真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「ご飯もうちょっと待ってね」
キッチンで。
シャツにジーパンという普段着の上に緑色のエプロンをつけ。
真月は魚を焼いていた。
一緒に野菜の煮物を作りつつ。
ここ京都ではスーパーのような買い物ができる店が存在した。
そこに並ぶ野菜や魚、肉のような食糧は、農場や漁場で生産、漁をして集めているらしい。
京都の結界がある土地でそんなことが可能なのか? という疑問が湧くが。
どうも、別の土地に特別な結界を張り、そこを農場や漁場にしているそうだ。
あと、悪魔の力も使っているらしい。
悪魔の存在が大っぴらになったことで、隠匿する必要が無くなり。
気兼ねなくその力を使えるようになったお陰で。
皮肉にもそこだけは前の世界より便利になった。
「大丈夫。それよりも」
忍はテーブルで文書を広げていた。
それは……
「えっと、何を読んでるの?」
真月はキッチンから、リビングの忍の様子を見てそう言葉を掛けた。
忍は
「ガラ吉さん、こっちには来ないらしい」
「えっ」
真月には信じられなかった。
ここの暮らしは外と比較すると天国であるのに。
「どういうこと?」
思わず真月はキッチンから出てきてしまう。
忍はその文書の一文を示した。
「ここに『対象者の意志を確認したところ、京都への転居を拒絶したため』ってある」
忍の指差す先にはこうあった。
~~~~~~
居住転換要請に関する回答について(通知)
貴殿より申請のあった通称「ガラ吉」の当特別行政区への招致について、当局にて意思確認調査を実施いたしました。
調査の結果、対象者は現在の居住地における生活の継続を強く希望し、当区への転居を明確に拒絶いたしました。
つきましては、本件招致要請は不調に終わったものとし、関連する入域手続きおよび身元保証審査はすべて破棄されましたので通知いたします。
日本国 居住管理課
~~~~~~
「何で拒否したんだろう……?」
真月は困惑していた。
確かにこの暫定政府……国からの文書で「本人が嫌だと言ったから移住キャンセル(意訳)」と書いてある。
ということは、そういうことなのだろう。
ちなみに2人とも「国が調査をしたフリをして、2人を諦めさせるための適当な文書を送って来た」とは考えていなかった。
この暫定政府はそういう人間同士の繋がりを崩壊させかねない不誠実な対応はしないと考えていたからだ。
だから2人は、結果には納得した。
納得はしたが……
「でも、理由が書いてないね」
そこで真月が指摘をする。
確かにこの文書には拒絶した理由が書かれていない。
そこは知りたいと思った。
なので
「一応、拒絶の理由については確認しておこうよ。でないと多分、後々モヤモヤが残ると思うし」
そう提案する。
その真月の提案に
「うん……俺もそれは同感だよ」
忍は同意した。
そして
「……ちょっとキッチンで煙が上がってるように見えるぞ?」
そのとき。
忍がそれに気づいて指摘をする。
「……! いけない!」
そして真月はその指摘を受けて魚を焼いていたことを思い出した。
2枚で80マッカの鯖の切り身。
外の世界ではまずお目に掛かれないご馳走の。
少し焦げている鯖2枚。
忍は自分の分を焦げている方を選んで皿に乗せ。
他のおかずの野菜の煮物を並べ終え、炊飯ジャーで炊いた白飯を2人分よそう。
そして
「いただきます」
2人、食事をはじめた。
たった2人の夫婦の食事。
「今日の煮物美味しいね」
忍が妻の手料理の味を褒めた。
夫のその言葉に真月は
「ありがと」
別に照れた様子は見せないでお礼を言った。
だが本人としては、手料理の味を褒められるのは嬉しいそうだ。
だから忍は、料理が美味いときは美味いということにしていた。
「……しかし」
そこで忍が話を切り出した。
「どういう理由でガラ吉さんは引っ越しを嫌がったんだろうか?」
恩人が誘いを断った理由について。
その話題を
真月は
「ガラ吉さん、生活には全く困って無かったし。宮仕えはもうこりごりだって言ってたときあったわよね」
「ああ、確かあったっけ」
食事しながら言葉を交わす。
思い出話を。
「宮仕えすると、予定が詰まるし人付き合いも多くなるし。自分にはニートしてる方がお似合いなんだ、って」
彼らの師匠はそんなことを笑いながら言う人物だった。
そこから考えると、京都移住を拒絶したのも理解不能では無いかもしれない。
それに
「実のところ、俺が悪魔と合体して悪魔人間になったことをどう言おうか悩んでいたこともある」
忍が少し沈んだ声でそう呟く。
今の自分は厳密に言うと人間では無い。
その事実を世話になった人に伝えることには正直抵抗があった。
その言葉に。
真月は1つ、思うところがあった。
「あのね、忍」
彼女はいったん箸を置く。
忍の視線が彼女に向く。
「ちょっといい?」
その言葉に
「うん」
忍はそう答え、彼女の話を聞くモードに入った。
真月の話は
「忍はさ、変身するとおそらく氷結属性に弱くなるよ。魔王アモンは炎の扱いに長けた悪魔なんでしょ? そういうときはその反対属性に弱くなりやすいの」
夫が厳密には人間では無くなり、悪魔の特性を持つ悪魔人間になった。
そこから導き出される夫の弱点。
「だからさ」
1人の悪魔使いとして。
彼女は夫に言っておかないといけないと思った。
「何か対策、考えておかないといけないよね」
……このことを。