真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
<夢>
道場に2人。
彼は息子と共に居た。
今年17才になる彼の息子・佐上月心は、彼同様佐上流実戦空手を学ぶと言ってくれた。
彼本人は「息子に継いでほしい」とは思っていたけれど、無理矢理やらせても続くわけがないと思っていたので。
別に誘いはしなかった。
だが息子は小学生のときに
「お父さんみたいに強くなりたい」
と言い出し、こっちの世界に足を踏み入れてくれたのだ。
どうも、母親……つまり彼の妻である佐上真月が
「あなたのお父さんは地上最強の男だから」
そう言って教えて来たせいのようだ。
そして憧れを抱き、自分もやりたいと言い出したのだ。
彼は今、佐上流実戦空手の奥義に当たる技「鎧通し」を息子に伝授しようとしていた。
「鎧通しをやる場合は、腕力で突くのまず捨てきゃいけない」
彼は自分と同じ白い道着を着た息子の腕に触れながら
「拳を叩き込む感覚じゃ無く、腕を叩き込むというか……」
どう言語化したものか、と思いつつ指導をした。
自分の父親に彼が鎧通しを伝授されたときは
腕を自分の身体だと思うな。
そんなことを言われた気がする。
彼自身はそれで伝わったが、息子にはそれで伝わるだろうか?
そんなことを悩んでいたら
「それで鎧通しが出来るの?」
息子が聞き返して来る。
それに関して
「無論、それだけじゃまだ足りない。手首の返しだとか、突きのときの構えだとか……でもまずそこができないと話にならんのさ」
彼は髪を弄りながらそう返した。
この鎧通しの伝授は、最終的にはミット打ちでは不完全で。
他人の腹を使わないとどうしようもない面がある。
問題はそれなのだが……
一度、本人にも打ち込まないと、習得させられたとは言えないのだ。
何故なら、鎧通しを喰らうとどうなるかを実感できないからだ。
そうでないと、実践で使えない。
効いたかどうかわからないからだ。
彼はそれがたまらなく嫌だった。
息子を殴りたくない。
成長してすっかり大きくなり。
身長も自分とほぼ同じになってるのだが。
彼の中では、息子は2才くらいで、旧時代の昔の特撮番組を一生懸命見ていた小さい姿のままだった。
だから習得過程でどうしても必要だとしても、気が進まないのだ。
「どうしたの父さん?」
黙り込む彼を不思議に思ったのか、息子がそう声を掛けて来た。
彼は
「悪い。ちょっと考え事をしていた……とりあえず、一度自分で喰らってみろ。これは避けては通れんし……」
思い切って、息子に鎧通しを喰らうことを切り出した。
そのとき。
息子の後ろに、誰かがいた。
それは……
クルセイダーロードだった。
クルセイダーロードは火だるまで、あのときのまま……彼がトリスインパクトで命を奪ったときの姿のままだった。
彼女は後ろから彼の息子に掴みかかろうと目を血走らせて両手を広げて飛び掛かって来ていた。
瞬間的に彼は判断する。
「月心、どけ!」
彼は息子の肩を掴み、力任せに自分の後ろに下がらせて。
その体勢のまま、左足を跳ね上げで直蹴りをクルセイダーロードの腹に叩き込んだ。
「グギャアアアアア!」
クルセイダーロードはそれで吹っ飛び、道場の床に転がる。
彼女は起き上がり
「佐上忍ゥゥゥ……! 我々を踏みにじって何を幸せそうにしているゥゥゥ……?」
呪いの籠った視線を向けながら、呪詛を吐く。
「お前たちのせいで、我々の楽園は失われた……」
「自分たちだけが幸せならそれでいいのか……?」
恨みと憎悪を口にするクルセイダーロードの背後で。
渋谷で出会ったメシア教徒の夫婦が凄惨な目に遭わされていた。
あの少女は複数の男たちに群がられ、欲望をぶつけられていて。
あの少年は、首輪を嵌められて、鞭を打たれて重い荷物を運ばされていた。
他にも、同じような目に遭っている善良そうな人々がいた。
彼らは血涙を流し
「どうして私たちがこんな目に遭わないといけないの……?」
「酷過ぎる。お前は悪魔だ」
そう、口々に彼を非難した。
そんな言葉を受け、彼は……
「……呪うなら俺一人を呪え……お前たちを奴隷にしろとガイア教徒に言ったのは俺だ……!」
目を逸らさず、そう言い放つ。
そして
「だが……」
彼は腰の前で腕をクロスさせる。
すると彼の腰にあのベルトが出現する。
「俺の家族に手を出すなら……覚悟しろ!」
そしてそう叫び。
彼は緑色の光と共に仮面ライダーアモンへの変身を遂げ。
火だるまで呪詛を続けるクルセイダーロードに飛び掛かり、その頭部に拳を叩き込み、頭部を木っ端微塵に打ち砕き……
そしてそのまま……
「……あなた?」
そこで目が覚めた。
今のは夢だったのだ。
彼は起き上がる。
彼の隣には寝巻姿の妻の真月が心配そうに彼を見ていて。
「……悪い。久々に嫌な夢を見た」
そう言って、彼はベッドから出る。
汗をかいていたからだ。
このままでは寝直せない。
「顔を洗ってくる」
そう言って、洗面所に向かおうとしたとき。
真月が彼を後ろからそっと抱き締めてきた。
彼女は
「私もあなたの荷物の半分を背負うから」
そう言ってくれた。
(……真月)
彼は思う。
これまでの人生でずっと隣にいてくれて。
ずっと手を貸してくれた。
自分はとても幸運だと彼は思った。
こんな、最高の女性を妻に出来たのだから。
出会ったときの若さの輝きはもうないかもしれないが。
彼にとって、ずっと真月は女神であった。
だから
「大丈夫さ」
彼は言った。
「俺たちの世界を守るためなら、俺は何にだって耐えられる」
その言葉は本心で
「キミがいるなら、なお大丈夫だ」
その言葉と共に彼は
自分を抱き締める妻の手をそっと握ったのだった。
<了>