真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
都庁最上階・大ホール。
「グオオオオ!」
鎧を着た少女と斬り結んでいる青い悪魔が苦鳴をあげた。
魔王ラーヴァナである。
仏像の阿修羅によく似た、三面六臂の青い鬼神だ。
髪の毛は緑色で、その3つの顔は鬼そのもの。
歯は牙で、目は深紅に燃えている。
6本の腕にはそれぞれ片刃の長剣が握られ、そのうちの1本はたった今、鎧を着た少女……クルセイダーロードに切断された。
「この我が手も足も出んとは……」
ラーヴァナは6本から5本になった腕で鉈のような刃を持つ片刃の長剣を構えつつ
「何故だ、何故なのだ……?」
自身をこの少女が追い込みつつあることに戸惑い
「その奇妙な鎧のチカラか……?」
そのみっつの口で、代わる代わる言葉を吐き出した。
人間相手では無敵では無いものの、この戦況はおかしいと。
そういう気持ちなのだろうか?
……その奇妙な鎧……。
クルセイダーロードが着用している鎧は。
メシア教団の至宝「ジーザスアーマー」である。
本来はメシアのために用意された特殊な神聖防具だ。
そのデザインは雄々しく、そして神聖なもので。
背中に天使の翼の様な飾り。
そして肘と膝に獅子の顔の彫刻。
胸部装甲は逞しい男性を意識したもの。
その全体的な光沢はプラチナを思わせ、着装した者がメシアであることを視覚的にも理解させることができる意匠の神の鎧だ。
しかし……
この防具は、本来男性しか着装を許されない。
メシアは男であるからだ。
女であるクルセイダーロードが着装することは出来なかった。
そのままでは。
最初は、さらしを巻けば多少窮屈なだけで着装はできる、と彼女は思っていた。
……しかし、そういう問題では無かった。
無理矢理着てみたら……とても重かったのだ。
鎧が言っていた。
お前にこの鎧を着る資格はない、と。
そこで彼女は一考し、特別製の筋力増強剤を注射した。
精神が凶暴化するという副作用があったが、信仰心で耐えてみせる形で。
そして再着装。
しかし……無理だった。
鎧はより重くなり、彼女の着装を拒否した。
彼女は再度思考し、次に出した考えは……男性ホルモンの注射。
相当量身体に入れたら……どうだろうか?
やってみた。
結果は……同じだった。
(主は私にこの鎧を着るなと仰るのですか……?)
その結果に彼女は一瞬神を恨みそうになり、その一瞬の自分を恥じる。
(望み通りにならない原因を神に転嫁するなど……穢れた旧世界の人間と同じです……!)
そして彼女は
最終手段として
本来は断種の刑に処された女の重罪人に注射する特別製である。
一度注射したら回復不能。
そういう薬だ。
するとどうだろう……
着装できたのだ。
ようは、結局。
この鎧は女には着れない鎧だったのだ。
女を辞めれば着れるのである。
(やった! やりました!)
彼女は戦いながら歓喜していた。
こう、思いながら。
私は女を完全に捨てる決断をすることで最高の戦士に……いや、メシアになれた。
ジーザスアーマーを身に着けた本物のメシアに。
彼女は剣を振るいながら思った。
剣を振るう力がいくらでも湧いてくると。
それはこの鎧に込められた神の力だけでは無いはずである。
今の彼女のその斬撃の鋭さと速さは凄まじい。
ラーヴァナの腕を軽々と斬り飛ばし、魔王ラーヴァナを確実に追い込んでいる実感を持ったとき。
彼女は自分の力に酔いしれ、喉の奥から湧き上がる喜びの声をそのまま解放した。
「最高の気分です……!」
その声は喜びと……
狂気に満ちていた。
「ああ……この戦いの場、都庁最上階ホール……。ちょうど天井が吹き飛ばされて、天が見えるでは無いですか……!」
そこから差し込む陽光が自分を祝福しているように感じられ
「アハハハハッ! 嬉しい! 嬉しい!」
彼女は幸福そうに笑いながら剣を振るう。
とても凶悪な斬撃を
その笑顔は年相応の少女のものであったが
「あなたを倒した後は表のガイア教徒を皆殺しにしてやります。ズタズタに切り刻んで、理想社会到来の邪魔をしたことを償わせます」
口にしていることは狂気に溢れていた。
「そしてその次は――」
夢を語るクルセイダーロード。
彼女はその頭の中で、人の首を刎ねていた。
それはメシア教の気高い服を身に着けていない人間たちで。
様々な人種、民族、年齢。
老若男女の区別なく。
男も女も、少年少女も、赤ん坊に至るまで
泣いて彼女に慈悲を請うた。
だが彼女は許さない。
彼らは罪を重ね過ぎた。
メシア教を信仰しないという罪を
卑しい不完全な欠陥品のくだらぬ宗教を信仰した罪は重い。
彼女はそこに何の疑いも持っていなかった。
だから
「この世のメシア教を信仰しない邪教徒共を全て地獄に送ってやりましょう!」
その言葉がごく自然に言えた。
そのときだった。
「そんなことはさせないわ!」
……突如。
彼女にも聞き覚えのある声が響いた。
いや、忘れようもない声であった。
(この女の声は……!)
「佐上真月ィィィィィ!!」
クルセイダーロードの表情が変わった。
穏やかで上品な少女のものから
血走った眼を持つ、少女の姿をした人外の顔に
その顔で彼女は目を向けた。
そこにいたのは――
魔王マーラと、悪魔人間に変身した夫を引き連れた長髪の女……佐上真月。
メシア教に役立つ栄誉をドブに捨てたばかりか、メシア教を攻撃しはじめた悪魔の女。
その穢れた女は厳しい表情を浮かべて、クルセイダーロードに強い視線を向けていた。
その視線はクルセイダーロードに激しい感情を巻き起こす。
灼熱の炎のような、荒れ狂う感情を。
「お前だけは許しません! 罪深い邪悪な女ァァァァ! 生贄の名誉ももはや無用! お前に生きる資格はなァァァァい!」