真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「何だその姿はァ!?」
アトラクナクアは激昂していた。
魔王アモンの力を解放し、その姿を変えた忍に対して
「お前のような堕落した異教徒がッ! 悪魔との合体に成功しただとッ!? 偽りの、正義が無く、罪深い愚物の分際で!?」
信じられない。
あり得ない。
何故か、激しく怒り、否定する。
6つの剣の切っ先を突きつけ、唾を飛ばす勢いで叫ぶ。
「あの方のように、悪魔の意志に耐え抜きその力をモノにすることに成功しただとッ!」
あの方……
メシア教にも同じことを実行し、耐え抜いて自分を失わなかった者がいるらしい。
アトラクナクアはそれが許せないのだ。
「そのような強きココロは我々メシア教徒以外持ちえないッ! 偽りだッ! 化けの皮を剥がしてくれるッ!」
そして斬り掛かって来た。
変身した忍に踏み込み、6つの剣による斬撃を繰り出す。
袈裟斬り、薙ぎ払い、唐竹、逆袈裟……
6つの剣が変幻自在で忍に襲い掛かる。
だが忍はその斬撃を危なげなく、まるでそよ風のように躱していく。
(体が酷く軽いな)
忍は久々に「自分の身体を乗り換えた」感覚を味わっていた。
肉体強化を必死に行い、自分の身体が強くなったときに感じる感覚……
前と比較して、より速くなった。
より強くなった。
それを実感したときの感動。
興奮……!
アトラクナクアの斬撃を躱しつつ、自分の急拡大された身体能力に彼は感動していた。
「おのれちょこざいな!」
そしてアトラクナクアが袈裟斬りを繰り出すべく剣を振り上げたとき。
忍は踏み込み、その脇腹に拳を打ち込んだ。
「がはぁ!?」
アトラクナクアの苦鳴。
その剣が止まる。
忍は脇腹への鉤突きを入れた後
顔面へのアッパーカット
下段蹴り
ボディブロウ
肘打ち……
怒涛の連撃。
その中でアトラクナクアは手にしていた剣を全て落としてしまう。
「ぐえええ……」
一方的に連撃を喰らい、一切の反撃が出来ない。
「お、おのれえええ……!」
アトラクナクアの呪詛が籠った声。
しかし、忍の連撃は止まらない。
(スタミナが上がっている……!)
スタミナの上昇でいつまでも続けていられる連撃。
その感動で、さらに連撃は速くなる。
「穢れた異教徒の悪魔めぇぇぇ……!」
アトラクナクアの呪詛は今の彼にはただのBGMであった。
そしてどのくらいの連撃が続いた後か。
忍は最後に、足刀蹴りをアトラクナクアの腹部に叩き込み、ぶっ飛ばした。
よろよろとアトラクナクアは立ち上がる。
だがそこに、さっきまでの勝ち誇った姿は無い。
ただの虚勢と、現実を認めないというただの意地だけ。
「……ゆ、許さん……! 穢れた異教徒の分際でッッ! この選ばれし神の戦士たるこの私をッ……!」
そしてシャッと、その手から糸を発射する。
忍を拘束するために。
しかしそれは
「メギドフレイム」
無造作に向けられた忍の右手から撃ち出された真っ赤な火炎球に飲み込まれ、押し返され――
アトラクナクアを直撃する。
「ぎゃあああああああああ!」
絶叫する。
火だるまになり喉が破れんばかりの悲鳴をあげ、悶え苦しむアトラクナクアに。
忍は
「……悪いが、死んでもらうぞ。同じ失敗は二度としたくない」
そう言い捨て。
腰を落とし、低く構える。
踏み込む構え。
『……魔法を使う場合は、必ず対象に行使を宣言しろ。それが魔法の威力を増幅させる。魔法を使う際の常識だ』
彼の中の魔王アモンが、忍に魔法の使い方をレクチャーしていた。
魔法というものは、使用する際にその対象にその行使の意志を伝えることが大切らしい。
それを言われ、そういえば過去に戦った悪魔や魔法使いたちは、必ずその魔法の行使を想像できる言葉を発していたことを思い出した。
あれはそういうことだったのか。
彼は理解し、軽い興奮を覚える。
そして問うた。
今の自分はどんな魔法を使用できるのか?
それは
広範囲を焼く灼熱の火炎魔法「メギドフレイム」
火炎耐性を貫通する火炎魔法「トリスアギオン」
魔法を反射する防御魔法「マカラカーン」
そこまで聞いたとき。
トリスアギオンという魔法の内容に、彼は自身の必殺技「鎧通し」との共通点を見た。
その思考を、彼はアモンに読まれる。
そしてアモンは
『面白そうだ……組み合わせてみろ。魔法の威力が倍増するぞ?』
そう言った。
人間と悪魔が合体に成功した場合。
こういうことが可能らしい。
悪魔は良くも悪くも変わらない。
信仰の変質で性質が変わることはあるが、自ら変わることは無いのだ。
自分で変わろうとし、新しいものを作って行けるのは人間の特性。
なので悪魔と合体することに成功した者だけが、使える魔法がある。
それは――
『究極合体魔法だ』
究極合体魔法。
悪魔人間のみに許された究極の秘法……!
彼は考えた。
鎧通しとトリスアギオンの「防御を貫通する」という特性を重ね合わせ、増幅するその魔法の名前を。
そして
決めた。
決めると同時に、弾丸のように飛び出した。
炎に焼かれ、踊り狂うように悶えるアトラクナクアに。
鎧通しという技は、波紋をイメージする一撃で。
狙うのは装甲や肉ではなく、
その拳がアトラクナクアの腹部を捉えたとき。
彼はその魔法の名前を叫んでいた。
それは
「トリス……インパクトッ!」
トリスインパクト。
それが彼が生み出した新しい魔法の名。
その魔法はアトラクナクアを直撃し。
その身体をくの字に折らせた。
そして
「ぐ……ぎゃあああああああああ!」
悲鳴がさらに大きくなる。
炎は消えない。
忍は、拳を突き出した姿勢で、残心を取っていた。
倒れた相手の最期を看取るために。
彼のトリスインパクトが命中した個所を中心に、アトラクナクアの身体がひび割れていく……
そしてそのひびは、炎の中でも真っ赤に輝いて……
そこで、アトラクナクアは叫び始めた。
自身の最期を自覚したのか
「わ、私はテンプルナイト……クルセイダーなんだッ……選ばれた存在なんだッ……」
その叫びを無視し。
無情にひびが広がっていく。
全身に。
さらにそこから噴き出す炎……
「間違ってるッ! い、異教徒が何でこの私をッ!?」
もう、ひびが全身に広がり切り、全身から炎が噴き出して
「いやだああああ!! こんなはずではあああああああ!! 私は神の戦士なのにぃぃぃ!!」
やがてその瞬間が来た。
炎が大きく輝いた。
そして
「助けてェェェェ!!」
蜘蛛男の身体が爆発する。
激しい炎と轟音と共に。
ウギャアアアアアアアアアア!!
……断末魔の叫びを残しながら。