真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第204話 結界発動

<日本国内某所>

 

 

 暗い闇の中、一組の母子が廃墟を必死で走っていた。

 

 大破壊が起きて悪魔がこの世界に出現するようになったとき。

 悪魔の他に、土地に住む精霊や神の類も活性化された影響か。 

 

 病気を癒す神聖な湧き水。

 

 そういう「実用的効果のあるパワースポット」が出現するようになったのだ。

 もしそういうものがなかったのであれば、おそらく大破壊の犠牲者はさらに増えていただろう。

 

 この地域住民で、身体を壊したらここの湧き水を汲んで飲む。

 それだけで、ちょっとした病気程度なら全快したのだ。

 

 だから

 

(ちょっと、この子を連れて来て、ここの湧き水の汲み方を教えたかっただけなのに)

 

 この母子の母親は数年後に自分が居ない可能性を考えていた。

 今の時代では、数年後の自分の展望を立てるのはおめでたいと言わざるを得ない。

 

 実際この母子も、大破壊後数日で父親を亡くした。

 悪魔に襲われて殺されてしまったのだ。

 

 そういうことが普通に起きる世の中。

 何が起きるか分からない。

 

 そのために彼女は、親としての使命感でやってきたのだった。

 この世界で生き残るために知っておくことを全て伝えておくために。

 

 ただ。

 

 子供にモノを教えるために、列に並ぶ場合。

 昔と違い「子連れは去れ!」と怒鳴られる可能性があった。

 それは昔であれば「でも、子供に大事なことを教えておきたいんです」と頭を下げれば許されたかもしれない。

 

 今は違う。

 

 それを「知るか!」と怒鳴られるならまだいい。

 最悪「イラついたから殺してやる!」と言われ、本当に母子ともに殺される可能性があるのだ。

 警察が存在しない以上、他者のイライラを買う行為は死に直結する可能性がある。

 

 

 なので彼女は、通常は来ることが避けられている夕刻にここを訪れたのだった。

 

 

 夕刻にここに来ると、帰りは夜になる可能性が高い。

 夜は、悪魔が湧きやすい。

 だから避けられているのだが。

 

 最近は悪魔出現の話をあまり聞かなかった。

 だからきっと大丈夫だと思った。

 

 きっと、帰りに悪魔が出るようなことにはならないだろうと思った。

 

 希望的観測だ。

 

 そしてその希望的観測は……

 

 ただの甘い夢だったらしい。

 

 

「ガハハハハ! 女ぁ! そのガキは置いて行けぇ!」

 

 

 ドスドスドスと、悪魔が母子を大股で走って追いかけて来ていた。

 

 ざんばら髪の長髪で、緑色の体色で。

 筋肉が異常に発達した巨漢の姿。

 その手にはごついナタを持っており、口には牙を生やしていた。

 

 鬼のイメージそのものの悪魔。

 

 その名は邪鬼オーガと言った。

 

「お母さん! ぼくもう走れないよぉ!」

 

「お願い、走って! でないと死んでしまうわ!」

 

 母親が手を引っ張ってる息子が、泣きながら訴えるが……どうしようもない。

 

 子供を抱えて走れば、きっと今以上にスピードが落ち、あっという間に追いつかれる。

 

 

 だから、このままでいくしかない。

 

 

 そのときだった。

 

 よそ見をしていたのが良くなかったのか

 

「ウアッ!」 

 

 母親は躓いて、転んでしまう。

 

 致命的なミス。

 血の気が引く。

 

 だがそれは、自分の死が決定的になったからではない。

 

「お母さん!」

 

 倒れた母親を彼女の息子が助け起こそうとしたのだ。

 

 彼女は叫ぶ。

 

「すぐに逃げなさい! 全力で走るの!」

 

 ほぼ悲鳴であった。

 

 彼女が考えていたことは、自分が悪魔の餌食になっている間にこの子だけでも逃がすこと。

 

 しかし

 

「嫌だ!」

 

 息子はその母親の叫びを無視した。

 彼女は 

 

「早く逃げてよ! お願いよ!」

 

 ほぼ哀願の調子で、息子に自分を見捨てることを願うが

 

「お母さん! お母さん!」

 

 だが息子は頑として聞き入れなかった。 

 

 そこに

 

「……早速、ガキの脳味噌をいただくかね」

 

 追いついてきた屈強な緑色の悪魔……邪鬼オーガが、彼女の息子の頭を掴んだ。

 

 彼女は心臓が止まりそうになった。

 

 そして、反射的に叫んでいた。

 

