真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
ニュースキャスターの少女は今、敵意を燃やした視線でこちらを睨みつけている。
真月はそんな少女の視線に一切怯まずに
「私たち相手に戦いをはじめたのはあなたたち。知ったことではないわ」
そう一言で切って捨てた。
その言葉にニュースキャスターの少女は怒りをさらに燃やした。
「なんて邪悪な……! 悍ましい邪教徒め!」
そう吐き捨てるように言い、罵る。
真月はそれを鼻で嗤った。
「悍ましいのはあなたたち。布教で勧誘者の家族の絆を破壊して、メシアと非メシアで分断する。邪教徒はそちらの方よ」
真月はもう別にこの場に踏み込んだ時点で目的を果たしていると考えてはいるが、論破すると言った手前。
彼女が日頃から抱えていた、彼らの犯している悪行について指摘し、こき下ろした。
すると少女は
「他の家族もメシアになれば分断は生まれない! 分断を生んでいるのはメシア教を国教にしない旧世界の政府よ!」
目を吊り上げ、鋭く言い返して来た。
真月はそれを
「そういうのを他責って言うのよ。その汚い口を拭う癖をいい加減止めたら?」
即座にそう斬って捨てた。
汚い口という言葉に、少女はだいぶ強く引っかかったらしい。
「汚い口とはなによ! 真理からほど遠い醜く薄汚れた旧政府の飼い犬が!」
語気がさらに強くなり、罵る言葉もさらに強くなる。
彼女はそれをどこを吹く風と受け止めて
「そのまんま返してあげるわ。卑しいゴミみたいな宗教を信じている狂信者」
真月は淡々とそう言い返した。
その言葉で少女は怒りで口が利けなくなったようで、ぶるぶると震えだし
「言わせておけば……! お前のようなものが、世界を汚したのだ……!」
あまりの怒りで、言葉から品性が失われつつあると感じた。
そこで真月は
「……あなたたち、熱心に布教するわよね。普通の人に」
突然、話題を変えた。
その言葉に
「それがどうしたッ?」
少女は怒りに震える口調のままそう返す。
だが真月はその一切を無視し、そのまま極めて冷静な声で。
「……なんで?」
そう訊いた。
「メシア教を広めなければならないからよ! そんなこともわからないのかッ!?」
「それは答えじゃない。理由を聞いてるの」
そこで少女は真月の問いの意味に気づく。
メシア教を広めないといけないのは布教しなければならないからだ。
でもそれは手段であって理由ではない。
少なくとも……
普通に信仰を持つ人に、宗旨替えを迫る理由にはなりはしないのだ。
だから少女は
「メシア教が一番正しい宗教だからだ!」
そう言ったが。
真月は即座に
「宗教で正しいって何を根拠に決めるの?」
そう突っ込み。
そしてその数瞬後。
「……し、真に幸せになる方法を説いてるかどうかよッ!」
少女はそんな返しをした。
真月は心で溜息を吐いた。
(……ちょっとは考えたんだよね? 考えて、それかぁ……)
ハッキリと彼女はこの少女に呆れを感じていた。
呆れながら
彼女は思考をまとめ、頭の中で勝利への道筋を導き出した。
そしてそれに沿って、彼女は口を開く。
「その根拠だと、メシア教の正当性、他の宗教の信徒で真に幸せになった人間が居たら破綻するわよね?」
そう言って
続けて
「私、とーっても幸せ。大破壊が起きて、生活は苦しくなったところもあったけど、それでもずーっと幸せよ」
そう笑顔で言い、彼女は隣にいる夫の腕をとった。
その様子を見た少女は、嫌な笑みを浮かべる。
そして
「お前の幸せは妄想だ。それは獣欲。ケダモノと同じ。真の幸せでは無い。違うと言うなら根拠をあげてみろ。お前の大好きな!」
妄想。獣欲。
それは偽りで、ケダモノの幸せであると言い切った。
その言いように真月は怒りを覚えたが
予想はしていた。
だから、笑顔でこう言った。
「その通り。根拠は無いわね。でも、それはあなたも同じよね? 違う?」
真月の言葉に少女は息を呑んだ。
その真月の返しに対し、少女からの返事は無かった。
……そう。
人の幸せに明確な根拠なんてあるわけがない。
そんなのは全部心の問題だからだ。
明日死ぬと分かっている人間が、それまでの人生を振り返って。
悪くなかった、と微笑むのはあり得ることであるし。
巨万の富を抱えながら、それを騙し取られる恐怖から誰も信じられなくて苦しむのもあり得ることである。
つまり。
そこから来る答えは。
「だからね……」
真月はその答えを口にする。
それは
「あなたたちの宗教は、前提条件として他の宗教の人間が不幸であれと願ってる宗教なのね。そうでないと布教の正当性がなくなるものね」
……そういうことである。
異教徒が不幸でなければ論理が破綻するのだ。
メシア教を信じないと幸せになれないというならば。
他の宗教を信仰している人間は全て不幸である必要があるのだ。
真月のその言葉に少女は黙っている。
彼女はさらに言った。
「他人の不幸を願う宗教……これが卑しくなくてなんなの?」
トドメとなる一言を。
そこまで言い切って。
彼女は待った。
その反論を。
だがその言葉はついに返ってはこなかった。
メシア教の放送局のキャスターが、カメラの前でメシア教は卑しい宗教だと指摘され、完全論破された。
なんという屈辱だろうか。
カメラを構えていた人間たちも凍り付いていた。
すると……
「ところで……あなたはこのまま戦い続けて何をしようっていうの?」
少女は俯いたまま、突然話し始めた。
……精神の安定を失ってしまったのか?
真月はそれをちょっと疑った。
しかし
「別に戦い続けるつもりはないんだけど、目的を果たしたら、日常に還るし」
そう彼女は自分の未来を語る。
草薙の剣を取り戻したら。
自分は夫と平和な国で、平和な家庭を築く。
彼女が戦うのはそのためだ。
だがその言葉は
「その目的のために……ガイア教徒と手を組んで襲ってくるなんて悪魔より恐ろしい人ね」
そう断じられ。
同時に少女は顏を上げた。
その顔は……微笑んでいた。
目は全く笑っていなかったが。
そして彼女は
「あなたは主を降臨させるための大切な生贄の巫女……だった。でも、もはやこれまでね……」
そう言って。
同時にふわり……と宙に浮かび上がる。
「あなたはあまりにも害がある……もう、生かしてはおけない」
そしてそのままそう言ったとき。
真月たちの見ている前で、少女は変わっていく。
肌の色が青く変わり、髪の色が緑色に変わっていく。
腕が伸び、脚が縮んでいく。
そして着用していたメシア服が弾け飛び、大きな黄金の翼が6枚、現れる。
最後に、少女のものから男性のものに変化した右手に、1本のロングソードが握られて。
バサッ、と大きく羽ばたいたとき。
そこには、下半身の無い男性の上半身に、背中に黄金の翼を6枚備え、右手にロングソードを握る、1体の天使が居た。
天使はその瞳の無い緑色の目で真月を見下ろし、こう宣言する。
「これ以上神に逆らう事は……このカズフェルが許さん!」
……大天使カズフェルが現れた!