真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
そして一方。
都庁の外では
「……畜生なんて強さだ」
桃井明は焦っていた。
仮面ライダーメシアが暴れ回っていたのだ。
「ハッハッハッハー!」
地上で仁王立ちし。
高笑いしつつ仮面ライダーメシアは弓を放つ。
その矢はたった1本であったが……
「うお!」
「ぐげ!」
「びあ!」
放たれた矢は複数の処刑ライダーたちを貫いていく。
胸を貫き、そのまま背中に抜けるのだ。
それも直進では無い。
蛇のように曲がりくねった軌道でだ。
そしてその矢は橘千晶に向かっていき
「チイ!」
彼女は舌打ちし、その矢を躱しざま左手で掴み取る。
仮面ライダーメシアの矢はそれでも止まらず、軌道を変えて橘千晶の心臓を目指そうとなおも突き進もうとする。
橘千晶は再度舌打ちをし、右手の化け物拳銃ドラムをホルスターに納め、両手で矢を握りして。
全力を込めてへし折る。
その瞬間、矢は塵に変わり消えて行った。
それを見届け脂汗を流す彼女。
彼女ほどの魔人であっても、焦りを齎す恐ろしい一撃……!
(何て恐ろしい奴だ)
人間転生し勇者になったヴィシュヌに、大天使ハニエルが合体し生まれた仮面ライダー。
仮面ライダーは総合力。
それは散々、佐上忍と戦ったとき思い知らされた。
「やあああああああ!」
桃井夏子=仮面ライダーベルゼブブが挑みかかっていく。
そんな勇ましい妻の姿に彼は
誇らしさより、焦りと恐怖を感じていた。
(駄目だ夏子……! そいつ相手に1人で挑んでは駄目だ……!)
夏子は仮面ライダーメシア相手に激しくラッシュを仕掛けていた。
手本通りの綺麗なラッシュだった。
パンチ左右2発にミドルキック。
蹴り込み。
そしてローキック。
十分に様になっている。
だが
それだけだ。
全く仮面ライダーメシアに通用していない。
「お前は女のようだが、何故悪魔と合体した!?」
仮面ライダーメシアは愉し気にそう問う。
手を一切出さずに。
余裕綽々である。
夏子は
「大切な家族を守るためッ!」
余裕のなさが隠せない、そんな声で叫ぶように言う。
その答えを聞き仮面ライダーメシアは
「ならば去れ。去るなら助けてやる」
極めて落ち着いた声音で、そう返した。
去れ。
逃げろ。
それは……
「できるわけないでしょ!」
夏子はその言葉とともに、廻し蹴りを繰り出した。
だがその蹴りは仮面ライダーメシアの羽ばたきと跳躍により、跳んで回避された。
「ならばその先に待つ運命を受け入れるがいい!」
その言葉には何の迷いも無かった。
慈悲を受け入れないのであればもはや容赦しない。
全力で叩き潰し、死を与えるという。
仮面ライダーメシアは宙を舞いつつ、その大弓を大きく構え
引き絞り――
「覚悟せよ」
その言葉の後。
死刑宣告そのものの声で
「究極合体魔法ォォォ!」
その、この場を揺るがすような声と共に
魔力が高まっていく。
その高まった魔力で、空間が歪んでいく
夏子は動けなかった。
あまりのその力の強大さに気圧されていた。
そのとき
「夏子ッ!」
桃井明の鋭い声で夏子は我に返った。
「明さんッ!」
だが
「天罰の矢ァ!」
少し遅かった。
仮面ライダーメシアの弓は放たれ、凄まじい魔力が乗せられた矢……いや、魔力の塊が撃ち出され、それが夏子に向かって飛んで行く。
夏子は羽根を広げた。
そして飛翔する。
当たれば終わる。
それを悟ったのだ。
しかし
仮面ライダーメシアの矢は、追尾する。
夏子=仮面ライダーベルゼブブは全速力で
だが、天罰の矢を振り切れない。
それの距離はグングン詰まっていき
そして
致命の瞬間だった。
矢と夏子の間に霊獣コウが立ち塞がりその身で矢を受け止めた。
「コウ……!」
夏子は悲壮な声を上げる。
夫の仲魔の虎の子であるこの悪魔の献身に、彼女は感謝と申し訳なさで
仮面の中で涙した。
「……桃井夏子ヨ……サラバダ」
コウはそう、声を絞り出し。
次の瞬間
大爆発を起こし、四散した。
今……
桃井明の右腕を務めた、凶悪な霊獣が死んだのだ。
「コウーっ!」
桃井明が吼えた。
自分の仲魔が彼の妻を庇って死んだ。
冷静でいられるわけがなかった。
それは彼だけではなかった。
「ヌオオオオオ!」
地上の軍神シユウが仮面ライダーメシアに向けて斧、刀、槍を産み出し投擲する。
その6つの腕で唸りをあげて次々と投げ放つ。
だがそれは仮面ライダーメシアには当たらず。
「次はお前だ……覚悟せよ」
投擲物を回避しながら、次の天罰の矢の発射準備へと入っていく。
そのときだった。
その背中に、妖獣キュウキが躍りかかった。
「おおおお!?」
キュウキは仮面ライダーメシアの弓に噛みつき究極合体魔法の発動を阻止しようとする。
弓を押さえれば、天罰の矢は阻止できる。
その思いか。
しかし
「うっとおしいわっ! 雑魚悪魔めっ!」
仮面ライダーメシアの弓が中央で分離した。
分離した弓は、2つの短剣になり
短剣が閃き
怒涛の斬撃がキュウキに叩き込まれる。
左右の手に握った片刃のナイフがキュウキをズタズタに引き裂いた。
「グオオオオオ……!」
その身を犠牲に、究極合体魔法の発動を阻止したキュウキは、消える瞬間
後は頼みます、と言ったように思えた。
霊獣コウ、妖獣キュウキ。
夫の仲魔が身体を張ってあの仮面ライダーに立ち向かい
散っていった。
(だったら)
自分も覚悟を決めなければだめだ。
今が、そのときなのだ。
(コウ……キュウキ……! あなたたちの犠牲、無駄にはしない!)
その思いと共に。
彼女は力の限り叫んだ。
「究極合体魔法ォ!」
その瞬間。
彼女の周囲に吹雪が巻き起こった。
彼女の姿を覆い隠す、極寒の大地で吹く吹雪のような――