 

「やめてえええええええ!!」

 

 

 その瞬間だった。

 

 突然、悪魔が塵になって消滅した。

 本当に一瞬だった。

 

 悪魔が息子の頭を鷲掴みにし、手に持ったナタでその首を切断しようと振り上げた瞬間。

 パッと消えたのである。

 

 まるで太陽光を浴びた吸血鬼の末路のように。

 

 そしてそのまま、その場には静寂が満ちる。

 その場には、彼女ら以外の存在は何もいなかった。

 

 

 

<同時刻。日本国内東北地方某所>

 

 

 

 東北某所の山間の太めの道路で、1人のフードを被ったパーカー姿の痩せた男が仲魔と共に悪魔と戦っていた。

 

 忍と真月に大破壊後の世界を生き抜く力を与えた師匠である男・ガラ吉である。

 

 その弟子2人は現在京都在住で、一度「京都に来ないか?」と言われたこともあったが、彼は宮仕えが面倒でそれを拒否。

 フリーの悪魔使い……デビルバスターとして仕事をし、小銭を稼ぐ人生を選んだ。

  

 

「ルオオオオオ!」

 

 

 彼の仲魔である妖鬼オンギョウキが、襲って来る悪魔を一刀両断する。

 

 大鎌と斧を掛け合わせたような奇妙な武器で。

 

 妖鬼オンギョウキ。

 黒く屈強な男の姿をした、仮面の妖鬼である。

 

 着ている衣装は忍者を彷彿とさせる。

 それもそのはず。

 平安時代の豪族・藤原千方に仕えたとされる、忍者を悪魔として語り継いだ存在……それが妖鬼オンギョウキなのだ。

 

 オンギョウキは今、4体に分身して周囲の悪魔を狩り続けていた。

 

 悪魔……妖獣ワンプを。

 

 ワンプとはクトゥルフ神話系の妖獣で、主に人の死体を媒介にして発生する妖獣である。

 唾液に病原菌を持っており、噛まれると厄介な病気に感染する。

 

 この世界では治すことが困難な厄介な病にかかることは、死とほぼ同義だ。

 危険極まりない。

  

 

 このワンプという悪魔は、見た目も悍ましかった。

 

 顔面は目玉の無い豚で。

 豚なのに鋭い牙を生やしている。

 

 そしてやけに細い胴体を持ち。

 

 そこに細く長い足が9本。

 その先端がヤモリのような形。

 

 正視に耐えない、本能的に悍ましさを感じる姿である。

 

 

 

 そんな悪魔が大量に発生したという知らせがあり、駆除の依頼が彼に舞い込んだ。

 

 対処できそうなデビルバスターが彼しかいなかったので、彼は1人で来たのであるが……

 

(まずい。数が多過ぎるね)

 

 内心彼は焦っていた。

 

(ここら辺で大量殺人でもあったのか? 警察が居ないからと、適当に死体を放置すんなよ!)

 

 心で毒づきながら、彼は必死で頭を回した。

 

 仲魔のオンギョウキは頑張っている。

 だが、あまりにも数が多い。

 

 

「ミキャアアアア!」

 

 

 耳障りな変な鳴き声をあげつつ、オンギョウキたちに群がるワンプたち。

 

 倒しても倒しても次から次へと出現する。

 この山間道路のガードレールの向こう……崖の下から。

 

(不味いな……)

 

 彼は忍者であるオンギョウキは病や毒に強い面があるので、対処をオンギョウキ1体に任せていたのだが。

 限界のようだ。

 

 しょうがない。

 

「オンギョウキ! 今増援を……」

 

 

 

 彼は周囲を見回し安全を確認した後、座り込んでノートパソコンのキーボードを叩く。

 

 追加で呼び出すのは3体の妖鬼。

 

 フウキ、キンキ、スイキ……

 

 コマンドを流れるように打ち込み、あとはエンターキーを押すだけ。

 

 そうなったときだった。

 

「えっ……?」

 

 ワンプたちが、次々に消滅していく。

 マグネタイトに分解していく。

 

 まだ死んでないはずなのに。

 

 ガードレールの向こうにいた、増援ワンプたちも、まるで爆散するように分解していく。

 

「……消えた?」

 

 気が付くと、彼の仲魔のオンギョウキ以外の全ての悪魔が消えていた。

 

 理解不能である。

 

 

 そのとき……

 

 彼はふと、数カ月前に突如お別れをした弟子2人の顔を思い出した。 

 その理由は分からなかったけれど。

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