真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
クルセイダーロードが炎の中に消えた後。
「持っておいてくれ」
佐上忍は草薙の剣の鞘を真月に渡した。
「ちょっと、外を収めてくる」
忍はそう言って、背中の翼を広げた。
まだ外では戦いが続いているはず。
これ以上の戦いは無意味だ。
止めて来なければならない。
そんな自分の夫に
「行ってらっしゃい」
真月は手を振る。
天井の穴から外に出ていくため、上へと飛翔していく夫に向かって。
その様子はまるっきり、夫を送り出す妻の振る舞いであった。
「じゃ、後よろしく。キミが外に出る頃には、外の戦争は終ってると思うよ」
忍は途中で1度振り返りそう言って、その後彼は天井の穴から飛び出していった。
……後に残されたのは。
真月と魔王ラーヴァナのみ。
魔王マーラは用が済んだのですでに引っ込めた。
ラーヴァナはただ居るだけである。
「ええと、何かして欲しいことは?」
一応真月はそう訊ねたが、切り飛ばされた腕を治して欲しいと言われたので、仲魔を呼び出しその通りにし。
やることが速攻なくなった。
あとはもうやることは無い。
外に出るだけであるが。
夫の気遣いから考えると、あまり急いで出るべきではない。
外の戦いが完全に終わるまで待つべきだ。
そのためには……
(出る前に、
忍はクルセイダーロードから草薙の剣を奪い取る際、ハルペーを投げ捨てていたのだ。
どこに捨てたか訊くと。
草薙の剣を奪い取ることに夢中で、どこにハルペーを捨てたか分からないと彼は言った。
まぁ、仕方ないことではあるのだが。
一か八か、生きるか死ぬかの戦いだったのだ。
気にしている余裕は無いだろう。
だから今、彼女の手元にあの魔剣は無かった。
ただ……
元々、倒したガイア教徒幹部・下津名からの鹵獲品である。
正直あまり、手元に置いておきたくない魔剣だ。。
そういうものだから、正直見つからなくても構わないという思いもあった。
それに、これから必要にはならないはずのものでもある。
これから彼らはそういう世界を作るのだ。
でも。
(一応探すかぁ)
何もしないのは辛いからだ。
そして。
彼女は床を舐める様に目で確認して回っていた。
すると当然だが……
否応にも、仮面ライダーサタンだった少女……クルセイダーロードが身に着けていた鎧……ジーザスアーマーが目に入った。
彼女の肉体は炎の中に消えてしまった。
しかし。
彼女の身に着けていた鎧だけはこうしてまだ残っている。
(あの子は……)
真月は思い返していた。
クルセイダーロードが言っていたことを。
彼女は大破壊前の日本の、法の不備が原因でメシア教に入信したと言っていた。
あまりにも醜い罪を犯した自分の母親が相応の罰を受けず、のうのうと平気な顔で生きながらえる社会に絶望したと言っていた。
あくまで「他人の話」を装っていたが、そんなはずはない。
あれはあの少女の過去の話だったのだ。
……醜い社会、邪悪な国家。
彼女の日本への評はそうなっていた。
真月は思った。
それについてはそれでいいと。
彼女にとってはそうだったのだ。
それを間違いであるとは言えなかった。
しかし
(私はあの社会が良かったの。もう一回、同じ社会で暮らしたいの……)
ほぼ無制限の自由があり、努力次第でいくらでも可能性を広げることができる。
それが彼女にとっての日本の評で。
彼女はその世界を愛していた。
だから
(悪いけど……死んで頂戴)
彼女は遺された鎧を見つめながら。
そう心で呟いた。
自分は自分の未来のために、ひとりの少女の理想を叩き潰した。
その事実を忘れないために。
そのときだった。
ぐるん、と何かが頭の中でひっくり返った感覚が彼女に急に来た。
それで急激に気持ち悪くなってしまい
ホールを飛び出し、近場のトイレに駆け込んで。
便器の蓋を開け、水が干上がり無くなっている便器の中に
「おえええええええ!!」
胃の中のものを吐き出した。
水が干上がっているのは、誰もこのトイレを使っていないからで。
そして今、水道が動いているか怪しいから
最悪、流すことが出来ずこのままかもしれない。
後始末はどうしようか……?
そんなことが頭を過った。
しかし、それよりも……
(私、あの人の子どもを身籠ったのかもしれない……)
その可能性を考えた。
それはものすごく幸せな気持ちになると同時に。
自分たちの幸せのために人を1人殺めた直後に、新しい命を身籠る……
そこにとても深い業のようなものを彼女は感じていた。
「クルセイダーロードは俺が討ち取った! ラーヴァナも健在だ!」
忍は外に飛び出して、草薙の剣を掲げつつ大音量で宣言した。
その声にメシア教徒たちの視線が一斉に集中する。
そして
「殺せええええええ!」
「敵の仮面ライダーだぁぁぁぁ!」
忍の言葉を無視して。
全方向から銃弾や魔法が飛んでくる。
しかし忍は、それをあえて避けなかった。
全部直撃させ……
無傷を見せつけた。
それが、クルセイダーロードの戦死を彼らに分からせる一番良い方法だからだ。
「き、効いていないッ!?」
「ということは、まさかクルセイダーロード様は……!」
メシア教徒で事情を理解できる者が、絶望の声を上げる。
なので忍は
「軍を引くなら今のうちだ! ラーヴァナを倒せる可能性のあるお前ら唯一の勇者が、俺に倒されたんだからな!」
その絶望を決定づけることを言う。
さらに続けてこう言った。
「ラーヴァナは無傷では無い! ダメージを負っている! すぐには品川を攻めはしない! もう一度、戻って作戦を練り直せ!」
彼はメシア教徒の軍をこの場で全滅させるのは正直下策だと思っていたのだ。
戦争の話でよく聞く話だ。
負けたら全て終わると突きつけられた相手を、完全敗北させるのは凄まじい被害が出ると。
だから必ず逃げ道を用意する。
被害を覚悟する意志が無いのであるならば。
あとは……
今後、ガイア教徒を制御可能な勢力で止めておくために、ガイア教徒の敵であるメシア教徒はある程度居た方が良いという思いもあった。
彼ら今後の日本人のためには。