真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「謁見……」
「謁見って……」
その言葉に忍と真月は硬直した。
彼ら2人は自分たちの仕事はここで終わりだと思っていたのだ。
それなのに、謁見。
「……陛下とですか?」
真月は思わず、そんなマヌケな質問をしてしまった。
この国では普通、陛下以外に謁見という言葉は使わない。
だがライドウはそんなふたりの動揺を理解しているのか
彼女の問いの間抜けさに呆れを示したりはせず
「そうだ。神器の
……そんなことを。
奉還とは、帝にモノを返すことを指す言葉である。
つまりライドウは
「帝に返すべきとても重大な物品を、あなたから返しておいてください、と上司に丸投げするのは帝に対して不敬と思わないか?」
そう言ったのだ。
……言われてみれば
(確かに)
(子供の又貸しじゃないんだからな)
神器なんて重大なものを、上司とはいえ他人に手渡す。
あり得ないだろう。
そんな軽いものではないのだ。
手渡すことがあるとすれば、神器の正統所有者である帝その人だけであろう。
真月は思わず、今は夫の手の中にある鞘に納められた草薙の剣を見てしまった。
(これを……陛下に返すのか……直接……)
そしてそのことを噛み締め。
さすがに緊張で足が震えた。
クルセイダーロードと対峙したときも。
ガイア教徒の幹部と向き合ったときも。
……ここまで緊張したことはなかった。
「なので、今すぐ入浴して着替えて貰う。その公務員の制服を着替えてくるように。禊をやった上で正装でないと謁見は無理だからな」
ライドウの指示。
入浴と着替え。
そのための手配は全部ライドウがするそうだ。
ライドウはこれから彼らが向かう先について口頭で伝えてから
「なるべく急いで、確実に謁見準備を整えてくれ」
最後にそう言った。
ライドウが電話で職員を呼び。
すぐに職員がやって来た。
そしてそのまま連れて行かれ。
まず、職員用の浴室に連れて行かれる。
そこで忍と真月は男女別になり
入浴。
まあ、入浴と言ってもシャワーであるが。
あくまで禊であるので。
そして忍は
「草薙の剣は浴室に持ち込んで下さい」
それだけ、石鹸とハンドタオル等を渡されたとき。
一緒にビニール袋も渡され。
そう釘を刺された。
まあ、冷静に考えたら当然のことではあるが。
今、暫定的に剣を預かり管理しているのは忍なのだ。
目の届かない場所に神器を置くわけにはいかない。
ビニール袋に鞘ごと剣を入れ、浴室に持ち込み。
手早く身体を清めた後。
浴室を出ると、彼の衣装が用意されていた。
それは……
(燕尾服……)
昔、テレビで見たことがあった。
多分大臣の認証式のワンシーンだったと思うのだが。
彼の人生でこれまで縁が無かった服である。
サイズはピッタリであった。
彼の職員の制服のデータを参考にしたのか。
見事な仕事だと、正直思った。
しかし……
彼は脱衣場の鏡で自分の姿を確認して思う。
(……絶望的に俺は燕尾服が似合わない)
そしてそのまま浴室を出て。
真月の準備が整うのを待つ。
真月は彼より数分遅れて浴室から現れた。
彼女の衣装はドレスであった。
色は白で、彼の中では女性大臣が着ているイメージがある服である。
そして真月は彼を見て
明らかに、笑いをかみ殺していた。
彼女も思ったのだろう。
似合ってないな、と。
真月の方はおそろしく様になっていたのであるが。
まるでこういう衣装を日常的に着こなしているように見えるくらいに。
そしてふたりは玉座の間の前まで案内された。
黒い木製の大扉の前で、待機を命じられる。
そして最後の指示をされた。
「許可が出たら直接お願いします」
「あと、神器の奉還は貴女が行ってください」
神器の奉還は真月が行う。
そんな指定。
少し困惑したが
(まあ、そういう指示なら仕方ない)
真月は草薙の剣が納められた鞘を、忍から受け取った。
(何故こんな指示が?)
指示に従い、許可を待ちながら彼女は思った。
何故こんな指示が出たのか?
(……そういえば)
そこで彼女は思い出す。
(神器の八咫鏡のお世話って、女官にしか許されてないんだよね)
確かそうらしい。
そういう話を聞いた覚えがあった。
だったら、その辺が関係している指示なのかもしれない。
神器は雑には扱えない。
捧げるような形で、彼女は両手で持つ。
(ドキドキしてきた……)
早く終わって欲しい気持ちと。
これからを期待する気持ち。
その2つがあった。
そしてついに
「入りなさい」
入室許可の言葉が聞こえた。
(……来た)
同時に、大扉が開かれる。
指示は「直接お願いします」であった。
なので彼女らは覚悟を決めて歩き出す。
玉座の間の中は……
職員がかなり居た。
アームターミナルをつけている職員。
剣を帯びてる職員。
おそらく護衛……近衛兵であろう。
部屋は和室では無く、洋室であり。
奥にオブジェがあった。
(あれ、高御座だよね……?)
真月はそれを高御座と判断した。
本来は即位の礼にしか使用しないものである。
それを今は玉座に使っているらしい。
その中に人影があった。
そこで彼女は直視を避けた。
(多分、この人がそうだ)
その存在を認識した瞬間から、彼女は人間離れしたオーラをその人物に感じてしまったのだ。
許可なしに直視することが躊躇われてしまうような。
直視を避けつつ向かう先は、あの玉座である。
玉座にいる人物については直視しない。
そして彼女らは高御座の前まで進んで。
真月は膝を折って剣を捧げる姿勢をとる。
忍もその隣で、同じく膝を折って畏まった。
……高御座から誰か降りてくるのが分かった。
その人の気配が、自分の目の前に来た。
それを彼女は感じ取り
その人物は落ち着いた仕草で、彼女が捧げていた剣を受け取り。
そして
「ありがとう」
その一言を発する。
彼女はそれに何も返すことができなかった。
それは忍も同じであった。