真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「魔王ラーヴァナが無敵化するのは、インドのみの話なんだ」
桜井直哉は腕を組んだまま、語り出す。
魔王ラーヴァナという悪魔の特殊性を。
ラーマーヤナが生まれたインドであれば、伝承の通りに魔王ラーヴァナは悪魔の攻撃を受け付けない無敵の魔王として召喚される。
だが、その他の地域ではただの強力な魔王なのだ。
討伐に物量作戦を取ることのできる、ただの上級悪魔なのだ。
(えっ、じゃあ)
真月はその言葉に
「それじゃだめじゃないですか」
口を出そうとしたとき。
その前に忍が口を出した。
桜井直哉の話が見えなくなり、さすがに混乱してきたから言わずにはいられなかったのだろうか?
ラーヴァナはインドでしか無敵化しない。
そしてここはインドではない。東京である。
意味がないではないか。
だったら何故ラーマーヤナの話を持ち出したのか?
それが分からない。
すると
「まあ、話は最後まで聞け。続きがある」
桜井直哉はそう一言断って、後を続けた。
「魔王ラーヴァナがインドで無敵化するのはラーマーヤナの生まれた土地がインドであるということと、ラーマーヤナがインドの物語で、インドでの知名度が違うことがあるな。そういう下地があるから、伝承通り無敵化する」
なるほど。
説得力のある理由である。
そこに住む人々の信仰心が、その土地で生まれた神魔の能力を底上げするということか。
桜井直哉は自分の話に皆がついて来ていることを目で確かめながら、さらに続ける。
「こういう事例は他にもあって、例えばギリシャ神話のネメアライオンの伝承などは、ギリシャ神話の知名度の高さゆえか、世界中どこで召喚しても、伝承通りネメアライオンは刃を通さない毛皮を備えている」
ギリシャ神話の知名度。
それも納得の理由である。
ゲームのモンスターとして、ギリシャ神話の怪物たちはあまりにも有名だ。
ミノタウロスやメデューサを知らぬものなどそうそういない。
神としてもゼウスやアポロン、ポセイドンを知らぬ者はほぼ居ないであろう。
「だから……」
そして。
そこから桜井直哉が出したアイディアは。
その場の誰もが考えもしなかったことであった。
それは……
「東京タワーを乗っ取って、テレビ放送でラーマーヤナのアニメを流して、ここ東京でのラーマーヤナの知名度を上げるんだ」
あまりにも斜め上。
異次元の発想である。
全員絶句した。
そこから
「……それで無敵化するの?」
硬直から一番に回復した橘千晶が訊ねた。
すると
「分からん……だが、絶対にしないという保証も無いわけだ」
桜井直哉がニヤア、と不敵に笑った。
……悪魔の知識がある人間にしてみれば。
ガイア教徒がそんなことをしてきた場合
魔王ラーヴァナが東京でも無敵化するのでは?
この可能性を考えるはずで。
もしそうなったとしても討伐できる作戦を立ててくるはずなのだ。
そうでないならば無能采配である。
分かっていたはずの可能性を無視し、結果的に当てが外れた場合に大打撃確定など、無能の極みではないか。
だから「無敵化するかもしれない」という疑念を持たせるだけで十分なのだ。
「……アニメはどうするの? アニメーターを探してきて、京アニでも占拠するの? 無理じゃない?」
橘千晶が口元に手を当てて、別の問題点の指摘。
アニメを作るのは大変である。
旧世界では生成AIにより、少ない人数でアニメを作ることは可能であった。
だが今はそんなものはない。
機材も、人も。
まず不可能であろう。
だが
「心配いらん。方法はある」
桜井直哉は全く問題ないと言い切る。
彼の言葉にその場の全員が再び注目した。
果たして、彼の考える方法とは?
それは……
「アニメの神を召喚する」
アニメの神。
そんなものが存在するとしたら
考えられるのは1人しかいない。
「えっと、手塚先生を召喚するんですか?」
いきなり忍が口を挟んだ。
ほとんど脊髄反射の勢いであった。
(この人、昔の漫画を勉強中に息抜きで読んでたのよね)
特にお気に入りで読んでいたのが手塚治虫の作品で。
彼女の夫はその話をときどきする。
だから真月はそんな夫の反応に、この人らしいと思った。
そしてその言葉で、桜井直哉もスイッチが入ったのか
「反応が早いな。……何が好きだった?」
そんなことを言い出した。
「ブラックジャックですね」
「基本だな。俺は火の鳥が好きだった」
「火の鳥は太陽編しか読んでません」
「太陽編か……」
手塚ファン同士のオタトークである。
真月は
「……そういう話は後にしてください」
放っておくと延々手塚作品の話をしそうだったので、強引に割り込んで止めさせる。
すると桜井直哉は咳払いをして
「失礼……手塚氏を召喚するには、場所の確保と触媒が要求される」
彼が言うには。
場所は……東京ディスティニーランド。
触媒は……手塚作品。
そして桜井直哉は
「手塚作品は俺と誰かもう1人で、国会図書館で探してくる」
「だから他で東京タワーの方の確保を頼む」
班分けについて提案する。
それに関しては誰も異論を唱えなかった。
そして真月と忍、高城少年は。
東京タワー制圧の方を担当することになった。
東京ディスティニーランドの方は、まずその2つを押さえてからである。