真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第206話 新しい日本について

 ふたりは里帰りして、近況報告して。

 京都御所に帰って来た。

 

 そして帰って職場に出たとき。

 いきなり言われたのである。

 

 上司である17代目葛葉ライドウに真月が。

 

「佐上真月、大老になってくれないか?」

 

(たいろう……?)

 

(江戸時代?)

 

 上司の言葉を聞き、彼らはそう思った。

 

 大老……

 江戸時代、政治が危機的状況になったときに置かれる特別職の名前だ。

 

 真月にそれになれという。

 それは一体どういうことか……?

 

 

 それを説明するには、まず現在の京都の政治システムについて説明しなければならない。

 

 

 京都では現在、選挙は行っていない。

 全て暫定政府を動かしている職員がやっているのだ。

 そんなことをしている余裕が無かったからである。

 

 そして

 

 先日、日本全土から野良悪魔が消滅した。

 これで、安定した社会を作っていく基礎が出来たわけだ。

 

 しかし

 

 この体制は、おそらく相当長く続きそうだという見通しだ。

 理由は、これから社会を安定させなければならないので、やはり選挙をやってる余裕が無いからである。

 

 選挙をすれば、政治が迷走する可能性が高まる。

 余計な意見が混じる可能性が高まるからだ。

 その迷走は政治の暴走の防止というメリットに対するデメリットなのだが、今はそこを考えるべきではない。

 可能な限り早く、大破壊前の社会に今の社会を到達させなければいけないのだ。

 

 選挙なんて言い出すのはその後である。

 

 故に今の政府は、現在京都の政治を動かしている人間たちをメンバーとして「元老院」を作ることにした。

 

 大老は、その元老院のまとめ役を指す役職である。

 

 そして、これには理由があった。

 それは

 

「流石に伊邪那美神と契約している悪魔使いがいることを知っているのに、その人物を元老院に関わらせないのは不味い」

 

 ……言うなれば。

 

 ある小説投稿サイトを作り上げた人間が誰か知っていて、その人物と連絡を取れる状況にあるにも関わらず、利用者がそのサイトの運営方針について話し合うことを全く連絡もしないで放置する、みたいなものであろう。

 

 何故蚊帳の外にする? 小説投稿サイトを私物化しているのか?

 そう言われかねない。

 

「まあ、まとめ役といっても立場的なもので、権力的には元老院のメンバーのひとり以上ではない」

 

 真月の決断を促すためか。

 ライドウが役職が極端に重くはないという話をする。

 

(どう答えるのかな?)

 

 忍は自分の妻がこの話をどう返すのかを見守る。

 そんな役職は、穏やかに過ごすには邪魔なだけだと彼は思うのであるが……?

 

 そして彼女は、夫が見守る中こう答えた。

 

「お受けします」

 

 ハッキリと、力強く。

 

 ……その姿に忍は。

 彼女のことを尊敬し。

 同時にそんな女性の夫であることを誇りに思った。

 

 

 

 そして数日後。

 

 真月を大老に迎え、新生日本について話し合う元老院の会議の場が設けられる。

 

「議題は色々あるが……皆、手元の資料を見てくれ……」

 

 ライドウが議長を務め、元老院会議がスタートした。

 

 そしてまず、第1項目の話に行こうとした……

 

 まさにそのときだった。

 

 スッ、と真月が手を挙げたのだ。

 

「なんだ? 大老?」

 

 ライドウの言葉。

 

 しかし、そこには苛立ちを伴ったものはなく。

 

 純粋に、何か意見があるのかという態度しか無かった。

 

 それに真月は

 

「3点ほど、大事な提案があります。もし、そこに読み落としがあったら指摘して下さいね」

 

 そう断って。

 

 こう続けた。

 

「まず1点は、悪魔の正体の隠蔽についてです」

 

 彼女は語る。

 

「悪魔は今後、世界滅亡を企んだ悪の組織が創り出した生物兵器ということにします」

 

 彼女の言葉にその場の人間がざわめいた。

 世界滅亡を企んだ悪の組織が創り出した生物兵器……

 現実とはかけ離れた、大きな嘘だ。

 

 そこから来るざわめきを無視し、彼女は続ける。

 

「理由は、現実の宗教や伝説に登場する神々が実在し、我々と多少力の差はあるものの、打倒し得る存在であると知ってしまうと、何かとてつもない間違いを犯しそうなとき、もしくは個人の力で対処しきれない災厄に見舞われたとき、何も恐れられないし、何も頼れなくなるからです。考えても見てください。死ぬ気で頑張れば打倒し得るものに、本気で恐れを抱くことができますか? 厄介だとは思うかもしれませんけど、そういうのはリスクって言うんですよ。それに、何にも頼れないというのも問題なんです。どうしようもないときに祈ることが出来なくなるんですから」

 

 彼女の言葉を聞き、その場の誰もが異を唱えなかった。

 その通りであるからだ。

 

 しかし……

 それをどう達成するというのか?

 

 現実には悪魔は悪魔であることは、今や日本人全員が知っている事実であるのに。

 しかしその疑問は

 

「それをどうやって達成するか……その方法については、後ほど話します」

 

 その言葉で、回答が後回しになった。

 

 話は続く。

 

「そして2点目は悪魔使いの扱いについて」

 

 真月は資料を捲りつつ続ける。

 

「これは1点目と連動する話なんですけど。この資料では許可制にするとありますけど……ここは、大破壊前と同じく『秘密職業』にした方がいいと思います。理由は1点目で言ったことの邪魔になるからです」

 

 確かに。

 悪の組織の創り出した生物兵器を使役する職業が表の職業として存在していると、説明不能になる。

 噓がばれてしまうではないか。

 都合が悪い。

 

 ……ならばそうするべきなのか。

 

「そして3点目は……」

 

 そして話は最後の提案に移る。

 そのとき

 

 真月の表情は能面のように何の表情も浮かんでいなかった。

 

 そんな表情で、彼女は言ったのだ  

 

「メシア教徒は世界滅亡を企み、生物兵器を製造し、全世界の人間を死に追いやった悪の組織である、という全国民での共通認識の構築についてです」

 

 そう、淡々と。

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