真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第3話 悪魔使いガラ吉

「悪魔使い?」

 

 悪魔使いとは何だ?

 言葉は分かる。

 

 悪魔を使う者という意味だろう。

 しかし、彼の中でそんな言葉は常識の範囲内では存在しない言葉だった。

 

 なので当然だがそう訊き咎める。 

 

 何かの比喩なのだろうか?

 

 そこで彼の脳裏に、先ほど突然現れて、大猿を一撃で仕留めた謎の黒い巨漢……怪人の姿が蘇る。

 

 ……まさか、さっき魔法陣の中に消えていった巨漢。

 あれが悪魔なのだろうか?

 

 そう、ガラ吉と名乗った男の言葉から想像を膨らませている彼に 

 

「読んで字のごとく、悪魔を使う者のことだよ」

 

 当の本人からそんな言葉が返って来た。

 

 驚愕する。

 

 悪魔。

 悪魔が本当にいるとでもいうのか?

 

 しかし今まで起きたことを振り返ると、それは常識外れの戯言と切って捨てるのは不可能だ。

 あんなもの、普通の生き物では無い。

 

 化け物でなければ何なのだ?

 

 悪魔の存在に否定的な言葉が出て来ない。

 それを見て反論が無いと判断したのか。

 

 ガラ吉は続ける。

 

「古来、神話や伝説、歴史に名を遺した神々、悪魔、怪物、英雄をそう呼ぶんだよ」

 

 キミらは知らんだろうけどね。

 さらにそう付け加える。

 

 悪魔の定義は

 

 神話や伝説、歴史に名を遺した神々、悪魔、怪物、英雄。

 

 そんなこと

 

「……え?」

 

「神様も悪魔なんですか?」

 

 全く意味が分からなかった。

 到底納得できない定義だ。

 

 悪魔といえば悪の存在の代名詞のはず。

 そこに神が含まれるのはわけがわからない。

 

 しかし

 

「そりゃ見解の相違ってやつだね」

 

 彼は話し始める。

 

 それは、世界で語り継がれてきた神と悪魔の話。

 

 

 

 世界の神話を紐解いてみれば、ルーツが同じなのに、扱いが違う神が結構いる。

 ある民族では神として崇められているのに、別の民族では悪魔として恐れられているケース。

 

 そういうことがかなりある。

 

 例えばインドで霊鳥として崇められているガルーダは、インドと歴史的に敵対してきたスリランカでは邪悪なる凶鳥グルルであるし。

 聖なる象アイラーヴィタは、スリランカでは邪悪なる象ギリメカラとして恐れられている。

 

 それは崇める民族の立場の違いで、特定の民族に有益な神は、その民族に敵対する別の民族には悪魔でしかない、ということ。

 

 なので悪魔と神は単純に善悪で分けられないのだ。

 

「だからウチの国の神社で祭られてる神様も、ウチの国が嫌いな国の国民にしてみれば悪魔なんだろうね」

 

 その言葉を話したとき。

 ガラ吉はククッ、と楽しそうに笑う。

 

 あまりにもあんまりな話で何も言えなくなる忍と真月。

 そんな2人にガラ吉は

 

「……どこにいくつもりなのか分かんないけど、危ないよ。今の日本は」

 

 そう言い、さらに

 

「もう、滅んじゃったけどね」

 

 と付け加えた。

 

 その言葉に2人は絶句する。

 

 滅んだ、って。 

 

「……ちょっと意味が分からないんですが」

 

 どういうことなんだと。

 絶対に認めたく無い気持ちがあった。

 

 日本が滅んだとしたら、これからの自分たちはどうなるというんだろうか?

 だからそれは認めたく無かった。

 

 けれども

 

 ガラ吉は

 

「そのまんまの意味だよ」

 

 無情にも、彼ら2人に事実を突きつける。

 

 彼は語った。

 

 政府の中枢が無くなったこと。

 政府に存在していた組織はほぼ崩壊したこと。

 

 それにこの国の中心になる人も安否不明であること。

 

 これはもう、滅んでると考えるしかないということ。

 

 

 ……この事実は、内心2人も予想していた。

 だけど見ないふりをして、気づかないふりをしていたのだ。

 

 それを他人に根拠つきで言われたのだ。

 望みが全て断たれた気がした。 

 

「なんでそんなことになってしまったの……?」

 

 真月が泣き崩れる。

 

 彼女はそんな弱い女性では無いのだが、耐えられなかったらしい。

 

 隣の忍も顔を青褪めさせて、何も言えなくなった。

 絶望のあまり、泣き崩れる恋人を慰める余裕もない。

 

 そんな2人にガラ吉は

 

「ひらたく言えば、悪魔が復活したせいだね」

 

 全く気遣おうとせずに、話を続けた。

 

 その言葉で、2人は落ち着きを取り戻した。

 日本が滅んでしまった理由。

 

 それは……悪魔が原因……?

