真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第18話 聖女真月

 青地に白の十字架の紋章。

 

 それが何であるかを2人は知っていた。

 

(メシア教徒)

 

 メシア教。

 

 大破壊が起きる少し前に、日本で設立された新興宗教の名前だ。

 世界宗教をベースに教義が作られており、そこから「我々こそ最も進んで、最も正しい宗教である」と自称する、狂信的カルト宗教である。

 

 他の宗教を敵視しており、大破壊前には破防法の適用が検討されていた宗教団体だ。

 

 強引な勧誘。

 勧誘に応じない人間への嫌がらせ。

 そして教団に批判的な人間への重大な加害。

 

 何件か、教団が関わったのではないかと思われる殺人事件があった。

 その犯人と思しき人間が全て自殺したので全て迷宮入りとなったが。

 

 そんな集団であったから、破防法の適用が検討されたのだ。

 

 

 しかしその前に大破壊が起き

 

 大破壊後も、死に絶えずにこのように存在し続けている。

 

(メシア教徒が何故こんな場所に?)

 

 ここは地方である。

 

 メシア教徒が用事がある場所では無いだろう。

 

 では偶然なのだろうか?

 偶然遭遇しただけ?

 

 ……そんなわけはない。

 今は昔とは違うのだ。

 

 マズい、と思った。

 忍はバイクのスピードを上げた。

 

 今のうちに振り切る。

 囲まれたら詰んでしまう。 

 

 

 しかし。

 

 

 メシア教徒の装甲車は忍のバイクが速度を上げる前にさらに加速し、回り込んで来た。

 瞬く間に包囲網が築かれる。

 

 こうなったら停まるしかない。

 脱出不能だ。

 

 忍はギリッと歯を噛み締め、バイクを停めた。

 

 同時に停車する装甲車。

 

 走行車は停まると同時に。

 後ろのドアを開き、そこから白い制服に身を包んだ男たちが降りて来た。

 

 その全員が所謂突撃小銃を装備していた。

 

 

 男たちは装甲車から降り、忍たちを包囲し、その銃口を向けた。

 

 

 

「……一体何の用だ?」

 

 忍は気圧されるわけにはいかないと、銃口を向けてくる男たちに向けて強く言う。

 こいつらは確実に自分たちを狙っている。それは間違いない。

 

 だが、何故狙われるのかが分からない。

 

 困惑と動揺を見抜かれないように、彼は全力を出した。

 

 だが

 

「ええと、異教徒のおふたり」

 

 そこに。

 

 突撃小銃を向けてくる男たちの包囲網から

 

 素手の男が進み出て来た。

 

 がっしりした体格で。

 髪の色は金色。

 そして顔つきはゴツゴツとした男くさい顔であった。

 

 その男は他の男たちと同様にまるで軍服のような白い制服を身に着けていて。

 堂々としていて。

 

「失礼」

 

 そう言って手に持った細いライトを彼らに向けてくる。

 眩しい光に、2人は怯みそうになるが踏み留まる。

 

 そして

 

「ああ、間違いないですね。この(ひと)ですか」

 

 そう、嬉しそうに言って。

 男は

 

「ええと、その女性を渡していただけますか? あなたには用事ありませんので」

 

 

 

「断る」

 

 突然の真月の引き渡し要求。

 考えるまでも無かった。

 

 即座に忍は拒絶する。

 

 金髪のがっしりしたメシア教徒の男は困ったように微笑み

 

「困りましたねぇ。我々の温情を理解できないなら死んでいただくしか無いんですけど」

 

「やってみろ。死ぬのはお前たちだ」

 

 引くわけにはいかない。

 彼はバイクを降り、真月を背中に庇いながら前に出る。

 そんな彼の様子にメシア教徒の男は呆れたようにこう言った。

 

「これだけの銃があなたを狙ってますよ?」

 

 何を言ってるんだコイツは?

