真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
そして戦いが終わり。
忍と真月の2人は、ライドウを名乗る少年からかつての政府が今、どうなっているのかを聞く。
彼の話によると……
「……つまり、この国はまだ滅んでないんですか?」
「ああ……」
自分より4つは年下の少年に、忍は敬語で会話していた。
話しているうちに、そうしなければならないような気になったのだ。
彼……17代目葛葉ライドウは、飛鳥時代から続く国に仕える悪魔使いらしい。
そして彼は仕えている主より「佐上真月という女性をメシア教徒の魔の手から保護しろ」という命令を受けた。
保護し、現在前政府の生き残りが暫定政府を作っている京都に連れて来いと。
それを彼は独断で「抹殺」に切り替えたのだ。
全ては「メシア教徒がこの世界に唯一神を召喚する可能性をゼロにするため」
暫定政府の上に君臨する人物は「あくまで保護しろ」と言ったらしいが。
それについては彼曰く「主のために、ときには背くのが臣下の道だ」と悪びれずに返した。
忍は彼のそんな態度に当然面白くないものを感じる。
だが同時に
(この少年……いや男性は、自分の仕える主に怒りが向かないように「自分が勝手にやったことだ」と言っているのかもしれない)
その可能性に気づき。
ある種の敬意を感じるに至った。
それは真月も同じようで
「……殺されたくはないですが。私もあなたなら同じ選択をしたかもしれません。何故って、あまりにも危ないですし。殺すべきだと思うのは全然変じゃありません」
ライドウの言葉に激昂したりせず、むしろ「当然の選択です」と、彼を許す発言をする。
それどころか
「嬉しい……」
真月は泣いていた。
口に手を当てて。
前の世界が一部分だけかもしれないけど、残ってる。
彼女はそれがとても嬉しかったらしい。
忍も泣きはしないものの、ライドウの話に彼は本当の意味での未来への希望を見た気がした。
そんな2人を冷徹な目で見つめるライドウ。
そのまま、2人が落ち着くのを待ち
こう言った。
それは――
「君たちに命じる」
「国に仕えろ。でなければ死んでもらう。可哀想だが」
拒否を許さない言葉。
これを拒否するなら、戦いを継続し
今度こそ、どちらかが死ぬまで戦うことになると。
彼ら2人はその言葉に
「仕えます!」
「仕えさせてください」
即座に、同時に手を上げた。
拒否なんか、あり得るはずのない言葉だったから。
そして。
彼ら2人は、今まで同居していた恩人に「国に仕える……つまり公務員になることにした」と言いに行って良いかとライドウに訊ねたが。
ライドウは
「ダメだ。後で連絡する人を寄越す機会を作るから、このままついて来てくれ」
とそれを却下。
その言葉に、忍と真月は心苦しいものがあったが従うことに。
(お世話になったガラ吉さんに挨拶無しで新天地に向かうなんて)
内心そうは思っても
(こんな素晴らしい話を蹴れるほど、今の俺たちは余裕があるわけじゃない)
そんな悲しい事実が、彼らから「ライドウに従う」以外の選択肢を駆逐していく。
それぞれ、乗り物に乗って、先を目指す。
ライドウは仲魔の魔獣ケルベロス。
忍たち2人は、愛用のバイク。
忍の走らせるバイクの後ろのシートに乗りながら真月は
「どこまで行くんですか?」
ケルベロスで並走するライドウにそう訊ねる。
すると
「そう遠くない」
ライドウからはそういう答えが返って来た。
続けて真月が
「どこに行くんですか?」
そう訊ねると。
ライドウからは
「政府の秘密の施設だ」
……そんな言葉が返って来た。
そのまま、1時間くらい走ったかもしれない。
辿り着いた先は、廃墟の中に聳え立つ5階建てのビル。
ビルに掛かっている看板を見ると、そこには有名な通信会社の名前が書かれていて。
あの会社、元々国有企業のイメージがあったけど、イメージじゃなくて裏では本当に国の企業だったのかと驚く。
まぁ、今更どうでもいいことかもしれないが
もう無くなった世界の話だから。
でも
「DNTって本当は国の会社だったのか……」
思わずそう呟く忍。
そんな彼にライドウは先行しながら
「通信は大切だ。国の関与はそりゃ、あるさ」
そうなんてことない風に返して
「ついてこい。この先にターミナルという施設がある」
それだけ言って。
先にビルの中に入って行った。
(……ターミナル?)
2人には聞き慣れない言葉だった。
英語では「駅」という意味だったはずだ。
気にはなる。
だがライドウは答えてくれそうにない。
なので2人は先行するライドウを追いかけるように、バイクを停めてビルの中に入って行った。
ビルの中は静まり返っている。
元通信会社の廃ビルは、どういう役割か分からないが、色々な部屋があった。
ライドウはそんな部屋には全く目を向けず
「……大破壊前の研究成果でな、日本各地に、こういう施設がある」
歩きながら説明する。
ライドウの軍靴の音が静かに響いた。
「何の施設なんですか?」
真月が訊く。
ライドウは彼女のその問いに
「空間を歪曲させ、瞬間移動を可能にする装置を管理する施設だ」
無感情な声でそう返した。
空間歪曲装置。
瞬間移動。
2人にとっては悪印象を受ける話。
その研究をしたせいで、この世に悪魔が大量になだれ込んだと知っているから。
「ええと……」
でも、だからといって使用を拒否するほど彼らは愚かではない。
複雑な気持ちにはなったが、黙って2人はついていく。
しばらくして
「……ああ、先に言っておくことがある」
思い出したように、ライドウ。
「なんでしょうか?」
忍が答えた。
すると彼はこう言った。
「君らの今のバイクは捨てろ。新しいのは向こうで支給する。持ち込みは無理だからな。物理的に」
その言葉に。
忍は少しだけ胸に痛みを感じた。
彼のバイクは大破壊が起きる前から使って来たバイクだったから。
でも持っていくのが無理だと言うのであれば、諦めるしかない。
なので
「……分かりました」
そう一言返し。
あのバイクで紡いだ思い出……
真月と一緒にツーリングに行ったときの思い出。
そして大破壊が起きて、彼女と一緒に自衛隊駐屯地を目指したときに使った思い出。
それを思い返し、少し寂しい気持ちになった。