真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
第191話 品川緊急会議と都庁での誓い
ガイア教徒の放送を受けて。
品川大聖堂で緊急会議が始まった。
「だから言ったんですよ! 大変でも、取り返しがつかなくても、テレビを破壊するか、電源を落としておくべきだって! 絶対にあの放送、東京中に届いてます! テレビは渋谷と品川と新宿だけじゃないです! 池袋にもあるし、銀座にもある! それに、昔と違って、著作権もありませんしね! 平気で「壊れずに残ってる携帯型録画装置で番組を撮影して他人に見せる」奴が居るはずです! 居ないはずがない!」
焦ったテンプルナイトの1人がそう、叫び声で自分の意見をぶちまける。
でも、今頃遅いのだ。
その場の誰もが後悔していた。
そしてそれはクルセイダーロードも含まれていた。
(まさかこんな形でテレビを使って来るなんて……!)
全く想像していなかった。
だが、思えば。
ただのメシア教を侮辱するプロパガンダを流すためであったなら、あそこまで本気で東京タワーを取りに来たりはしなかっただろう。
そこまでの価値はないはずだから。
(甘かったです)
クルセイダーロードは心の底から自分の甘さを悔いた。
「どうします? 今から軍を編成して、すぐに攻めますか?」
別のテンプルナイトがそう意見を出す。
だが
「いや、それを狙っているのかもしれない。3日後ということ自体、嘘と言うか引っかけの可能性も……」
「急拵えの我々の軍隊を、すでに準備を整えた軍で迎え撃って、叩き潰す気なのかもしれない。遅すぎるのは論外だが、戦い方はしっかり詰めよう」
さらに別のテンプルナイトたちが意見を出す。
もっともな発言である。
急がなければならないが、負けた場合とてつもない損害を被る。
軍を動かすのなら、必ず勝てる布陣にしなければならない。
「……そうですね……」
クルセイダーロードも同意する。
テンプルナイトたちの目が、全て彼女に集中した。
そんな中、彼女は
「魔王ラーヴァナは私が討ちます。皆は他を頼みます」
その瞬間。
ざわっ。
空気が乱れる。
彼女は続けた。
その覚悟を
「私が変身せずに草薙の剣を振るって挑めば、私が魔王ラーヴァナに負ける要素はゼロです……何故なら、相手はこちらにダメージを与えることが不可能で、かつ私は相手を殺すことが出来るのです」
その言葉を聞いたとき。
テンプルナイトたちに希望の花が咲いた。
「魔王ラーヴァナが他の悪魔に挑んだ場合と逆の構図だ!」
「絶対に負けない! 皆、恐れるな!」
勇ましい言葉が湧いた。
しかし。
クルセイダーロードにはある懸念があった。
それは……
(佐上真月)
あの女。
生贄の巫女だ。
あの女の仲魔である、魔王マーラと天津神イザナミ。
この2つの悪魔が人間特攻であり、彼女特攻なのである。
マーラの催眠魔法は、クルセイダーロードは変身しないと耐えられない。
そしてイザナミの呪殺魔法は、致命的な呪殺の罠を仕掛けることが可能だ。
不特定多数を相手にする罠は、草薙の剣の加護の対象外なのだ。
このうち。
イザナミの魔法については対抗策があった。
「……申し訳ありませんが、私はここで退出します。あとで決まったことをレポートに纏めて教えてください」
クルセイダーロードは席を立った。
今の彼女の仕事は、この場で椅子を温めていることではない。
「クルセイダーロード様……?」
「どこに行かれるのですか?」
退出する彼女に、声を掛けてくるテンプルナイトたち。
そんな仲間たちに向けて彼女は
「……ジーザスアーマーの封印を解きます。男性用防具と言われていますが、主は差別をしないはずです」
「え……? あのメシアのための鎧を、ですか……?」
ジーザスアーマーとは、メシア教の教祖が主に命じられて創り出した究極の神の鎧である。
いつか現れるメシアに与えるために、メシア教の魔術部門、科学部門が総力を結集して創り出したものだ。
ジーザスアーマーなら、あのイザナミの強力な呪殺魔法の罠も防ぐはず。
その確信が、彼女にはあった。
「……分かりました」
「決めたことは後でご報告致します」
そして彼女が品川大聖堂の会議室を出ていくとき。
その背中に、テンプルナイトたちの言葉が掛けられた。
それが彼女の勇気と覚悟を確かなものにする。
★★★(主人公視点、都庁前)
