真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です)   作:XX(旧山川海のすけ)

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第210話 18年後の世界

<京都第一中学校>

 

 

 ここは京都に700ある中学の1つ、京都第一中学。

 小学校の段階で、特に優秀であると判定された子供たちが進学する中学校である。

 

 現在の日本では人材育成が急務になっており、優秀な子供の英才教育が当たり前になっていた。

 

 そして今日は平和教育の日であった。

 

 

「皆さん知っての通り、今から20年前に大破壊というものが起きました」

 

 教壇に立つ眼鏡を掛けた中年の女教師が、生徒たちに向けて授業を行っている。

 黒板に「大破壊」という文字をチョークで大文字で書く。

 

「皆さんのご家庭でも、大破壊の悲惨さは教えられていると思いますが、真神くん」

 

 そこで教師は生徒の1人を指名する。

 

「はい」

 

 指名された生徒は返事をして席から立ち上がった。

 

 黒髪の少年で、スラリとしていて。

 目付きがクールで知性を感じさせる容貌の美少年。

 

 彼こそは佐上真月の息子である真神真虎である。

 彼は出生時から母の実家を継ぐことが決まっていたので、物心つく前に真神家の養子が決まっていた。

 ただし、それは籍だけで。

 普通に母の手元で育てられたので、別に家族と引き離されて育ってはいない。

 

 彼はこの京都第一中学に進学し、現在学級委員を務めていた。

 

 そんな彼に、教師は問う。

 

「大破壊とは一体何ですか?」

 

「メシア教徒が生物兵器デジタルデビルを創り出し、それを世界に放って約80億居た人類を、約3000万人まで激減させた大虐殺のことです」

 

 淀みなく彼は答えた。

 教師はその答えに満足し

 

「はい。さすがは真神くんですね。素晴らしい答えです」

 

 そう言って微笑み、目で彼に着席を促した。

 着席する真虎。

 

 そして教師は続きを話した。

 

「そう。メシア教徒というカルト宗教の狂信者たちが、デジタルデビルという恐ろしい兵器を創り出し、世界をメシア教一色に染めるために起こした狂気の大虐殺……それが大破壊なのです」

 

 話しながら黒板に「メシア教徒」という文字を書く。

 書き終えた後

 

「メシア教は、1990年代に起きた新興宗教でした。最初彼らは「この世に真の正義を」という勇ましい言葉で社会に不満を持つ人間を呼び集め、徐々に勢力を拡大していきました」

 

 そこで誰かが手を上げる。

 

 教師はそれに気が付き

 

「はい、上城さん」

 

 名前を呼ぶと。

 セーラー服を着た三つ編みツインテールヘアの女生徒が席を立つ。

 

 目が大きくどことなく猫を思わせる美少女で。

 彼女は

 

「どうして誰も大破壊が起きるまで、メシア教を叩き潰そうとしなかったんですか? メシア教は立ち上がった時点で反社会的な宗教団体だったんですよね?」

 

 そう、当然の疑問を投げかける。

 この世に真の正義を、ということは。

 この世には正義は無いと言っているも同然。

 それで人を集めるということは、彼らの思う正義を実現するために悪である社会を滅ぼしにくるに決まっているではないか。

 

 なのに何故、誰も災いの芽を摘もうとしなかったのか?

 

 当然の疑問である。

 

 それに関して教師は強い目を向けながら

 

「当時の日本が民主主義で、同時に民主主義の一番悪いところが表面化していたからです」

 

 そう、ハッキリと言った。

 続けて

 

「本来民主主義はとても素晴らしい社会制度です。権力の暴走を防ぎやすく、国民の納得も生まれやすい……皆で決めるからですね」

 

 そう語った後。

 

「ですが」

 

 強い口調でそれを切り

 

「同時に、獅子身中の虫を排除しづらくなるという恐ろしい欠点があるのです」

 

 そして教師は黒板に文字を書く。

 書く言葉は「多数決」「選挙」「参政権」

 

 そして語った。

 

「民主主義は国政を担う人間を国民が選ぶ政治形態です。それは選挙で行われ、選挙は多数決で決まります……ここまではいいですね?」

 

 生徒たちは頷いた。

 

 それを見て教師はさらに続ける。

 

