真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
昨日、神器を帝に奉還した後。
すぐに結界の儀式が行われた。
結果、今の日本領土は悪魔が出現しない土地になった。
今、この国にいる悪魔は、悪魔使いと契約している仲魔しかいない。
この効果は領海にまで及ぶらしい。
そこでふと、忍は考えた。
(……大破壊前に領土問題で荒れてた地域はどうなんだろうか?)
日本としては日本の領土だから、結界の効果が及んでいるかもしれない。
ライドウ曰く「結界の効果範囲は『そこが日本であるかどうか』だ」とのことなので。
そのため、東京の方は相変わらず悪魔が出るとのこと。
もう、東京は日本ではないからだ。
東京は悪魔が跋扈し、野獣の論理で生きる人間と独善的な狂信者が争い合って生きる化外の地。
これからの認識はそうなるだろう。
そんなことを、彼はバイクの運転をしながら考えていた。
そのとき
「ねぇアナタ」
彼の後ろに2人乗り体勢で乗っている真月が、そう呼び掛けてきた。
ちなみに2人とも黒いライダースーツ姿で。
黒いヘルメットも被っている。
「何?」
運転しながら彼がそう返すと
「そろそろ着く頃よね?」
それに対して
「ああ」
彼はそう答える。
今、彼らは自分たちの故郷に向かっている。
かれこれ、4時間くらいバイクを飛ばして。
日本から悪魔が駆逐され、安全になったからである。
そうなったら、やることはひとつ。
彼らは休暇を申請し、こうして今向かっている。
「あっ、あと3キロみたいよ」
後ろの席の真月の言葉。
標識が、彼らの故郷の街が近いことを教えてくれる。
あとちょっとである。
真月の家に辿り着いた
彼らの地元の旧家であり、名士でもある真神家。
元々はこの地方の地主をしていた豪農だったらしい。
その豪農が、明治維新から敗戦までを潜り抜け、その社会的地位を保ち続けた家なのだ。
なのでかなり大きさの家であった。
見た目は典型的な洋館である。
そんな屋敷を前にして。
「……お父様は大丈夫かしら」
真月はそう呟いた。
忍は
「大丈夫だろ。あの人なら」
バイクを停めながら、そう返す。
彼には想像つかなかった。
真月の父親とは彼は面識はあるが、真月の父親は誰かに易々と命と財産を奪われてしまうような弱い人間では断じて無い。
社会が崩壊した程度で命を落としているとは思えなかった。
しかし
(この家にいるのかな?)
そこだけは気になる。
この家に住み続けても、ならず者の標的になり、トラブルを呼び込むだけのような。
なので
真月どうする?
そう彼は訊ねようとした。
しかし
「おとうさまー! おかあさまー!」
彼女は手でメガホンを作って、大声を出したのだ。
忍はそれで聞こえるのか?
確かめられるのか?
