真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
ヴィシュヌは死蝿の葬列を避けられなかった。
そのまま数えきれないほどの蠅の渦に呑み込まれる。
「なんだとッ!? おのれッ!」
呑み込まれる寸前のヴィシュヌの言葉。
(……終わりよ……!)
夏子はそう思っていた。
しかし
「フハハハハハッ!」
ヴィシュヌの笑い声がその場に響く。
無数の蠅たちに覆われながら。
その姿は見えない.
しかし。
その声には、何の恐怖も無かった。
その声は勝ち誇っていた。
「……これは呪殺魔法だなッ!? この我にそのようなものが通じるはずが無かろう!」
(……なんですって……?)
夏子はヴィシュヌの言葉に驚愕する。
死蠅の葬列は、彼女の奥の手だったのだ。
これが決定打にならないのであれば……
「うっとおしいだけだッ! 見ていろ、今すぐ我が天罰を貴様に……」
蠅に包まれているヴィシュヌは、そのまま天罰の行使を宣言する。
目視出来なくても当てられると言うのだろうか……?
だが
「いや、それで十分だ」
そのときだった。
地上の桃井明が強い眼光を向けていた。
上空で戦う夏子たちに。
「コウ! やれッ!」
「承知ダッ!」
桃井明の声に合わせて、霊獣コウが激しい炎を吐き出す。
それは無数の蠅に包み込まれたヴィシュヌごと覆い尽くして焼き尽くした。
「ギャアアアアアア!」
ヴィシュヌの絶叫。
だが、目隠しされているせいで、どこからその猛烈な火炎の吐息が来たのかが分からないのか
「お……おのれ! 不浄なるモノたちめ……!」
その場を動けないらしい。
(コウのファイアブレスが嵌ってる……!)
これで決められるかもしれない。
夏子がそう思ったとき。
「ヴィシュヌ殿!」
地上から、よく通る声がした。
するとそこには……
丸い眼鏡を掛けた糸目の中年男性テンプルナイトがいた。
長髪のオールバック、それを後ろでおさげにしてる姿の。
クルセイダー・ドッペルゲンガーはヴィシュヌが窮地に陥っていることに切羽詰まった感情を抱いていた。
魔神に属する大悪魔を倒されてしまえば、こちらの戦力が大幅に削られる。
なんとしてでも避けなければならない。
現在までのところ、戦況は拮抗していた。
処刑ライダーの強さは大したことは無かった。
こちらのテンプルナイトたちだけでも十分対処できる程度の連中で、クルセイダーをぶつければこっちの圧勝である。
しかし。
ガイア教徒の13人幹部があまりにも強すぎた。
「ほらほらどうしたの正義の使者なんでしょあなたたちっ!?」
向こうでは黒ジャージ姿の凶悪な美女・
そしてそのまた向こうでは、
「原初の混沌ッ」
黒いチャイナドレスを身に纏ったショートカットの美女・
その直後に闇の波動を放射して周囲全てのテンプルナイトたちを倒している。
(これでは実質こちらの戦力で通用するのはハニエル様とヴィシュヌ殿のみッ……!)
現在は拮抗しているように見えるが、この一角を堕とされると一気に崩れるだろう。
数はこっちが勝っているように見えるが、実質的にメシア教徒軍は壁が薄いのだ。
手を打たねばならない。
彼は頭を巡らせた。
(悪魔人間……!)
そこでふと、品川大聖堂で出会ったあの……
佐上真月の夫である、佐上忍のことを彼は思い出す。
(……そうだ……悪魔人間!)
人の可能性と悪魔の力を併せ持つ悪魔人間は、究極合体魔法を使うことができる。
神に匹敵する究極の魔法を。
なることが恐ろしく難しいわけだが。
(魔神ヴィシュヌ……ラーマーヤナ……転生……)
そこで彼は閃くものがあった。
(だったら……試す価値がある!)
「ヴィシュヌ殿!」
男は魔神に呼び掛ける。
目を限界まで見開きながら。
四白眼の瞳が露わになる。
男は続ける。
「私の肉体を捧げます! あなたは人間に転生する能力がある! 私の肉体を使用し、人間になって下さい! そしてその後、ハニエル様との合体に合意して下さい! そうすれば……」
……その後続いた言葉に、その場に居たガイア教の勢力は全て戦慄した。
それは――
「あなたなら悪魔人間に必ずなれる!」
(……何だって? 正気か……? あいつ……?)
桃井明は、自分が今聞いたことが信じられなかった。
ヴィシュヌを自分の肉体に転生させるなんて。
身体を明け渡すのだから、まず間違いなく死ぬ。
いや、それだけではない。
自分の魂が消滅する可能性すらある。
ヴィシュヌの魂を受け入れたときに砕けてしまうのだ。
それでもやるというのか。
あまりのことに、桃井明の思考が一瞬止まる。
それが……
「……良く言った。ありがたく使わせて貰おう」
致命的なミスであった。
黒い蠅の群れに埋もれているヴィシュヌの声が響き。
次の瞬間、そこから輝く球が出現し、あのメシア教徒の男に直進していく。
そして
「素晴らしい献身です。神はお喜びになるでしょう」
ハニエルが羽ばたき、同じ男に直進する。
(……マズイ!)
そこで。
桃井明はようやく金縛りが解け、3つの存在の合体が始まる前に、メシア教徒の男の首を斬り落とそうと突進した。
だが……
間に合わなかった。
輝く球は男の身体に直撃し、融合。
そこにハニエルが舞い降りる。
……その瞬間、眩い輝きが辺りを包んだ。
その瞬間、時間が止まった気がした。
それほどの光。
そしてその光が消えたとき。
そこに立っていたのは……
赤い6枚の翼を背中に持つ純白の仮面の戦士。
その仮面は騎士鎧の兜の
その全身を覆うのは白く薄い
見るからに格闘に向いている。
そいつは、自分の身体を見下ろしながら
言った。
「身を捧げし神の戦士よ……魂砕けようと、お前の献身は神が褒めてくださるぞ……喜ぶがいい」
そして純白の戦士は左手を振った。
その手の中に、純白の大弓が出現する。
そして羽ばたき、舞い上がる。
宙を舞いながら、騎士は弓を引き絞る。
きりり、と。
その手の中に、1本の燃え上がる矢が出現する。
「……今の時代ではこの状態の悪魔人間を、”仮面ライダー”と呼んでいるらしいな」
そして、そいつはこう続けた。
「ならば我はこう名乗ろうか……」
その名乗りは
「……仮面ライダーメシア!」