真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
(真月、キミは一体何を言ってるんだ!?)
忍は激しく動揺していた。
彼は、彼女がこんな酷い嘘を吐くことを全く想像していなかった。
メシア教徒は確かに狂信者の集団だ。
クルセイダーという人工悪魔人間も作っていた。
だがしかし。
この世界に悪魔が普通に出現するように仕向けたのは彼らでは無い。
彼らは便乗しただけのはずだ。
全くの捏造ではないか。
「ちょっと待て。それは許されないのではないか?」
「我々は陛下の臣下だ。我々の振る舞いは全て陛下の振る舞いとなるんだぞ?」
「佐上さん、敵相手なら何をやってもいいんなんてそれは外道の思考だぞ……!」
真月の提案に元老院のメンバーの何人かが明確に拒絶や嫌悪を示した。
真月への非難の色すらあった。
けれども
「落ち着いて下さい。話は最後まで聞いて欲しいです。前提条件として……」
彼女は無表情を崩さないまま、続ける。
「新生日本の問題で、大破壊の直接原因の問題がありますよね。大破壊の直接原因『空間歪曲転送装置の研究』の問題が」
その話を持ち出したとき。
その場の人間全ての顔色が一斉に曇った。
それは……思い出したくない事であったから。
だが彼女は淡々と続けた。
「この研究、日米の合同研究だったんですよね。で、その結果、偶然魔界へのゲートが開き、悪魔がこっちの世界に雪崩れ込んで来た」
その……
「ようは、世界滅亡の直接原因は、日本とアメリカにあるわけです。この情報は絶対に公開できませんよね? 公開したら吹っ飛びますよ。この新しい政府は」
認めたくない事実を。
真月の言う通り現状、日本以外の国は全て壊滅していると考えることが妥当であろう。
その理由は日本が無法状態になったときに、救援も侵略も無かったからだ。
日本の以外の国が国として存在しているなら、何かしらアクションがあったはずだ。
救援なり、侵略なり、何かしらが。
でもこの2年間、全く何も無かったのだ。
ならばそう思うべきだ。
日本以外の国は全て滅んでしまっている、と。
そしてそんな惨劇の原因を作った者たちの流れを汲む暫定政府が新生日本の新しい政府なのである。
それは真月の言う通り、公開したら政府が吹き飛ぶような、致命的な情報である。
「だから……」
真月は続けた。
本当に何の感情も乗せない声で。
「大破壊はメシア教による世界征服を計画した悪の組織・メシア教徒が計画した狂った世界規模テロであるということにするんです」
非道な計画を話す。
彼女はさらに続ける。
この計画の責任転嫁というメリット以外のメリットを。
それは……
「これには責任転嫁以外の意味もあります。今のこの政府に明確に敵であると言えるのは、東京品川で生き残ってるメシア教徒たちです。……彼らはまた、この京都御所に攻撃を仕掛けてくる可能性があるはずです」
確かにその可能性はある。
報復のチャンスがあると判断すれば、きっと彼らは行動に移すだろう。
だが
「そのときにこの国の人間全てが『メシア教徒は自分たちの狂った夢を叶えるために、80億人以上いた全世界の人間を虐殺し、人類人口をたった3000万人にまで減らした悪魔の集団』と認識していれば、彼らの企みが通じにくい状況になります」
同じ人間である、と思うから会話が生まれ、相互理解が生まれるのであるが。
逆を言えば相手を人間扱いし、会話をするから洗脳されるのだ。
メシア教徒と聞くだけで、相手を人間扱いしない共通認識ができていれば、その危険性が大きく下がる。
それは……
「……止むを得ないな」
「メシア教徒に復権されることだけは防がないと駄目だ」
「認めよう。そして我々の世代が墓場まで持っていくのだ」
次々と。
元老院のメンバーは真月の提案について賛成の意志を示す。
彼らも思い出したのだろう。
メシア教徒の卑劣さを。
彼らには隙を見せてはいけないのだ。
前にもあったではないか。
女工作員を送り込み、女性を知らない職員を骨抜きにし、情報漏洩をさせたことが。
もしあのとき、メシア教徒は全て悪魔で人では無いという認識があったら……彼はああなってはいなかったかもしれない。
ならば、これは必要悪であると呑み込むべきなのでは無いだろうか……と。
そのとき。
忍は気づいた。
真月がその手の指を何度も組み替えていることを。
彼女もストレスを感じているのだ。
この提案をするために。
忍はそこに気づいたとき。
そっと背後からその肩に手を置いた。
すると彼女の手の動きが小さくなる。
それを見て彼は彼女に愛しさを感じた。
「……で、どのようにしてそれを達成するのだ?」
議長であるライドウがそう真月に訊ねる。
それに対して真月は
「全国民を魔王マーラの洗脳魔法で洗脳します」
そう答えた。
魔王マーラの洗脳魔法。
確かにそれを使用すれば、この3つの提案を実現するのは容易である。
ほぼ全ての人間は、魔王マーラの洗脳魔法の前では無力であるからだ。
そこまで聞き、ライドウは
「分かった……」
自分の資料をこの会議室のデスクの上に置き。
「……では、効率よく洗脳魔法を掛けるための手法について詰めよう」
真月の提案を補強するための議論を呼びかけたのであった。