真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
電気が来ているはずがない場所。
なのに。
この建物は、何故かエレベーターが生きていた。
(悪魔の力を使っているのかも)
忍と真月の師匠であるガラ吉の家も、実は電気が使えた。
理由は、大破壊が起きる前に彼らの師匠は
生活インフラに関わるお金を一切払わないで済む方法は無いものか?
金はなるべく払いたくない。
そう考え。
電気、水道、ガスを悪魔の能力で代用する方法を開発していたのだ。
水の女神である女神アナーヒターの能力で清浄な水を生み出し。
火の精霊であるフレイミーズの力でガスを代用する。
そして妖獣ライジュウの力で、電気を得る。
そういうシステムを作り上げていた。
「生活インフラのお金って馬鹿にならないからねぇ。でも、それがこんな形で役に立つなんてね」
そんなことを、ガラ吉は言っていたが。
ここも、同じことをしているというのか。
「電気、生きてるんですね」
そこに何だか感慨深いものを感じ、忍はそう呟く。
それに対しライドウは
「万一のことを考え、半永久的にエネルギー供給が持続できるシステムを採用しているんだ」
そう、淡々と答えながらエレベーターに乗り込み。
エレベーターのボタンを素早く押していく。
複数の階の。
(多分、秘密の階に行くためのコマンドだ)
その様子に、忍はそういう想像をする。
きっと複数の階のボタンを、決められた手順で押すと行ける階があるのだろう。
そしてそれは
「……着いたぞ。ここだ」
エレベーターが動き出し。
そこに到着したとき。
ライドウのその言葉で、正しかったことが証明された。
エレベーターの外は、一際大きな部屋であった。
部屋の中には、一台のパソコンと。
大小さまざまなケーブル、パネルが犇めいていて。
そこには電脳の部屋と言い換えてもいい雰囲気の部屋があった。
「ここがターミナルですか……?」
エレベーターを出て、見回す。
忍はこの部屋がどうやって瞬間移動を成し遂げるのかを想像する。
ちょっと分からなかった。
台座だとか、カプセルだとか、そういうものが全く無かったから。
そんな彼の疑問は
「少し待っていろ」
ライドウのその言葉と
「絶対に、その赤線の外に出るんじゃないぞ? 下手すると腕がなくなるからな」
その警告で想像できた。
このパソコンを前にある4平方メートルくらいのスペース。
そこに赤いテープのようなもので赤い線が引かれて囲まれていて。
(ようは、このスペースに存在するものが転送されるのか)
ようはそういうことだろう。
あとはもう、ライドウに任せるしかない。
ライドウは、そのたった一台のパソコンを操作している。
忍たちは、それに何も言うことができなかった。
そして
「転送がはじまる。行くぞ!」
その言葉と
『転送ヲ開始シマス』
その電子音声。
その次の瞬間。
……彼らは新天地である「京都」に転送された。
京都に着いた。
出口こそ、同じような廃ビルだったが……
暫定政府があるという、京都御所の周辺まで行くと……
「うわぁ……」
「すごい……!」
そこには文明があった。
失われたはずの、前の世界があった。
皆、清潔で綺麗な服を着て、入浴をキチンとしている雰囲気があった。
かつての世の中のように。
そんな人たちが、普通に道を行き交い。
「たこ焼きはいらんかねー? 今ならタイムサービスだよー!」
「コロッケー! 美味しいコロッケはいかがー?」
京都特有の真っ直ぐに敷かれ、直角に交わる道に。
数多く立つ屋台の売り子が叫んでる。
かつては当たり前だったはずの日常……
「素敵……」
真月は感激してまた、泣き出していた。
忍も喜びに震えていた。。
屋台が並び、人が行き交う道を真っ直ぐ迷いなく歩きつつ。
ライドウが解説する。
「ここは範囲が狭いながらも、結界を張って悪魔の侵入を防いでいる。だから生活インフラの復活と高いレベルの治安維持を成し遂げられた」
その言葉に2人は感激する。
そしてこのときばかりは、彼らは神に感謝した。
そんな神は居ないのかもしれないけれど。
「さて」
そして2人は、ライドウの案内で京都御所に連れて来られる。
彼ら2人は、京都御所の中をこれまでの人生で見たことはなかった。
しかし
(この御所、絶対に手を加えている)
ところどころに機械があって、掘り返した跡もあるように思えた。
おそらく、そのままだと暫定政府の建物として使えないから、改造したんだろうと思われる。
御所にそんなことをしていいのか? と少し思ったが
(今はそれどころじゃないか)
そのことで、やむを得ないよなと思った。
そんなことを考えながら。
御所の中を落ち着かなげに見渡している2人。
そんな2人を見据え、ライドウは口を開き。
伝えた。
こんなことを。
「君たちに今日からやってもらうことは、神器の守護だ」
神器の守護。
忍はその言葉に引っ掛かるものを感じた。
予想していたことと違ったからだ。
なので手を上げた。
それを見てライドウは
「何だ? 言ってみろ」
忍の発言を許可した。
なので
彼は口にする。
彼が思っていたことを。
それは……
「陛下の警護では無くてですか?」
彼はてっきり、ライドウが仕えている人物に自分たちも仕え、その身辺警護をするのだと思っていた。
しかし
「そうだ」
ライドウは短くそう答える。
彼の中では神器の価値がライドウの仕えている主を上回っているとは思えなかった。
なので納得できなかったのだが
それは何故ですか?