 そう言いたげなメシア教徒の男の言葉。

 

 それに真月は

 

「夫を撃てば貫通して私も死ぬかもしれないけど?」

 

 撃てるものなら撃ってみろ。

 そんな意味合いの言葉を投げ返す。

 

 おそらく自分は殺されない。

 その確信があったから出た真月の言葉。

 

 もし自分の生き死にがどうでもいいなら、バイクに乗っているときに攻撃を掛けているはずだから。

 

 なので真月は自分の命を盾に使う言葉を口にする。

 そして

 

「こんな時代だ。銃器を持った相手との交戦経験は何回もあるよ」

 

 忍は厳しい視線を向けつつ、妻の言葉に援護射撃をするようにそう言い放った。

 

 メシア教徒の男は彼らの言葉に

 

「……困りましたねぇ」

 

 ため息をついた。

 忍は

 

「……俺の奥さんに一体何の用だ? 一応訊いとく」

 

 そこで訊ねる。

 彼らの目的を。

 

 目的次第では戦う以外の解決法があるのかもしれない。

 可能性は低いとは思うが。

 

 だから訊いたのだ。

 

 そんな、彼の質問は

 

「我々は是非とも欲しいのです」

 

 とても穏やかな声だったが

 

「唯一なる神への生贄として」

 

 ……到底受け入れられない内容で返された。

 

 絶句するふたり。

 そこにそのメシア教徒の男は続けた。

 

 諭す口調で

 

「これは素晴らしいことなのです」

 

 それは、こんな内容だった。

 

 

 

 悪魔召喚には生贄が求められる。

 理由は、生き物の血液に多く含まれる物質「生体マグネタイト」が必要だからである。

 

 そしてそれは「より高位の存在」を呼び出す際、要求される量は比例して伸びていく。

 

 そのため高位存在ほど召喚することが困難になる。

 

 そして

 

 彼らメシア教団でも、召喚したくてたまらない存在がいる。。

 

 

 

 それは唯一神。

 とてつもなく強大な存在。

 様々な宗教で、至高の存在と語られし神。

 

 しかし。

 

 現実的にはそれは不可能であった。

 その理由は「要求されるマグネタイトの量が数億人分に匹敵する」から。

 数が、量が多過ぎる。

 

 生贄の数を用意することができないし、そのための祭壇など作りようがない。

 あまりにも高すぎる壁だ。

 

 けれども 

 

 そんな超えられない壁を超える方法が存在する。

 それは……

 

「聖女です」

 

 聖女。

 

 それは魔界で語り継がれている「生贄として最適な人間」

 

 女しかなり得ないので「聖女」と呼ばれるらしい。

 

 聖女は血液中に含有される生体マグネタイトの量がとてつもなく高い。

 たった1人で、世界中の人間を生贄に捧げたような効果がある。

 

 故に彼女が必要なのだ。

 

「佐上真月さん……あなたは聖女なんですよ」

 

 にこやかにそう告げるメシア教徒の男。

 

 彼は語った。

 

 我々は彼女が前に、その血で悪魔のあり得ない強化を引き起こしたという事実を知ったと。

 そんな奇跡も聖女の証であると。

 

(あのときか……)

 

 忍の脳裏に2年前のあのことが蘇る。

 

 真月が自分の血を瀕死のピクシーに飲ませ、その存在を妖精ピクシーから妖魔ヴァルキリーに変化させたことを。

 あのとき混乱したが、彼女の祈りが奇跡を起こしたんだと思って強引に納得していた。

 

 でも、それこそがその「聖女」の証だったなんて。

 

 あのときの……

 あのときの逃がしたチンピラたちが、真月のあの行為とその結果についてメシア教に伝えたのかもしれない。

 

 あのときに殺しておけば良かった……!

 彼はここに至って、あのときの決断を後悔した。

 

 そんな彼に、メシア教徒の男はニコニコしながら

 

 

 再び、呼び掛けてくる。

 

「是非、一緒に来てください。佐上真月さん」

 

 とても穏やかな声で

 

「あなた一人の犠牲で、この世に唯一神が降臨するのです」

 

 そんな、到底受け入れられない言葉を。

 

「きっと、素晴らしい世の中が訪れます!」

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