明日、全てが決定する。
忍と真月は都庁の前に居た。
ガイア教徒たちは、現在都庁内部で行われている魔王ラーヴァナ召喚の儀式を警備するため、周囲をずっと警戒している。
ちなみに忍は、その儀式が一体どんなものであるのかは聞いていない。
わざと聞かなかったのだ。
それは……
魔王ラーヴァナを召喚しないことには、この作戦が成り立たないからである。
ガイア教徒というものは……
奴隷を平気で使うし、役に立たなければかつての同志も平気で奴隷に堕とす人間たちだ。
しかも要らなくなったら躊躇い無く放り出し、その結果死んでも全く気にしない。
ラーヴァナの召喚で一体何が行われているか、想像もできないし。
あまりしたくもない。
でも、召喚が成されないとふたりの目的……日本復活は果たせない。
だから聞かなかった。
結論が先に決まっている以上、聞いても仕方ない。
卑劣かもしれないが、彼はそう決めたのだった。
そして彼は妻にも「絶対にラーヴァナの召喚方法は確認するな」と命じた。
全ての責任を1人で背負うために。
「ねぇ」
忍の隣で座っている真月が、彼に話しかけてきた。
2人並んで座っている。
都庁の入口が見える道路沿いに。
生き残ってる植え込みの木があったので、根元に並んで腰かけていた。
「……ん、何?」
そちらを見ると、彼女はお腹に手を当てて
「……新宿に入って、あとちょっとで5週間過ぎると思うんだよね」
(……ああ、その話……)
色々と気がふさぎ込むようなことが続いた。
だから、そういう話は嬉しいかもしれない。
真月は彼に囁いた。
「……あなたに抱かれて、ものすごく興奮したから、男の子の疑いが強いと思うんだよね。もし、出来ていたら」
恥ずかしそうに。
その言葉に気を良くする忍。
そんな彼に
「そこで問題がひとつ」
真月は問題を提示した。
「問題?」
その問題とは?
それは……
「息子の名前をどうするか問題」
子供の命名についての問題だ。
彼女は語る。
「定番だと、父親の名前から1字取るのがあるあるだけどさ……私の夫、名前1文字。取りようがない。困った。さて……どうしよう?」
「なるほど」
漢字1文字だから忍一択。
その下に別の漢字をつけると違和感を感じるということか。
彼は妻の言葉に共感を示した。
そこで
「忍のお父様の名前って何だったっけ?」
そんな質問が。
彼は答えた。
「佐上刃太郎」
その言葉に真月は得心した顔をする。
「……ああ、だからお父様はあなたのお父様を”ジン”って呼んでたのね」
彼女の父と忍の父は親友の間柄で。
彼女たちはその筋で引き合わされたのだ。
だから思い出は沢山ある。
彼はそこに想いを馳せながら
「ウチの家は、発祥は良く分からないんだけど、長男の名前に”刃”の字を入れるのが習わしでさ」
自分の家の伝統について口にした。
代々続いて来たことについてを。
そして自分の名前のルーツについても話す。
「第二次世界大戦が終わったときに、自分は若者に過剰に命を捨てることを美徳と教え過ぎたんじゃないかって、当時の……ひい爺ちゃんが思ったらしいんだよ」
「……で、思い詰めて一時期空手道場を畳もうかと思ったらしい。そういう逸話を親父は爺ちゃんから聞いてて」
「だったら、俺の代から子供の名前に刃の下に心を入れて、忍にしようって……」
夫の家でかつてあった、そんな葛藤と決断の物語。
それを聞いて真月は
「なるほど……」
真剣に腕を組んで考え。
そして
「……そうすると……どうしよう……正直……」
ブツブツ言ってさらに考えている。
そしてしばらくして
「……正直さ、あなたの名前って1文字で完結してる感強すぎて、次に繋がらないと思うのよね。悪いけど」
彼女は自分の夫の名前にダメ出しをした。
そして続けて提案する。
「なので……お義父さんの志を無にして申し訳ないけど、忍の次の代からは長男に心の字を入れるってことでどうでしょ?」
そう、人差し指を立てながら。
……それを聞いて忍は……
「例えば……
そう、候補の提案をした。
その答えに
「そうそう」
真月は嬉しそうに笑った。
「月心……良い名前ね。絶対に平和な世界を取り戻して、一緒に育てようね」
自分のおなかに触れながらの彼女の言葉。
彼女のその言葉に
「必ず2人とも生きて帰る。そして、絶対に勝つ」
「……うん」
そう、ふたりは。
そんな譲れない想いを言葉にした。