真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
<京都第二高校>
「なあ、日曜日にデモに行かないか?」
金曜日の昼休み。
彼は学校でクラスメイトたちにそう切り出した。
「デモ?」
彼の学友の1人が困惑した顔でそう返す。
さっきまでその学友と馬鹿な話で盛り上がっていた他の学友が
「何かデモらないといけないような政策ってあったっけ?」
「あれかい? 埼玉山梨千葉特別防衛費のための緊急消費増税? あれはしょうがないだろ。東京との最前線都市である3都市の防衛にお金が要るのはしょうがないわけだしさ」
そう、彼らの見解を口にする。
今、緊急でデモらないといけないような政府の大きな失策は無いと。
彼は溜息を吐きたい気持ちになった。
だから
「あのさ……お前ら今の世の中異常だと思わないの?」
「何が?」
彼は暗澹たる気持ちになった。
目覚めさせてやらないといけない。
そう思ったから
言った。
「この国には選挙が無いよね?」
その言葉に
「無いね。でもデモの自由はあるだろ?」
「実際、子供の数が少ない家庭に課税する法案が出たとき、皆抗議したし、それで罰せられたりしなかっただろ」
「しかもその後、法案は撤回されたしさ」
学友たちはそれの何が問題なんだ? という顔でそう返した。
彼はそんな学友たちに
「おかしいだろ……この国で政治に関わるには、元老院の誰かに後継者に指名されないと無理だなんて」
核心的な問題点を指摘してやった。
そう。
この国では政治に関わる立場になるには元老院のメンバーになるしかなく。
そのメンバーには元老院メンバーに後継者として指名されないと無理なのだ。
つまりこの国は民主義では無く、元老院による専制政治なのである。
彼は胸にあった熱いものをぶちまける。
「政治を元老院が私物化するのはおかしい!」
「それじゃいくら優秀でも、元老院の誰かに気に入られないと政治に関われないじゃないか!」
「支配階級になれないじゃないか!」
「だからさ、民主化デモに参加しようぜ! この国を変えるんだ!」
そう、言い切った。
その言葉を聞いた学友たちはポカンとしていたが。
やがて全員が盛大に溜息をつき
そのうち1人が
「あのさ、阿加井」
彼に呆れている視線を向けて来た。
彼はムッとしながら
「なんだよ?」
そう返すと
その学友は
「……そういうふうに、元老院を侮辱する言葉も、民主化デモをすることも許されていることを良く考えな?」
明らかに見下した視線を向けてくる。
その視線は彼を激昂させた。
「そんなの当たり前だろうが!」
「当たり前じゃ無いんだよ」
学友は溜息をついた。
「もうちょっと本を読め。昔の本を」
「昔の普通の民主制のない国だと、そんな真似をしたら命は無いのが珍しくなかったらしい」
そう。
支配者の批判をしたら収監されたり、処刑される国は珍しくなかった。
昔の話だが。
「だけどこの国はそうじゃない。何を言っても罰せられることはない」
「元老院だけじゃない。陛下の悪口を言っても良いんだぜ?」
そういう学友たちの目には憐みの光があった。
なんてこいつは馬鹿なんだろうか?