そう、続けようとしたとき。
「神器が欠けると即位ができなくなるから、ですよね?」
彼の妻である真月が口を挟んだのだ。
するとライドウは感心したように微笑んだ。
彼がこういう笑みを浮かべるのは予想外。
そんな予想外の笑顔を浮かべつつ、ライドウは
「その通りだ。最近は、こういう基本的なことを知らない人間が増えてきたのは由々しきことだと思っていたんだがな」
よくやった、とでも言いたげな様子で、彼女を称賛する。
忍にはどういうことなのかが分からなかった。
なので
「えっと、どういう意味?」
訊ねた。
真月はそんな夫の疑問に
「陛下と神器、どちらかしか守れないなら、神器の方を守るのが日本人の在り方なの。理由は、陛下の即位に必要な三種の神器は代わりがないけど、陛下の方は別の人に即位してもらえば代わりがきくから、神器よりは重要じゃない、ってことよ」
答えた。
それは究極の選択の話だった。
神器はたった1つしかないから、神器の方が重要である。
人ではない……
その理屈に忍は衝撃を受ける。
衝撃を受けている夫をそのままに
真月は
「ちなみに、守るのは本体ですか? 形代ですか?」
さらに突っ込んだ質問をし。
「本体だ」
ライドウはそれに答え。
(……本体? 形代?)
忍はそれが理解できない。
「……悪い。話が分からない。教えて」
情けないと思いつつも、彼は妻に訊ねる。
そしてレクチャーを受けた。
本体とは本物の神器で。
形代とは神器の分身のこと。
分身というと大仰だが、ようはレプリカのこと。
よく「壇ノ浦に草薙の剣が沈んだ」と言われてるけれども。
沈んだのは形代であって、実は本体は沈んでいない。
本体はずっと、名古屋の熱田神宮に存在し続けていた。
……そんな、学校で習わない「日本にとって重要な事実」
(何でこれを学校で教えないんだよ)
彼は納得いかないものを感じつつも、教えてくれた妻に「ありがとう」と礼を口にして
「どういたしまして」
彼の妻は、夫のそんな振る舞いに笑顔を向けて来た。
そしてそのまま
「……三種の神器の本体を守るお仕事。全力で務めさせていただきます」
ライドウに向けて神妙に頭を下げる。
忍もそれに続いた。
そんな2人の振る舞いに、ライドウはニコリともせずに
「……そのことだがな」
急に声のトーンを落とし。
「ひとつ、恥ずべき事態になっている」
語った。
現在の暫定政府が抱えているひとつの問題を。
それは……
「今、御所にある剣は本体じゃない。形代だ」
「メシア教徒が大破壊のときに熱田神宮から盗み出した。……奪われているんだ。これは実に恥ずべきことだ」
その声には悔しさ、憎悪。
様々な負の感情が含まれていたように思える。
この場では神器についての知識が無いに等しい忍も、そのことについては
(それはまずいだろ)
その重大さは理解できた。
メシア教徒の奴らは、そんなとんでもないことをしていたのか。
どこまで日本を害すれば気が済むのか。
許せない。
奴らは日本人の敵だ……!
静かに怒りに震える忍。
それは真月も同じで。
そんな2人に
「だから取り返さなければならない」
ライドウはそう、当然のことを口にして。
続けて
「……それに、陛下と三種の神器の本体が揃えば、日本の霊的守護が復活し、日本全土がこの京都御所周辺と同じ状態になる」
そんな重大なことを2人に告げたのだった。