そう思ったが。
そのシャウトの後。
何かが動く気配を感じた。
そのまま数分後
「真月か……?」
玄関ドアが開き、中から2人の年配男性……
忍と真月の父親たちが顔を出したのだった。
「よくぞ生きていてくれた! 良かった!」
年配男性が感動に震えている。
この人物が真月の父親である
忍は父親から「本当に優秀な男だ」と聞いていた。
見た目は目つきが鋭い痩せぎすの男性である。
よく研がれた刃物のような印象の男性であった。
髪型は全て後ろに流していて、額を出す髪型であった。
「……お前も生きていてくれてよかったよ。俺たちは内心諦めていたんだ」
そしてその隣に安心した顔を晒しているのは忍の父親。
佐上流実戦空手道場の道場主である。
生え際が後退気味の筋肉質の男性で、目付きの鋭さが忍とよく似ていた。
彼らの両親たちは、固まって生活していたようだ。
まあ、それは普通の発想だろう。
無法の世界では固まって生活した方が安全性は増す。
ましてや忍と真月の父親たちは親友であるのだ。
しない理由が無かった。
そしてそこに母親たちもやってくる。
忍と真月の母親である。
忍の母親の、
いかにも肝っ玉母ちゃんという感じの女性で。
忍の母親としては特に意外な感じではなく。
真月の母親の
真月とよく似ているのだ。
日本人形みたいな髪型に、クールな目つき。
ただ、目元と手に年齢を感じるものがある和服の女性。
上流階級であるのが視覚的に分かる服装の女性だ。
「生きててくれて良かったよ! お母さんたち、アンタたちを東北まで迎えに行こうかと最初の方は考えていたけど、無理だろってなってねえ……!」
「よくぞ生きて帰って来てくれましたね……忍くん……真月……!」
そして2人の母親たちは涙を浮かべていた。
そのとき忍は、自分の母親が泣いているのが意外に感じた。
彼の中では、自分の母親はこういうときには泣かないと思っていたのだ。
でも、そうじゃなかった。
それは彼の心に、申し訳なさと共に。
ある種の嬉しさを齎した。
それは口には出せない事ではあるのだけど。
「ただいま帰りました。お父様、お母様」
親子の対面が終わった後。
真月はそう言って頭を下げた。
忍もそれに合わせる。
そして忍は
(真月の妊娠のこと、どう切り出そうか?)
彼は妻のおなかをちらりと見て
切り出し方を思案した。
しかし先に
「いきなりですけど、私真神を辞めました。現在佐上姓。そして現在妊娠中です」
真月は笑顔でそんなことをいきなり言ったのだった。
順序を無視した直球である。
当然大騒ぎになった。
「ま、孫って!」
「そんな! ちょっと忍! アンタまさか無理に迫ったんじゃ!?」
「ちょっと待って下さいよ佐上さん。忍くんはそんな男の子じゃないと思いますよ」
「そうです。詳しい話を聞いてみましょう!」
そんな混乱の後。
「なるほどね……いつ死ぬことになっても後悔がなるべくないように……」
真月がした説明を聞き、なんとか4人を納得させた。
こんな世界になって、常識的なしきたりを守って本当の気持ちを押し殺して清い関係を続けろなどというのは鬼畜の所業である。
そんな言葉は平和な世界でしか許されないことだ。
しかし一応
「勝手な振る舞いに及んですみません」
忍は真月の母親に頭を下げた。
すると
「いや、別に忍くんなら良いのよ」
なんだかいやに上機嫌に思えた。
真月の母親は
「あなたなら真月を大事にしてくれるって言い切れるからね」
全面的な信頼である。
別に忍はその言葉に反発はしなかったが
(……プレッシャーはプレッシャーだ)
そう、頭の片隅で考えてしまった。
そして
「よくウチの息子を貰ってくれたわね! あなたならおばさん大歓迎よ!」
「お義母さま。今後ともヨロシクお願いします」
向こうで、忍の母親が真月と抱き合っていた。
彼の家では嫁姑問題は起きないと言い切れる自信が忍にはあった。
元々真月は、中学生の段階で忍の家に深く足を踏み込んでいた。
それこそ、法律が許すのであれば即日入籍しても問題ないくらいに。
そしてあと1つの問題。
「ジン! お前のところは別に技術だけ継げれば問題ないのでは無いのか!?」
「俺だって墓を守る人間欲しいわい!」
ふたりの父親たちが、それぞれの息子と娘そっちのけで話し合いをはじめていたのだ。
……それは
生まれてくる子供の取り扱いについて。
どうも真神家としては跡取りがおらず家が絶えるのが我慢ならないようだ。
旧家なら仕方ないのかもしれないが。
そのため、子供を真神家の養子にしてくれと言ってるようだ。
それについては
「お父様たち!」
真月が口を挟んだ。
彼女は言った。
「私、子供ひとりで終わらせる気は毛頭ないし、限界まで産むつもりでいるからそういうのはやめてください」
それに関しては忍は妻の覚悟と気遣いに頭を下げるしかなかった。
……嬉しいはずの子供の誕生が原因で、ふたりの実家が争う原因になるのは絶対に嫌であったから。