そんな思いが目に出ていた。
そして諭すように続ける。
「それで良いじゃないか。変な法案が出たら抗議デモできるんだからさ」
「……もう大破壊から50年以上経ってるけど、その間元老院がおかしくなったことがあったか? 無かったろ」
「だったらそれで良いじゃん。何が民主化だよ。馬鹿馬鹿しい」
彼は脳の血管が切れそうになるほどの怒りを覚え
思わず
「馬鹿はお前たちだ! 家畜かよお前らは!」
暴言を吐いた。
すると
「は?」
「……何言ってんだお前? 何で民主化に賛成しないくらいで家畜呼ばわりされなきゃいけないわけ?」
一気に学友の態度が悪くなる。
彼らは
「あのさ、お前さ……」
嫌悪感いっぱいの声で
「ひょっとして、メシア信奉者か?」
そう言った。
メシア信奉者。
メシア教を信じている危険人物。異常者。
この国では最大級の侮辱であり、公の場で根拠なく言った場合、侮辱罪に問われかねない言葉である。
あまりの屈辱で彼はぶるぶると震え
金切声で
「先生に言ってやる!」
そう言い放つと
学友たちは不快さを隠そうともしない目で
「勝手に言えよ。俺らもお前が民主化デモに誘って来て、ゴリ押して来たっていうから」
「……民主主義が悪い風に働いたから、大破壊が起きた。こんなの平和教育で散々言われてることよな」
そう次々と言い返して来て。
最後に
「この京都第二高校、かなりの進学校なのに、こんな馬鹿が入学しているなんて……勉強ができることと頭の良さって無関係なんだな」
そう言って。
へっ、とその学友は彼を嗤った。
許せなかった。
彼が目覚めたのは、勉強の合間に遊びで使っていた生成AIによる自動小説作成サイトで、無料使用の代償の企業広告視聴をしていたときに。
民主主義の素晴らしさを説く広告を見たせいであった。
曰く、民主主義では誰もが最高権力者になる可能性を持てて。
完全に自由であり、能力で正当に評価をして貰える。
民主主義こそ最高の政治システムであると。
広告はそんなことを訴えていた。
彼は世界が広がった気がしたのだ。
人は生まれながらに平等であるべきだと思った。
だからこそ、この国は間違っていると思った。
なので今日、学友たちも目覚めさせてやろうと思ったのに……
学友たちは彼を尊敬するどころか、見下して来た。
(この国は馬鹿ばっかりだ! こんな国、ろくなことにならない!)
彼は自宅に帰って早々、鞄をベッドに投げ出して。
自室のパソコンの電源を入れ
あのときの広告に出ていたアドレスを直打ちする。
ブクマをしていなかったので、直打ちだ。
なんとなく、ブクマすると危ないんじゃないかという気がしたので。
するとまたあの部屋に繋がった。
チャットルームだ。
『こんばんは』
挨拶を打ち込むと
『はいこんばんは』
すぐに返事が返って来た。
彼は嬉しくなる。
そのまま
『実は、今日学校で嫌なことがありまして』
そう愚痴を書くと
『それは大変でしたね』
チャットの人は彼を慰めてくれた。
彼はそれで癒される自分を感じつつ。
『国の運営をする人間を投票で決めるシステムの何が危険なんだ。素晴らしいじゃないか』
『ええ。そうですね。それは神の定めた十の徳……信頼と謙虚を体現する、素晴らしい考え方だと思います』
彼の言うことをチャットの人は全部肯定してくれた。
彼はそのチャットの人の言葉について
『十の徳?』
少し引っ掛かったことを打ち込む。
すると説明してくれた。
『神は人に十の徳を身につけよと仰っておいでなのです。それは……』
『孝行、信頼、愛情、友情、謙虚、慈悲、向上心、献身、遵法、勇気』
なるほど。
このチャットの人の信じる神様は、そう言ってるらしかった。
素晴らしいと思った。
どこからどう見ても間違いのない真理だと思った。
そしてさらに
『あなたの行動は、このうちの向上心に満ちた素晴らしいものです』
そんなことを言われたのだ。
嬉しくてしょうがなかった。
(この人は自分の価値を理解してくれている……!)
そんなとき
『どうでしょう……? 私たちと個人的なお友達になりませんか?』
『私たちはあなたを歓迎いたします』
そんなことを言われたのだ。
そんな言葉には
『嬉しいです! もちろんなります!』
そう返すのが至極当然、当たり前のことだった。
チャットの人は彼の言葉に
『本当ですか! 嬉しいです! では秘密の連絡先を今から1分だけ表示致しますので、急いで保存して下さい』
大喜びして、そんなことを言ってくれる。
そして言葉通り、画面にこのチャット以外のURLが書かれた画像が表示される。
彼は喜び勇んでそれをスクショした。
それが終わった後
『しました』
そう打ち込むと。
『ありがとうございます。これで私たちとあなたは仲間です』
チャットに人はそう言ってくれて。
最後に
『共に、真の理想社会の……千年王国の建設を目指しましょう!』
そう、言ったのだった。
<おまけ・了>