「このシステム自体は非常に素晴らしいのですが……前提条件で、国民すべてが高い勇気と知性と正義を持っている必要があるんですね」

 

 ……大破壊前であれば、確実に失職してしまいそうなことを平気で口にする教師。

 教師は平然と続けた。

 

「残念ながら、全ての国民がそうである社会などおそらく無いでしょう。では、そうでない人はどういうことをするか?」

 

 そして教師は語った。

 民主主義という政治システムが抱えている欠点を。

 それは……

 

「自分の勝手な欲を叶えてくれそうな人間を議員にするために、邪悪な人間を呼び集め、票を集めて議会に議員として送り込もうとします」

 

「対立候補に投票しそうな人間の投票を圧力を掛けて断念させ、正常な投票行動ができないようにします」

 

「悪意ある嘘で国民を混乱させ、票を集めようとします」

 

 生徒たちは真剣な顔で教師の話を聞いていて。

 メモを取る生徒もいた。

 

 教師は

 

「そうして送り込まれた議員が、平等だの権力の暴走だのの強い言葉で世論を煽り、見えている獅子身中の虫の排除を邪魔するのです」

 

 そう言った後。

 厳しい表情で

 

「そのせいでメシア教は着実に大きく育ち、最終的に大破壊を引き起こしました」

 

 そう言い切った。

 メシア教を育てたのは、当時の日本の社会システムのせいであると。

 

 そして優しい顔になり

 

「皆さんは賢く、そして勇気と正義の人であってください。それが私の教師としての真なる願いです」

 

 そう呼び掛けて。

 その日の京都第一中学の平和教育の授業はそこで終わった。

 

 

 

 そして平和教育が終わった後。

 グループディスカッションの時間になった。

 

 生徒が数人ずつ集まって、平和教育の授業内容について話し合うのだ。

 そこで

 

「私の母親は大陸の出で、元々日本に留学中の学生だったそうです」

 

 真虎のグループに上城さんがいた。

 彼女の母親は大破壊後に再編された政府で、新しく日本人になった元外国人で。

 

 家が中華料理の飲食店をやっている関係上、中華料理が上手い女の子なのだが。

 色々あるらしい。

 

「でも、大破壊が起きて帰国できなくなり、当時恋人だった父と一緒にここ京都まで逃げて来たそうです」

 

 当時は大変だったと彼女の母親は言っているそうだ。

 そして彼女の父親がいなければ、多分自分は生きてはいないとも。

 

 そして

 

「母はいつも笑ってますが、たまに1人で泣いています。……大陸にいるはずの母の家族はおそらくもうこの世にいないからです」

 

 そのことを語ったとき。

 上城さんは歯を噛み締める。

 

 大破壊から20年経った現在。

 いまだに外国からの人の接触がない。

 

 なので現在、外国は全て崩壊しているというのがこの国の公式見解である。

 そこから考えると……

 

 残念ながら上城さんの母親の見解は正しい。

 

「だから私はメシア教徒が許せません……大嫌いです」

 

 そう口にする上城さんの声には明確な怒りと憎悪が籠っていた。

 おそらく彼女は生涯メシア教徒に強い憎しみを持ち続けるのであろう。

 

 それを黙って真虎は聞いていて。

 思う。

 

(まあ、普通そうなるよな)

 

 彼はこの年齢で母親の仕事を引き継ぐことが決まっていたので。

 大破壊の真実については母親から全て聞いていた。

 

 だから大破壊が「意図しなかったとはいえ、直接原因は日本とアメリカ」という真実を知っている。

 そしてデジタルデビルが生物兵器では無く、本物の神や悪魔であるということも知っている。

 魔法がこの世に存在することも知っている。

 

 だが、彼はそれを口にすることは一切なかった。

 社会が大混乱に陥るし、最悪自分が糾弾され、家族ともども社会から叩き出されるかもしれないからだ。

 

 だから彼は

 

「……そうか。辛いね。でも……東京にいる狂信者たちを叩き潰そうとすると、恐ろしい被害が予想されるからな……。殲滅戦ってのは危ないんだよ」

 

 そう、労わる表情を浮かべつつ。

 他の人間同様、何も知らない人間として不自然ではない言葉を彼女に返したのだった。

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