、真面目なことが取り柄の男であった。
父親は「真面目に、誠実に生きれば必ず幸せになれる」と言って彼を育てた。
彼もその言葉を受け入れ、天性の才能があったボクシングに高校生になったときに打ち込み、己を鍛え続けた。
だがそんなとき。
大破壊が起きた。
大破壊が起きた後すぐだ。
彼が外に日用品の確保に向かって帰って来たとき。
父親が死んでいた。
誰かに後ろから殴られて、頭を割られて死んでいたのだ。
そして胸を切り裂かれ、内臓の一部が奪われていた。
家の鍵はこじ開けられていなかった。
ということは、犯人は顔見知りである。
彼の父親は決して馬鹿ではない。
社会がこんなことになって、見ず知らずの人間相手に部屋のドアを開けたりするものか。
そう思ったとき。
彼は犯人捜しを開始した。
そして犯人はすぐに見つかった。
……彼らの住んでいるアパートの、下の階の住人であった。
母子家庭の家族で、父親は「女性1人で子供を育てつつ生きていくのは大変だろう」と気に掛けていた女だった。
女は自分の一人息子と、彼の父親の心臓を引き換えに悪魔と契約をしていた。
獅子の顔と大蛇の腕を持つ、悪魔であった。
女は「こんな時代になって、女一人でどう生きろというの!?」と彼に金切声を上げた。
……このことで彼は学んだ。
怒りのままに悪魔を拳で殴り殺し、女に「俺の前から消えろ。そのツラ二度と見せんな」と言った後。
彼は学んだのだ。
真面目に誠実に生きることは無意味であると。
もしそれが正しいのであれば、父親はそんな最期は迎えなかったはずだ。
そこから彼は力を求め、ガイア教に行きつき。
そして今、このような存在になった。
銃器や魔法を持って襲ってくる敵を、たった1人で蹴散らせる超人に。
……そんなガイア教最高幹部13人の数人がこの戦争に参加している。
彼らはまさに一騎当千。
ガイア教徒処刑ライダーも多数参加しているが、それらは数合わせと言って差し支えなかった。
そして形勢はガイア教徒たちに優勢であった。
そんな中、忍たちは真っ直ぐに突き進んだ。
この先の東京タワーにある、メシア教放送局に。
急がねばならない。
……それは一体なんのために?
それは……
この戦況を悲観したメシア教徒たちが、自分たちで放送局を破壊する前に。
そこを制圧してガイア教のものにするために、である。