 

「悪魔が復活……?」

 

 ガラ吉の言葉を復唱する忍。

 その言葉にガラ吉は頷いて

 

「空間歪曲転送装置の研究をね、政府がしていたんだけど。その際に、魔界への通路が開いちゃったんだな」

 

 そこから日本が滅ぶまでの経緯を話した。

 

 魔界とこの世界を繋ぐ通路が出来てしまったせいで、この世界に悪魔が侵入。

 そしてこの世界に入り込んだ悪魔たちがこの世界を壊した。

 

 それは、今の社会が自分たちの望む社会では無かったからだ。

 

 なので、人間の築き上げて来た世界を壊した。

 中枢を担う人間に成り代わったり、単純に邪魔な人間を抹殺したり。

 

 様々なテを使用して。

 

 東京への核攻撃はその最たるもの。

 アメリカの権力者が悪魔によって支配されており、その力で日本に向けて核ミサイルを撃ち込んだのだ。

 

 ガラ吉の話はあくまで淡々としていた。

 内容の重大さに見合わないほどに。

 

 話が切れたとき

 

「……何で東京に核を撃ち込んだんですか?」

 

 忍が疑問点を訊ねた。

 その忍の問いにガラ吉は

 

「東京という土地は、霊的に立地条件が極めて良い土地でね。なので、悪魔たちにとってはどうしても欲しい土地なのさ」

 

 そう面白くもなさそうに返す。

 

「なので、正攻法でそれをやるのが難しくなったから、更地にするつもりで撃ち込んだんだよ」

 

 悪魔たちの権力争いに巻き込まれ。

 日本が悪魔たちの思う通りにならなかったから。

 

 それで日本は核を撃ち込まれたというのか。

 

「なんだよそれ!」

 

 ふざけるな!

 

 そんな理由で、滅ぼされたというのか。

 自分たちの国は。

 

 その言葉は、彼から絶望を奪い去り、怒りを呼び起こした。

 そしてその怒りは、彼に立ち上がる力を与えた。

 

 そんな彼の様子を見て、ガラ吉は

 

「怒っても仕方ないよ。僕だって許せない気持ちは一緒だけど」

 

 淡々とそう言った。

 とてもそうは見えない様子で。

 

 真月はそんな彼に

 

「ガラ吉さんは何故そんな話をご存じなのですか?」

 

 根本的な疑問を訊ねる。

 

 あまりにも踏み込んだ話だからだ。

 それについては

 

「そりゃ僕が政府に雇われていたからさ」

 

 ……説得力はあった。

 

 あんな強力な悪魔を使役する人間が、フリーというのも不自然な気がする。

 

 詳しい説明を受けたわけでは無いけれど。

 彼はパソコンを使用して悪魔を使役していた。

 

 そんな技術、普通には存在しないはずだ。

 

 自分たちの知らない組織、職業がかつての日本には存在していたということ……

 

 その事実に、彼らは沈黙する。

 そこで

 

「君たち、どうしてこんなところに居たの?」

 

 あまりの情報量に口を利けなくなっている2人にガラ吉の言葉。

 その言葉に2人は

 

「自衛隊駐屯地を目指していました」

 

「そこに行けば希望があるんじゃないかと思ったんです」

 

 一緒に答えた。

 

 その、真月の「希望」という言葉が。

 ガラ吉には好印象だったらしい。

 

 彼は

 

「……なるほどね。キミたちなかなか前向きだね。誰かに助けてもらえるのを口を開けて待ってるだけじゃなくて、最適解を自分たちなりに出して行動したんだね」

 

 頷きつつそう言って。

 

「そういうの、嫌いじゃないよ僕は」

 

 ガラ吉は、彼ら2人を称賛する。

 2人は顔を見合わせた。

 

 褒められるのは悪い気はしない。

 

 そんな2人にガラ吉は

 

「でもね、あまり良い手段ではないかな。ただの兵士になっても生き残るのは難しいと思うし。……無論、ならないよりはマシかもだけど」

 

 そこで、彼は一拍置く。

 

 兵士になってもこれからの日本を生き抜いていくのは難しい。

 ならば、どうするべきなのか?

 

 それは

 

「あのさ」

 

 そこからガラ吉が続けた言葉。

 

「僕は君たちのことが気に入ってしまった」

 

 それは軽い調子だったが。

 

「だから君らさえ良ければ、これからの世界に対応した技能をさ、教えてあげてもいいかなと思うんだけど……どうする?」

 

 これは間違いなく、運命の分岐点。

 

 ガラ吉が彼らに示した。

 これからの世界を生き抜いていく(すべ)

 

 これからの世界に対応した技能。

 悪魔が闊歩する厳しい世界で戦って生き残るための技能。

 

 それを彼らに教えるという。

 

 そんなもの、答えは決まっている。

 

 それは

 

「はい、お願いします」

 

 真月が頭を下げた。

 続けて忍も頭を下げる。

 

 こうして……

 

 彼ら2人は自分たちで戦って、互い以外の誰にも頼らずに、これからの世界を生き残る道を選んだのだった。

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